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讃岐の春の風物詩「四国こんぴら歌舞伎大芝居」が開幕

讃岐の春の風物詩「四国こんぴら歌舞伎大芝居」が開幕

 

 

 4月7日(土)、旧金毘羅大芝居(金丸座)で「第三十四回 四国こんぴら歌舞伎大芝居」が初日の幕を開けました。

 瀬戸大橋開通30周年記念と付いた今回のこんぴら歌舞伎。橋がかかって、より多くのお客様が足を運んでくださるようになったのは間違いありません。今年の幕開きは『江島生島』。実際に起こった江島生島事件を、一幅の絵を見るような舞踊劇に仕立てたもので、生島新五郎が桜舞い散る中、中臈江島と仲睦まじく過ごす夢の世界が、琴平の春の風情を思わせます。第二景では流罪の身となった現実に耐えきれず、物狂いとなっていくさまを松也が叙情豊かに見せました。

 

 『鞘當(さやあて)』は、金丸座の常設された仮花道から梅玉の名古屋山三、本花道から橋之助の不破伴左衛門が登場、手が届くほど間近に現れた二人に歓声が上がります。その二人が舞台で争っているところへ、両花道から駆け出してきたのは、魁春のお駒と芝翫の成駒屋幸兵衛。留女、留男の顔を立てていったん事が収まったところで柝が入り、襲名口上が始まりました。

 

 梅玉は八代目芝翫、四代目橋之助、三代目福之助を紹介し、先代芝翫への恩返しとして襲名一家を支えていくと述べました。児太郎は金丸座が大好きな父福助に、自分の分も一所懸命やってこいと言われたことを明かし、魁春は14年ぶりのこんぴら歌舞伎出演を喜んで、それぞれがお客様に襲名披露する三人へのご贔屓ご後援をお願いしました。

 

 芝翫は「亡き父、七代目芝翫、兄の勘三郎がこの金丸座が大好きでございまして、その金丸座におきまして長男橋之助、二男福之助ともども襲名披露がかないましたこと、私の身にとってこのようにありがたいことはございません」と、感激の面持ちで語り、「不鍛錬なる私儀にとりまして大きな大きな名跡ではござりまするが、先祖の名を汚しませぬよう、なおいっそう芸道に精進いたす心得でござります」と誓いました。

 

 「ご当地金丸座に初お目見得がかない、昼夜にわたり、身に余る大役を勤めさせていただきますこと、このようなうれしいことはござりません」と橋之助。「このうえは親子兄弟手を携え、芸道に精進いたしますれば、いずれも様方におかれましてはご指導ご後援のほどひとえにお願い申し上げ奉りまする」と福之助も続け、金丸座の外にまで響くほどの熱烈な拍手と、「成駒屋!」のかけ声が三人に贈られました。

 

 芝翫は続く襲名披露狂言『魚屋宗五郎』で、3度目となる宗五郎を勤めました。こんぴらさんに願掛けして断っていた酒を、妹の理不尽な死を聞いて飲まずにいられなくなった宗五郎。舞台との距離が近い金丸座の客席まで酒が匂ってきそうなほど、見事な酔いっぷりです。宗五郎が乗り込んだ先の磯部邸では、玄関先で酔いつぶれた宗五郎が、舞台が廻って庭先でおはまの膝枕で寝ているという演出も。地元ボランティアの方々が奈落で4本の力棒を回し、ぴたりと場面転換をきめました。

 第二部は『義経千本桜』「鳥居前」から。橋之助の忠信実は源九郎狐、福之助の弁慶で、静御前は児太郎、こんぴら歌舞伎初出演の三人がそろいます。物語の軸となる義経は松也。福之助は弁慶のような線の太い立役は初めて、襲名披露で精進を重ねてきた成果を見せます。幕外の引込みは初挑戦という橋之助が、お客様の熱い視線を力に、迫力満点の狐六方で金丸座を大きく揺らしました。

 

 『鎌倉三代記』では、芝翫が藤三郎で滑稽味を見せ、花道の付け際にある空井戸に飛び込んだかと思うと、槍で六郎をひと突きして現れたときは立派ななりの高綱に。場内を圧倒するような大きな高綱の登場にお客様も大喜びです。梅玉の三浦之助、魁春の時姫と三人が絵面できまっての幕に、襲名披露にふさわしい大きな舞台を見せた芝翫へ、祝福の拍手が贈られました。

 

 切は舞踊『石橋(しゃっきょう)』。いつもの清涼山を背景にした舞台とは印象ががらりと異なり、墨絵を思わせる朝倉隆文の背景画が、まったく新しい文殊菩薩と霊獣獅子たちの幽玄の世界を生み出しました。獅子の精が毛振りを始めると、白と赤のうねるような軌跡が鮮やかに浮かび上がり、ぶどう棚から客席に紙吹雪も舞って、舞台と客席の熱量が最高潮に。松也、橋之助、福之助の華やかなひと幕をおおいに堪能したお客様は、興奮冷めやらぬ様子で金丸座をあとにされました。 

 旧金毘羅大芝居(金丸座)「四国こんぴら歌舞伎大芝居」は、4月22日(日)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットWeb松竹スマートフォンサイトチケットホン松竹で販売中です。

2018/04/07