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玉三郎が語る、新作シネマ歌舞伎 特別篇『幽玄』

玉三郎が語る、新作シネマ歌舞伎 特別篇『幽玄』『幽玄』

撮影:谷内俊文

 9月27日(金)より全国公開される新作シネマ歌舞伎 特別篇『幽玄(ゆうげん)』について、舞台の主演、演出に加え、シネマ歌舞伎の映像編集、監修も行った坂東玉三郎が語りました。

音へのこだわり

 本作は平成29(2017)年9月に博多座で上演、撮影されたものを新作シネマ歌舞伎 特別篇として上映。太鼓芸能集団鼓童との共演は大ヒット公演『アマテラス』に続く2作目となります。今作の『幽玄』は、能の代表的な3つの演目を題材に、日本の美を描いた作品で、鼓童が自分たちの楽器で囃子方に挑戦したことからも話題となりました。劇場で響きわたる力強い和太鼓の音色も「映像や録音となると、太鼓の音は非常に再生しにくい」と切り出した玉三郎。「映像的に面白いもの」を追求した結果、「本物の音圧ではなくとも、できる限り劇場で見ているような臨場感を出すように、低音や胴鳴りの音などを入れてうまく調整してきました」と、映像化した作品へのこだわりを振り返りました。

 

玉三郎が語る、新作シネマ歌舞伎 特別篇『幽玄』

 撮影:谷内俊文

 「鼓童の皆さんが日本のものをやりたい、と言うので、それでは能楽の四拍子(しびょうし)を」と始まった今回の特別公演。「和太鼓はメロディーがないので、曲のバリエーションがない」ところを、玉三郎のアイディアで「変拍子、奇数拍子を入れた」と言います。その目的は和太鼓の領域を超えること。

 

 さらに「シテ(能における一曲の主役)が出てくるまでを、ワキやワキヅレ(同じく主役以外の役)、演奏家が(お客様を)どうやって飽きさせないで音楽的にもっていくか、どの世界に連れていくか、ということが問題。音楽のクラシックでも歌舞伎でも同じなんです。お客様が客席で、どのようなリズムを期待しているか、どのような演劇的カタルシスが来るのを期待しているか、ということをよくわかって、こちらがつくっていけばいい」と、和太鼓で能楽の舞台を表現することへの強い思いを語りました。

 

玉三郎が語る、新作シネマ歌舞伎 特別篇『幽玄』

 『幽玄』 坂東玉三郎の白拍子(撮影:岡本隆史)

幽玄というテーマ

 “幽玄”をテーマに、能の代表演目『羽衣』、『道成寺』、『石橋』を演じた玉三郎。3演目を選んだ理由について、「『羽衣』はまったくの幽玄もの。『石橋』は、昔は石橋を獅子が渡ってくるということで、幽玄ものとされていたそうです」。一方、本来は“幽玄”というテーマには入らないという『道成寺』に関しては、「劇場でやるにあたって、他の2演目にはない雰囲気を入れたほうがいいと思ったので入れました。全体として幽玄を感じていただければ」と、構成の意図を明かしました。

 

 世阿弥が唱えた、人を惹きつける“幽玄”という概念に、玉三郎は「言葉自体が非常に曖昧で、つかみにくいものです。でも深くて、普遍的で、探求していくときりがない」と表現します。和太鼓の音色と、玉三郎の舞が織りなす幻想的な世界を、臨場感あふれる音響とともに、ぜひスクリーンでお楽しみください。

 

新作シネマ歌舞伎 特別篇『幽玄』は、9月27日(金)より東劇ほかにて全国公開です。購入特典でポストカードがついてくる(※数量限定)お得なムビチケカードも公開前日まで販売中。

2019/09/18