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吉右衛門、雀右衛門が語る「松竹大歌舞伎」中央コース
6月30日(金)から全国18カ所で行われる「松竹大歌舞伎 中央コース」の公演について、出演の中村吉右衛門と中村雀右衛門が語りました。
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平成29年度(公社)全国公立文化施設協会主催「松竹大歌舞伎」中央コースは、昨年の西コースに続き、芝雀改め五代目中村雀右衛門襲名披露として行われます。
やっとスタートラインにつきました
公文協主催の歌舞伎公演が今年で50周年、50年にわたり芝雀を名のっていた雀右衛門は、五代目雀右衛門襲名披露興行の掉尾を飾る「松竹大歌舞伎 中央コース」の公演を迎え、「播磨屋のお兄様(吉右衛門)にいろいろ教えていただき、ご指導を仰いで今に至った経緯があります。やっと、着ているものがぴったりくる頃になり、スタートラインについた、という気持ちです。少しでも早く雀右衛門の名前が身につくようにしていきたい」と、真摯なまなざしで語りました。
雀右衛門襲名披露が始まる前からご指導いただいたと、感謝された吉右衛門は、襲名披露の最後に「口上で“一座高うはございますが”と口を切らせていただく。誠に光栄でございます。すでに雀右衛門さんの名前が体に入って、芝雀時代より何十倍も大きくなったような気がいたします。もう、披露しなくてもいいんじゃないかと思うくらい」と、ここまでの襲名披露での成果を称えました。
父の襲名披露狂言と同じお三輪で
昭和39(1964)年9月、歌舞伎座の四世雀右衛門襲名披露興行で、先代が『金閣寺』の雪姫とともに演じたのが、『妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん) 三笠山御殿』のお三輪でした。その舞台で、御半下(おはした)おひろ役で七代目芝雀を襲名したのが当代。「父がその後何回となく勤めた、女方の大きなお役です。心して勤めなくてはいけないと肝に銘じ、初日に向かってまいります。播磨屋のお兄様にいろいろおうかがいしながら、一所懸命勤めます」と、初役への意気込みのほどを見せました。
「私の大好きな役の一つ」と吉右衛門の言う鱶七実は金輪五郎、10年ぶりに勤めます。「漁師が実は侍だったという、全部(通し狂言として)やるととても面白い役。姿かたちもまったく違うものになりますので、役者としてやりがいのあるお役です。実父の八世幸四郎(初世白鸚)がとても得意とした役で、一から教わり、それを今、伝えております」。悪い奴に見えるところもあるけれど、実はいい人で、「お三輪さんを殺すにもそれなりの理由がありますが、それは見てのお楽しみ」とにっこり。
気持ちの綿々としたところが伝わる演技
お三輪は苧環の糸をたよりに恋する求女を探しあてたものの、御殿の官女たちにいじめられます。「(四世雀右衛門の)おじ様は本当にいじめられている感じがいたしました」と、思い出のエピソードも交えながら語った吉右衛門。「いじめられる美しさもあり、芯の通った女性でもある。気持ちの綿々としたところがしっかり伝わる演じ方でした」と雀右衛門も先代のお三輪を振り返りました。
吉右衛門は、四世雀右衛門について、「戦争に行かれる前は立役で、生還なさって女方の道を選ばれた特異な方。真女方とちょっと違うものがございました」と思い出話も披露しつつ、「今の雀右衛門さんは根っから女方を修業されてきました。もともと修業してきた人と、途中から修業されたおじ様、そういう違いはあるように思います」と、共演を通しての印象を述べました。二代にわたるお三輪を相手に、鱶七を勤める吉右衛門、10年ぶりの舞台が東京だけでなく全国各地で見られるのは、公文協の公演ならではです。
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(公社)全国公立文化施設協会主催「松竹大歌舞伎」中央コースは、6月30日(金)から7月30日(日)までの公演。チケットは、各会場ごとに異なりますので、詳しくは公演情報をご覧ください。