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鴈治郎、扇雀が語る「松竹大歌舞伎」西コース
8月31日(土)より全国19会場で行われる「松竹大歌舞伎」西コースについて、出演の中村鴈治郎、中村扇雀が語りました。
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ゆかりの演目をもって巡業へ
鴈治郎は、昨年の9月「松竹大歌舞伎 近松座訪露公演」に、扇雀と兄弟そろって出演していたことを振り返り、「またこうやって兄弟で巡業に出演できる。こういう巡り合わせなんだなと」と、うれしそうに述べました。扇雀も「なかなか兄弟で一緒の一座になることは少なかったのですが、ここ最近は一緒になることが多くなりまして」と笑顔を見せました。
今回上演されるのは、『封印切』と『蜘蛛絲梓弦(くものいとあずさのゆみはり)』。どちらも二人の父である、藤十郎が得意としている演目です。鴈治郎が出演する『封印切』は、玩辞楼十二曲の1つであり、上方和事の代表作でもあります。「ドラマとしての歌舞伎を皆様に味わっていただきたい」と語りました。
扇雀は『蜘蛛絲梓弦』に初めて出演します。「早替りの舞踊をいくつか残している」という父、藤十郎は「初代鴈治郎と二代目鴈治郎がやらなかった、舞踊の新しいジャンルを切り開いた実績があります」。その様子をずっと見てきたという扇雀は「私が頑張って引き継いでいかなくてはいけない」と、覚悟に満ちた心境を述べました。
それぞれの会場での工夫
忠兵衛は、鴈治郎が平成7(1995)年、翫雀を襲名した際に初役で勤めて以来、何度も演じている役。武家屋敷へ届けるはずの金300両の封印を切ってしまうという役どころに対して、「決して私はあんなことできません」と言う鴈治郎。「あの封は3回切るのですが、2回目から自分の意志で切っています。はじめは(弾みで)切れてしまったことで愕然となって、それでやめればいいのに、男の見栄とか愛する人のためにやってしまう。そういうことがあるのだと思ってやっています」と語りました。
「松竹大歌舞伎」西コースでは、全国各地の会場を巡ります。しっかりとした花道がついていない会場も少なくありません。『封印切』では、最後の忠兵衛の引込みがみどころのひとつ。鴈治郎は「花道が3メートルくらいしかないところもあるかと思います。それをいかに工夫するかは、劇場によって違ってくる」と語り、「忠兵衛が一人で引っ込むときに、皆様が舞台に集中していただけるような状態にできればいい」と意欲をみせました。
また、『蜘蛛絲梓弦』は、早替りや仕掛けが多くある演目。「実際は花道、すっぽん、いろいろ使っているのですが、(会場には)すっぽんが基本的にない」と、扇雀。その対応について聞かれると「いくつか考えてあります」と頼もしく答え、「正面の御簾を上げるときにスモークをたく」など、現段階での案を披露しました。「間口は広い会場がほとんどなので、いろいろな仕掛けをつくることができます」と、各会場での演出の工夫にも期待がふくらみます。
日本全国の歌舞伎を待ってくれている方々へ
昭和42(1967)年に始まった公文協の全国公演ですが、これまで日本各地で歌舞伎の興行を行ってきました。「地方へ巡業で行きますと、それぞれの土地で歌舞伎を待ってくださる方がいらっしゃると感じることがあります」と鴈治郎。昨年、台風や豪雨で中止になってしまった会場でも公演ができるということで、「2年分待っていただいているお客様もいると信じています。それぞれの土地でそれぞれの皆様に本当に楽しんでいただける、歌舞伎を味わっていただける、そういう公演にしたい」と気合を込めました。
先月、金丸座「四国こんぴら歌舞伎大芝居」に出演していた扇雀は、「地元の方が本当に歌舞伎を愛して待ってくださっていることが肌で感じられました」と振り返ります。金丸座だけでなく、巡業は「歌舞伎を愛してくださっている方が、全国にたくさんいらっしゃる」ことを感じるといいます。「歌舞伎を今後ずっと引き継いでいくなかで、日本の伝統文化として、全国の方に生で楽しんでいただく機会を本当に大切にしたい」と公演への熱い思いを表しました。
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「松竹大歌舞伎」西コースは8月31日(土)から9月25日(水)まで、全国19会場で開催。チケットの詳細は公演情報のお問い合わせ先でご確認ください。