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菊五郎が語る、歌舞伎座『仮名手本忠臣蔵』

菊五郎が語る、歌舞伎座『仮名手本忠臣蔵』

 

 5月3日(月・祝)から始まる歌舞伎座「五月大歌舞伎」第二部『仮名手本忠臣蔵』六段目「与市兵衛内勘平腹切の場」に出演する尾上菊五郎が、公演に向けての思いを語りました。

忠臣たる所以

 第二部で上演される『仮名手本忠臣蔵』の六段目では、その前段で、誤って撃ち殺した相手から、仇討に加わるためのお金を奪った勘平が、進退きわまり切腹するまでの哀しい物語が展開されます。珍しく五段目が付かない上演となる今回は、「お金を気持ちよく千崎弥五郎に渡し、一味徒党に加わったんだ、という気持ちを自分で開演前につくって、意気揚々と入っていこうと思っています」と話します。

 

 この六段目の勘平の心中を、「追い込まれていく犯罪者の心理」と表現した菊五郎。自分を責める姑のおかやに対しては、「これ以上騒いだら殺してしまおうというぐらいの気持ちなのではないかなと。(申し訳なさではなく)仇討ちに重きを置いている方が、忠臣蔵の場合はやりやすい」と明かします。さらに、「息を引き取る間際、四十七士の企てがばれないよう、おかるへの口止めを頼む。そのあたりが忠臣蔵の忠臣たる所以だと思いますね」と、力強くうなずきながら語りました。

 

菊五郎が語る、歌舞伎座『仮名手本忠臣蔵』

 『仮名手本忠臣蔵』尾上菊五郎

難役中の難役

 これで演じるのが15回目となる勘平は、ひと言で言うと「難役中の難役」。「切腹するので、褌の付け根まで白粉を塗る。それから鬘を3段階で散らしたり、血糊をほっぺたに付けたり。煙草の吸い方、煙管を落とすタイミング、手拭をしまう場所…。やることが多くて、頭の芯が痛くなります。そのうえ発散もできず、じっとこらえなければいけない。しかしやりがいのある役なので、いつかやりたいと、初めはおかるをやりながら、勘平の仕草をずっと見ていましたね」と、勘平に憧れていた頃の思いも振り返ります。

 

 五世、そして六世菊五郎がつくり上げてきた音羽屋の型は、二世尾上松緑から教わりました。「切腹したとき、いがみの権太だと足の親指を曲げて苦しさを表すのですが、勘平は侍だからそれをやってはいけないと言われました。そして苦しみながら語るところは、お腹に栗のイガが入っているように、声を張らずに…と。それでもお客様には何を言っているか伝わるよう、歯切れよくしゃべるところはしゃべる。本当に難役です」。

 

 また、「口伝のやり方がありますが、それだけでなく、自分なりの工夫、自分の肉体に合わせたやり方というものもあると思います。例えば、松緑のおじ(二世松緑)からは、(自分が)舅の財布を盗ったと気付くくだりからずっと下を向いていろと言われましたが、私はもう、与市兵衛の死骸の前では、あぁやっぱり…、という芝居をしたいんです」と話しながら、顔をあげて勘平の表情や仕草をして見せた菊五郎。当代ならではの魅力をもつ勘平に、期待がふくらみます。

 

菊五郎が語る、歌舞伎座『仮名手本忠臣蔵』

 

皆で一丸となって臨む「五月大歌舞伎」

 5月も、安全対策を万全に期すため、出演者は総入れ替え制での公演が続きます。「楽屋が寂しいですよ。弟子たちも、大笑いしたら怒られるんじゃないかと、シーンとしてて(笑)。楽屋の活気がないと面白くない。やはり早く状況がよくなるのが一番ですね」と、心情をにじませます。

 

 音羽屋にゆかりの狂言が並ぶ「五月大歌舞伎」。「眞秀は『土蜘』の太刀持音若、『春興鏡獅子』では丑之助、亀三郎が胡蝶の精。私は今の楽善さんと二人で、胡蝶の精を勤めさせてもらった思い出がございますね。『春興鏡獅子』は菊之助が一緒にお稽古しています。若手の俳優たちも稽古を見てほしいと言ってくれたりと、皆喜んで一所懸命やっていますよ。よく稽古をして、力を合わせてこの興行を成功させたいなと思っております」と、顔をほころばせました。

 歌舞伎座「五月大歌舞伎」は5月3日(月・祝)から28日(金)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

2021/04/23