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幸四郎が語る、大阪松竹座「壽初春大歌舞伎」

幸四郎が語る、大阪松竹座「壽初春大歌舞伎」

 

 2020年1月3日(金)から始まる大阪松竹座「壽初春大歌舞伎」に出演する松本幸四郎が、公演への思いと出演演目について語りました。

 『九十九折』、『大津絵道成寺』、『大當り伏見の富くじ』に出演する幸四郎。「1月は久々に松竹座に出させていただくことになりました。松竹座のお正月公演がおめでたく始まり、盛り上がるように、自分としてできる限りのことを勤めたい」と意気込みを語りました。さらに、『九十九折』、『大當り伏見の富くじ』に関して、「どちらも上方のお芝居ですけれども、作品としては対照的。簡単に言うと、悲劇と喜劇。初日に向かって準備を進めています」と話し、上方狂言への心意気を感じさせました。

 

幸四郎が語る、大阪松竹座「壽初春大歌舞伎」

 

復活狂言として取り組む『九十九折』

 約45年ぶりの上演となる『九十九折』。この作品の印象について、「上方のお芝居の世界観のなかで上演される、戯曲のような感じ。台本を読んで、これが埋もれているのはもったいないと思いました」と答えた幸四郎。「上方の作品の演出でも特に特徴的なのは音楽だと思いますけれども、(この作品の音楽は)芝居に絡み合っている感じがします」、と説明しました。

 

 今回、山田庄一氏が監修を勤めます。残っている資料が少ないというこの作品ですが、前回上演されたものを観たという山田氏に、「ぜひご協力いただきたい」と思い、お願いをしたと言います。現在、過去の台本記録などを集めて、芝居も音楽もつくり上げている段階。「山田先生は、京都の風情や、清七と雛勇との出会いの場面、最後に三人で酒を飲む場面が印象に残っておられるとのことなので、そこを緻密につくっていきたい。細かい人間の繊細な心境の変化を、上方の演出にのせていきたい」と、熱く語りました。

 

 初役で演じる清七という役に関して、「二枚目というような色気があるわけでもなく、強さを感じられるわけでもない。ただ、純な心が根底にある。自分はこういう運命なんだと言い聞かせて生きている男なのかなと思います」。一所懸命に生きながらも、運命に翻弄され、最後は殺しに手を染めてしまう清七について話す幸四郎の様子から、役に対する思いが伝わりました。「復活狂言というとらえ方でとり組みたい」と締めくくり、公演に向けて気合を込めました。

 

幸四郎が語る、大阪松竹座「壽初春大歌舞伎」

 

熱いご要望にお応えしての再上演『大當り伏見の富くじ』

 『大當り伏見の富くじ』は、平成24(2012)年に大阪松竹座で幸四郎が勤めて以来、約8年ぶりの再演になります。「まさか再演できると思っていなかった。お正月の松竹座で上演できる」と、喜びをにじませました。「鴈治郎のお兄さん、愛之助さん、壱太郎さんには前回と同じ役で出ていただきます。逆に、今回初めて出ていただく方もいらっしゃるので、初演との差をきちんとつくりたい」と、意気込みを語りました。

 

 演目名にある「富くじ」について、「夢をもつという象徴」と幸四郎。そこを、幸次郎を通して見せていきたいと語ります。また、鴈治郎が勤める鳰照太夫について、「キャラクターとしては、とても面白く愛嬌があり、優しい人ですけれども、太夫として生きる意味や影がある」と語り、富くじを買って夢をみる楽しさと、鳰照太夫の明るさの裏にある寂しさや哀愁を日本の柱として、作品をつくり上げていきたいと話しました。

 

 「鳰の浮巣」をもとに、松竹新喜劇で上演され、また歌舞伎作品としてよみがえったこの演目を、歌舞伎の喜劇としてやるところに、こだわりがあると話す幸四郎。「たとえば、鳰照太夫は台本だけ読んでいても面白いことを言うとか、おかしいことをするとか、そういう場面は一切ないんです。でも、舞台で役者が演じると、喜劇として成立するのが不思議で面白いところですよね」。また、「音楽は仙波清彦先生に全面的につくっていただいたものを使わせていただきます」とのこと。普遍的な人間のドラマが描かれた喜劇を、「思い切ってやらせていただこうと思っております」と、笑顔を見せました。

 大阪松竹座「壽初春大歌舞伎」は来年1月3日(金)から27日(月)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

2019/12/25