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染五郎、團子が語る、図夢歌舞伎『弥次喜多』

染五郎、團子が語る、図夢歌舞伎『弥次喜多』

 

 12月26日(土)からAmazon Prime Videoでレンタル配信が始まった図夢歌舞伎『弥次喜多』に出演の市川染五郎、市川團子が、作品についての思いを語りました。

 平成28(2016)年から令和元(2019)年まで、歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」で上演された『東海道中膝栗毛』。松本幸四郎と市川猿之助による弥次喜多コンビは大好評を博し、夏の歌舞伎座の風物詩となりました。染五郎と團子も、梵太郎と政之助として4年連続で出演してきたこの作品が、このたびついに歌舞伎座を飛び出して、オンライン配信専用の「図夢歌舞伎」第2弾として登場しました。

 

染五郎、團子が語る、図夢歌舞伎『弥次喜多』

 

『弥次喜多』への思い

 図夢歌舞伎『弥次喜多』に出演すると聞き、「前回の公演で、梵太郎役は最後だと思って演じていたので驚きましたが、また梵太郎になれると知ってうれしかったです。この役では、宙乗りや本水での立廻り、そして『勧進帳』の弁慶を取り入れた立廻りなど、子どものときから憧れていたことを実現させていただき、毎年新しいことをさせていただいて、貴重な場でありがたかったです」と話す染五郎。

 

 團子は、『東海道中膝栗毛』について、「本当に面白い、というのが一番の印象です。古典で面白い作品はいろいろありますが、それを現代風の作品と組み合わせてもきちんと成立するんだということを、肌で感じたのが弥次喜多シリーズでした。作品の力だけでなく、幸四郎さん、猿之助さんは、古典をたくさん演じてこられて、それが身についているからこそ、お二人が先頭に立ってやってくださることで、歌舞伎として成立する。やっぱり古典が大事だなと思いました」と、熱く語ります。

 

 二人が演じる梵太郎と政之助は、過去4作品において、弥次さん喜多さんと珍道中をともにしてきました。役作りについて染五郎は、「梵太郎と政之助は、今までの作品では唯一真面目でまともな人たち。弥次さん喜多さんがふざけているなか、子どもなのに一番大人びているのが逆に面白いからふざけないでと、父(幸四郎)から言われました」。團子は、「僕はあまりキャラクターづくりはせず、ただただ真面目な少年というイメージだけでやっていました。素直に、考えすぎずに演じていたことが、純粋な少年のように映っていたのかなと思います」。

 

染五郎、團子が語る、図夢歌舞伎『弥次喜多』

 図夢歌舞伎『弥次喜多』では不良役の梵太郎と政之助。左より、市川染五郎、市川團子

工夫を重ねた今回の役作り

 そんな真面目で純粋だった梵太郎と政之助ですが、今回の図夢歌舞伎『弥次喜多』では、うって変わって不良役。「梵太郎は、不良で金髪だと伺ったので、父(幸四郎)や床山さんとどういう髪型にしようかと相談しました。色の濃い金髪をところどころ入れて工夫して、指輪やネックレス、ピアスをつけたら面白いのではないかと思って」、このようなビジュアルに仕上がったとのこと。マニキュアは、「父が買いに行って、これをしたらどうかと…」。新しい役柄に入念な準備をしていた様子。

 

 團子は、「いっくん(染五郎)が金髪と聞いて、対象的な色が良いだろうと思い、銀や青にするか悩んだのですが、照明が入ったときのことも考えて、赤にしました」。化粧も、通常の歌舞伎の拵えとは少々異なるとのこと。慣れない姿について、「どうなるのかなと思っていたのですが、映像で見ると着物のおかげで歌舞伎らしくなっていると思います」と言う團子に続き、染五郎は、「新作歌舞伎(『月光露針路日本(つきあかりめざすふるさと) 風雲児たち』)に出演したときの経験を生かし、眉の色も考えました」と、工夫を重ねた様子が伝わります。

 

 通常の歌舞伎公演とは異なり、映像と歌舞伎の可能性を最大限に生かした図夢歌舞伎。染五郎は、前回の図夢歌舞伎『忠臣蔵』に続いての出演となります。撮影現場での様子について染五郎は、「猿之助さんが監督として現場を仕切りながら、一つひとつの細かい動きを指導してくださいました」。映像作品初出演となる團子は、自分で考えて演じながらも、「今回は映像作品に近いと思っていたので、疑問に思ったところは父(市川中車)に聞いたり、猿之助さんに教えていただいたりしました」と、撮影中のエピソードを明かしました。

 

染五郎、團子が語る、図夢歌舞伎『弥次喜多』

 

梵太郎、政之助とともに成長してきた染五郎と團子

 「弥次喜多シリーズは毎回、オリジナルの台本で新作。2016年の1作目が、新作に出る初めての舞台だったので、現場でどんどん変わっていくし、舞台でやるとまた思わぬトラブルがあったり、最初は戸惑いもありました。4年間出演させていただき、その間、三谷かぶきにも出させていただいて、新作を皆でつくりあげていくということはこういうことなんだと感じました」と、これまでの経験を振り返る染五郎。

 

 最初に弥次喜多に出演した2016年以降、芝居はもちろんのこと、身体の成長も目に見えて感じられる團子は、「僕は、手足が伸びたことで立廻りが崩れて見えないようにするなど、型を気にしていました」と、苦労も明かしました。また、ともに弥次喜多シリーズに出演してきた染五郎について、「舞台に上がっても、冷静な視点を忘れない人。一見ぶっきらぼうに見えるけれど、心はきちんと動いているのが伝わってきます」と話し、培ってきた同世代の絆を垣間見せました。

 

 「梵太郎も政之助も自分たちと同じようにどんどん成長していく。自分たちの成長を、そのまま梵太郎、政之助に反映させたい」と染五郎が話すと、團子も大きくうなずきました。いつか二人で“弥次喜多”をやりたいかと聞かれ、声をそろえて「はい!」と力強く答えた染五郎と團子。5年間続けて同じ役を演じ続けてきたからこそ、作品とともに成長を遂げた二人の、図夢歌舞伎『弥次喜多』での姿にも、ぜひご注目ください。

 図夢歌舞伎『弥次喜多』は、Amazon Prime Videoでレンタル配信中。作品のご視聴はこちら

 

2021/01/04