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勘九郎、七之助が「したコメ」で語ったシネマ歌舞伎『め組の喧嘩』
9月15日(金)、浅草公会堂で開催された「第10回したまちコメディ映画祭 in 台東」(したコメ)の新作シネマ歌舞伎『め組の喧嘩』ジャパンプレミア上映に、中村勘九郎、中村七之助が登場しました。
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「今日は、“あのとき”のまま、歌舞伎が観られます。中村屋!と声をかけちゃったらいいと思います。盛り上がっていただければ」。会場の浅草公会堂に、『め組の喧嘩』が上演された平成中村座の提灯やお茶子さんたちが彩りを添える中、司会の「したコメ」総合プロデューサー、いとうせいこう氏の挨拶から始まったジャパンプレミア上映。そのとおりに、出演者へのかけ声あり拍手あり笑いあり、そしてエンドロールにも涙あり。すすり泣きと大きな拍手に包まれたプレミア上映となりました。
浅草で、平成中村座の『め組の喧嘩』を
トークに登場した勘九郎は、「なんか、感無量ですね。浅草の地で、この『したコメ』の前夜祭で上演されるという…」と、5年前の5月、浅草の平成中村座で、『め組の喧嘩』が初めて上演されるに至った経緯を振り返りました。一昨年の「したコメ」のトークにも登場した地元の老舗「荒井文扇堂」の四代目、荒井修氏の上演懇願に、「やだやだ、と言っていた父(十八世勘三郎)が、最後には、次はいつやろうか、早くやりたいと言っていました。それだけ人を興奮させる演目、素敵なキャラクターの辰五郎なんでしょう」。
「父が重い腰を上げて資料を集めていたら、小山三さんの家から封をした段ボールが出てきたんです。中に六代目(菊五郎)の資料が大量に残っていて、それをもとにやりました。数寄屋河岸の内(喜三郎内の場)は、なかなか上演されないんですけど、それがあったからやったんです」。勘九郎の話に、いとう氏も当時の勘三郎とのエピソードを披露し、不思議な縁、偶然がいくつもつながっての『め組の喧嘩』だったと語りました。
浅草との深い縁が呼び込んだ三社祭の神輿
平成中村座7カ月ロングランの最後が三社祭のある5月、「なら、お神輿だと。最初は勘三郎さんに内緒でやっちゃおうとしていたんですが、ばれてしまった。彼は知ってて、もうすぐ後ろから出てくるぞって顔、してましたでしょ」と明かしたのは、冨士滋美浅草観光連盟会長。これには、今そのシーンを見たばかりの客席も爆笑でした。「父はすごく機嫌がよかった。『め組』が楽しくてしょうがなかった」と勘九郎。
公演中、3度登場した神輿ですが、1回目の登場は三社祭の最初の日で、神輿の支度も間に合わなかったそう。また、千穐楽が一日延びたため、新橋演舞場との掛け持ちで出演できなかった七之助も、最後の神輿登場に間に合いました。「やはり父が最後に1カ月やった役で、思い出の作品でもございますので、いつか中村座でできる機会があったら最高ですよね」と、感慨を込めて話しました。神輿登場の熱気、盛り上がりは、シネマ歌舞伎にしっかり刻まれ、芝居とは別のもう一つのドラマを見せています。
シネマ歌舞伎がある時代でよかった
『め組の喧嘩』に出ると、「途中から頭の回路が吹っ飛ぶんです。(喧嘩を始める前に)辰五郎がまく塩がかかるともう、やってやろう、という気になる」と勘九郎が言うと、七之助も10代の頃に一度だけ出演した舞台で(平成13年2月歌舞伎座)、「塩をまくところで興奮しましたね。今回観ていて、また出たいと思いました」。勘九郎は纏振りの練習で手が傷だらけになっても、「あの時間は(気持ちが)飛んじゃってますから」と、スクリーンの中でも見事な纏振りを見せています。
出演者とともにそんな興奮が味わえるのが、シネマ歌舞伎の迫力ある映像。「シネマ歌舞伎がある時代でよかった。すごくそう思いました。臨場感を大切に撮っているし、芸も継承されていく。小山三さんの段ボールの中身と同じものが、このシネマ歌舞伎のなかにいっぱい入っていると思うんですよね」と、いとう氏。「観ていて興奮しました、映画祭で、しかも若かりし頃からずっと一所懸命やらせていただいた浅草公会堂で上映、うれしいです」。七之助の胸にもさまざまな思いが込み上げているようでした。
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「このお祭り旋風が11月から全国に吹きます。皆、気持ちが高ぶってくれるといいですね」。いとう氏のトークの締めくくりに続き、「このあと特別に、仲見世の神輿が待っております。しかも担ぎ手が約100人!」との発言には場内もびっくり。「(シネマ歌舞伎に登場した神輿は)三社祭斎行700年で新調したんです。今日はそれを出してきちゃいました。浅草からのプレゼントです」と、冨士会長がうれしそうに話し、お客様とともに浅草公会堂前の広場に向かいました。
勘九郎、七之助も仲見世の法被を着て、待ち構えていた担ぎ手たちと練り歩き、最後は公会堂の前にある、勘三郎を模した「鼠小僧の像」の前に到着した神輿。「したコメ」総合プロデューサーを10年務め、今回が最後になるいとう氏が、「勘三郎さんの前で締められました。ありがとうございます」と、感謝してお祭り騒ぎの熱い夜が終了しました。
新作シネマ歌舞伎『め組の喧嘩』は11月25日(土)より全国公開です。
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シネマ歌舞伎『め組の喧嘩』
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■公開
2017年11月25日(土)より
■上映館
■上映時間
1時間43分
■料金
一般料金:2,100円(税込) 学生・小人:1,500円(税込)
ムビチケカード:1,800円(税込)
※ムビチケカードは、上映映画館、歌舞伎座、新橋演舞場、大阪松竹座、前売り券通販サイト「メイジャー」で、11月24日(金)まで取扱い(プレイガイドではムビチケではない鑑賞券を販売)。
※《月イチ歌舞伎》特別鑑賞ムビチケカード3枚セット:5,400円(税込)もご利用いただけます。12月29日(金)まで、同じく上記の場所と「メイジャー」で販売。