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「新春浅草歌舞伎」鏡開きで迎えた初日
2025年1月2日(木)、浅草公会堂「新春浅草歌舞伎」の初日が開幕しました。開幕前に、出演の中村橋之助、中村鷹之資、中村莟玉、中村玉太郎、市川染五郎、尾上左近、中村鶴松が、鏡開きを行いました。
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「新春浅草歌舞伎」の開幕直前、浅草公会堂の前に登場した出演者たち。新たなメンバーも迎えて心機一転、気を引き締めての初日です。今年は5年ぶりに鏡開きが行われるとあって、劇場周辺はいつにもまして賑やかな雰囲気が漂います。
鏡開きの前の挨拶で、トップバッターの橋之助は、「皆様あけましておめでとうございます」と、新年を寿ぎます。「朝早くから、寒いなかにお集まりいただきまして、ありがとうございます。皆様方の応援を力に、私ども七人で皆様方の明日の励みになるような良い芝居ができるように一所懸命勤めつつ、お役に向き合ってまいりたいと思います」と、真摯な表情で思いを伝えました。
鷹之資は、「こうして鏡開きで皆様と一緒に新年と初日を祝わせていただき、浅草歌舞伎に参加させていただいていることを実感しています」と、初出演を喜びます。鏡開きの酒樽を前に、「いまお酒の芳醇な香りが漂っています。良い香りをかがせていただき、今日は良い『棒しばり』ができるのではないかなと思います」と、楽しげな挨拶で場を沸かせました。
「新春浅草歌舞伎」には10回目の出演となる莟玉。「新しいメンバーの皆さんと、どのようなひと月になるのか非常にわくわくしております。先輩方のご指導を受けて皆で同じ方向を向いてお稽古をして今日を迎えられて、すがすがしい気持ちでいっぱいです。1カ月、一致団結して和気あいあいと楽しくお芝居をしていきたいなと思っています」と、爽やかに話しました。
玉太郎は、「鏡開きも初めてでございまして、これから2時間後に初日の幕が開くと思うと今から本当にドキドキでございます」と、緊張の面持ちです。「新しいメンバーで、皆様方に可能性を感じていただけるような希望を感じていただけるような舞台を精一杯勤めてまいりますので、皆様応援のほど、よろしくお願いいたします」と、やる気を漲らせました。
「新春浅草歌舞伎」初参加となる染五郎は、「第1部、第2部ともに大役に挑戦させていただきます。私はまだ未成年でございまして、お酒は飲めないのですが、このお酒の匂いをヒントに『棒しばり』を勤めたいと思っております。皆様にお正月らしい気分に浸っていただけるように精一杯勤めます」と、意気込みを見せました。
同じく初出演の左近は、「今、本当に圧倒されております。私も初出演をさせていただき、ありがたい気持ちでいっぱいです」と、素直な思いを口にします。「私事でございますが、今月19歳の誕生日を迎えます。10代最後の年のスタートをこの浅草で迎えられること、身の引き締まる思いでございます」と、言葉に気合を込めました。
鶴松は、「メンバーががらっと入れ替わりまして、まさか私が最年長です。けれども皆に負けない熱い気持ちで勤めたいと思っております。私が昨日みた初夢は、山のなかの誰もいない芝居小屋で勘九郎の兄に教えを受けるというものでございました。精一杯勤めたいと思いますので応援のほど、よろしくお願いいたします」と、明るい口調で呼びかけました。
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いよいよ開幕した「新春浅草歌舞伎」、第1部の始まりを告げる橋之助の「お年玉〈年始ご挨拶〉」では、フレッシュなメンバー七人を橋之助の視点で紹介し、会場を盛り上げました。『絵本太功記』「尼ヶ崎閑居の場」では、染五郎の武智光秀をはじめ、鷹之資、莟玉、玉太郎、左近、鶴松が、重厚な義太夫狂言に挑戦。光秀一家の情愛と悲哀の物語が、観客の胸を打ちます。三大名作の一つ『仮名手本忠臣蔵』より『道行旅路の花聟』「落人」では、莟玉演じるおかるの勘平への一途な思い、橋之助演じる勘平の憂いが美しい清元の名曲とともに観る者の心を奪います。そこへ玉太郎演じる三枚目の鷺坂伴内がコミカルに登場。可笑しみあふれる所作だてに、会場は華やかな雰囲気に満たされました。
第2部は「新春浅草歌舞伎」初出演の鷹之資による「お年玉〈年始ご挨拶〉」から。新春に相応しい爽やかな舞踊『春調娘七種』では、左近演じる曽我五郎と玉太郎演じる曽我十郎の兄弟、鶴松演じる静御前が、春の七草を題材にした早春の風情があふれる舞台をお届け。『絵本太功記』は、第1部とがらりと配役を変え、橋之助の武智光秀のほか、鷹之資、莟玉、染五郎、左近、鶴松が、それぞれ第1部と異なる配役で演じる趣向で、ドラマティックに乱世を生きる人々を描きだします。締めくくりは、おかしみと松羽目物の格調を織り交ぜた舞踊『棒しばり』。無類の酒好きである、鷹之資の次郎冠者と染五郎の太郎冠者、橋之助演じる大名の曽根松兵衛による、ユーモラスな舞踊劇に、浅草公会堂にも笑顔があふれ、お正月に相応しい明るく晴れやかな空気の初日となりました。
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浅草公会堂「新春浅草歌舞伎」は26日(日)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹、チケットホン松竹で販売中です。