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大阪松竹座「壽初春大歌舞伎」初芝居の賑わい

大阪松竹座「壽初春大歌舞伎」初芝居の賑わい

 1月3日(金)、大阪松竹座「壽初春大歌舞伎」が初日の幕を開けました。

 年明けらしい賑やかな雰囲気がただよう道頓堀のまんなかで、今年も大阪松竹座の「壽初春大歌舞伎」が始まりました。大阪の新年の寿ぎにふさわしく、演目も上方らしい作品が並びました。

 

 新年の幕開けを飾るのは、45年ぶりに上演される『九十九折』。幕末の京都を舞台に、題名のとおり幾重にも曲がりながら進む、人間の生きざまを描きます。運命に翻弄される木谷屋手代清七を勤める幸四郎と、木谷屋娘お秀と山猫芸者雛勇を2役で勤める壱太郎、八坂の力蔵を勤める愛之助、木谷屋主人仙右衛門を勤める彌十郎らが、年月が経っても色あせない、人生のドラマがつまった作品を鮮やかによみがえらせました。

 

 続いては『大津絵道成寺』です。『京鹿子娘道成寺』を彷彿とさせる鐘供養の場に、江戸時代に流行した大津絵のモチーフとして代表的な藤娘、鷹匠、座頭、船頭が次々と登場します。美しい藤娘からはじまり、みごとな変化を見せるのは愛之助。最後は鬼の姿となり、破魔の矢を手にして現れた矢の根五郎(幸四郎)と対峙します。華やかな絵巻物を眺めているかのような舞台に、場内は拍手に包まれました。

 

 『酒屋』では、鴈治郎がお園の父宗岸と茜屋半七、そして扇雀が半七女房お園と半七と恋仲の美濃屋三勝と、それぞれ2役を演じます。夫につれなくされながらも貞淑な振る舞いを見せるお園が、「今頃は半七さん…」と切ない胸の内を明かすクドキや、死を決意した半七の手紙を家族が回し読む場面は、観る者の涙を誘います。最後は、家族との別れを惜しみながら花道を進んでいく半七と三勝の背中を見送るように、客席からかけ声と拍手が起こりました。

 

 夜の部は『義経千本桜』「川連法眼館の場」で始まります。愛之助の佐藤四郎兵衛忠信と源九郎狐、壱太郎の静御前、そして秀太郎の源義経という顔合わせで、さらに虎之介が駿河次郎、廣太郎が亀井六郎を勤めます。ケレン味あふれる仕掛けも見どころで、舞台のあちこちから源九郎狐が飛び出すたびに客席が沸き返りました。人間離れした動きを見せる一方で、小鼓を通して親への情愛を表現する源九郎狐の姿が印象的です。

 

 中幕は、藤十郎が襲名した平成17(2005)年に復活させた『夕霧名残の正月』。藤屋伊左衛門と扇屋夕霧を、鴈治郎と扇雀が勤めます。恋しい夕霧の死を悼む、紙衣姿の伊左衛門の前にふと現れたのは夕霧。幸せな日々を思い出しながら、ともに舞い始める二人ですが、夕霧の姿はいつしか消え、あとには切ない余韻だけが残りました。藤十郎から息子たちへ、作品が受け継がれていくことが感じられるひと幕です。

 

 夜の部の切は、平成24(2012)年2月に大阪松竹座で上演され、好評を得た『大當り伏見の富くじ』です。紙屑屋幸次郎(幸四郎)と鳰照太夫(鴈治郎)の恋物語と、富くじに振り回される幸次郎の災難を中心に描かれた、人情味あふれる喜劇です。魅力的な登場人物や、巧みなせりふ、急展開していく物語の面白さで、まさに初笑いのしどころ。笑い声が客席に響き続け、笑顔あふれる打ち出しとなりました。

 大阪松竹座「壽初春大歌舞伎」は27日(月)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

2020/01/04