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猿之助、隼人が語る、スーパー歌舞伎II『新版 オグリ』

猿之助、隼人が語る、スーパー歌舞伎Ⅱ(セカンド)『新版 オグリ』

 

 

 10月6日(日)から11月25日(月)まで、新橋演舞場で行われるスーパー歌舞伎II(セカンド)『新版(しんぱん) オグリ』に演出・出演の市川猿之助、出演の中村隼人、脚本の横内謙介、演出の杉原邦生が、作品について語りました。

猿之助、隼人が語る、スーパー歌舞伎Ⅱ(セカンド)『新版 オグリ』

 平成3(1991)年に新橋演舞場で誕生した、スーパー歌舞伎屈指の人気作『オグリ』が、今年10月、新たにスーパー歌舞伎II(セカンド)待望の第三作『新版 オグリ』としてよみがえります。主役の藤原正清後に小栗判官、そしてキーパーソンである遊行上人を、猿之助と隼人が交互出演で勤めます。

 

作品のなかに哲学を

 「『ワンピース』の次に何をしようかと悩んだとき、ふと思ったのが『オグリ』だった」という猿之助。おじである三代目市川猿之助(現 猿翁)の『オグリ』の舞台では、「鏡を使った演出が大当たりしたが、本来はテレビのブラウン管を並べたかったと聞いていた。技術が進歩して、今は簡単に映像が(舞台で)できるようになりました。30年先をいっていたおじの発想を、私が叶えることができるんだと思い、ぜひこれはやりたい」と、演目を決めた背景を語りました。

 

 ただ、「物語としては、現代では共感しづらい部分がある」と感じた猿之助は、原作者である梅原猛の生前に、新たな脚本、演出で上演してよいか許可をとったといいます。「もう自由にやってくださいと(言ってくださった)。尊敬する梅原先生に捧げる一つの答えとして、この芝居を上演できることは非常にうれしい」と神妙な面持ちです。

 

 梅原に「歌舞伎の世界で僕を生かし続けてくれ」と言われたと明かし、「先生の演劇に対する姿勢、作品のなかに哲学を打ち出すという姿勢を学びたい」としたうえで、今回の作品における哲学は「歓喜」であると、きっぱりと述べました。「人生の目的とは歓喜。苦労することや、人のために役立つということでなく、自分が歓喜の渦のなかにいることが人を救うことになる。これを今の人たちに訴えたい」と、作品にこめた真摯な思いを言い表しました。

 

猿之助、隼人が語る、スーパー歌舞伎Ⅱ(セカンド)『新版 オグリ』

二人の小栗判官

 猿之助と交互出演で、小栗判官と遊行上人を演じる隼人は、「三代目の猿之助さんは、現代の方の胸を打つ作品として、スーパー歌舞伎をつくったとうかがいました。今、この新しい時代に、また現代の方の胸を打てるような芝居づくりができるよう、精進していきたいです」と、真剣な表情。「私自身、小栗判官に共感できる部分がたくさんある。精一杯全身全霊で、この作品のために力を注いでいきます」と気合を込めました。

 

 猿之助は、交互出演の面白さは「それぞれ違う魅力が出る。人生経験や人物としての魅力がストレートに出てくる」ことだといいます。さらに、隼人に向けて「私を食うくらいに遠慮しないで、自分が主役だと輝いてください。飛躍すること、ゆくゆくはこの経験をもとに、歌舞伎役者として、古典ができる役者になってほしいですね」と、熱いエールを送りました。

 

 また、歌舞伎俳優以外の出演者について、「歌舞伎役者では出せない味もありますし、歌舞伎以外の俳優さんと共演すると気持ちが引き締まり、お互い刺激になる」と、さまざまな俳優とともに作品をつくり上げる面白さを語りました。

 

猿之助、隼人が語る、スーパー歌舞伎Ⅱ(セカンド)『新版 オグリ』

新しい『オグリ』をつくる

 横内は、「当代猿之助さんは、仲間たちとつくり上げていく、”仲間のなかにいる猿之助”をすごく意識していらっしゃる。小栗判官一人のなかに世界があるのではなく、大きな世界のなかに彼が生きている認識。これが今回の作品のポイント」と、脚本の構想を語ります。「小栗判官は輝かしいヒーローから、人に頼らないと生きていけない無力な餓鬼病(がきやみ)まで、振り幅が大きい。この振り幅を、感じていただきたい」。

 

猿之助、隼人が語る、スーパー歌舞伎Ⅱ(セカンド)『新版 オグリ』

 演出として、「僕なりのアイデアもいろいろ出せていけたら」と意気込みを見せる杉原は、たとえば現代の若者と変わらないイメージがある登場人物には、「衣裳にストリートファッションのテイストを入れる」ことや、「地獄の場面は、発想を変えて真っ白な世界に」といった提案をすでにしていることを明かしました。「猿之助さんをはじめ、演出助手として参加した『ワンピース』でもご一緒した皆さんの胸を大いに借りながら、一緒に新しい『オグリ』を作っていきたい」と、目を輝かせます。

 

 これからまた時間をかけて練り上げられていく『新版 オグリ』。そのみどころについて、「大スペクタクル。血の池地獄の場面がおそらく、『ワンピース』以上に水浸しになる。それから馬に乗ったまま、上手と下手両側の宙乗りも。これも新橋演舞場では初めてなんです」という猿之助の言葉に、ますます期待がふくらみます。「そして最後は歓喜。(お客様も)皆で踊って(笑)、歓喜の渦で涙を流しながら、劇場を後にしてほしい」と笑顔で呼びかけました。

 新橋演舞場スーパー歌舞伎II(セカンド)『新版 オグリ』は10月6日(日)から11月25日(月)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で取扱い予定です。

 

猿之助、隼人が語る、スーパー歌舞伎Ⅱ(セカンド)『新版 オグリ』

 左より、横内謙介、杉原邦生、市川猿之助、中村隼人、安孫子正松竹株式会社代表取締役副社長

2019/08/06