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仁左衛門、南座「吉例顔見世興行」に向けて

仁左衛門、南座「吉例顔見世興行」に向けて

 

 12月2日(木)に開幕する、南座「當る寅歳 吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎」に出演する片岡仁左衛門が、公演に向けての思いを語りました。

顔見世の歴史を次へつなげる

 今年も新型コロナウイルス感染症対策を徹底して、京都の冬の風物詩である南座「吉例顔見世興行」が行われます。仁左衛門は、「今年も顔見世興行の時期になり、無事に幕を開けられますことを大変うれしく思います」と、まずは率直な喜びを口にします。続けて、「南座の顔見世興行は今現在、最古の歴史をもっています。その歴史を絶やすことなく興行を行えますのは、支えてくださる皆様のお力添えあってのこと。関西での文化の発展にもつながります」と、感謝を込めました。

 

 感染対策の一環として、今年も三部制での上演。「第一部の『曽根崎心中』は心中物ですが、山城屋さんの代表的な、素敵なお芝居です。第二部の『三人吉三巴白浪』は、いかにも歌舞伎のひとコマ。ああ、楽しかったねと、一部二部続けてご覧いただきたいです。また第三部の(上方所縁の)『雁のたより』は、顔見世興行にもってこいの狂言。(東京の俳優である)幸四郎さんがこれをやると聞いてびっくりしましたが、きっといいものをつくってくださると思います」と、笑顔で各部について語りました。

 

 また、今回、今年5月に逝去した兄・二世片岡秀太郎の愛弟子である片岡千壽、名題披露する片岡りき彌がそれぞれ『雁のたより』、『三人吉三巴白浪』で大役を勤めることに触れ、「二人が顔見世で大役をできることは、兄への供養だと感じます。兄が涙して喜んでいるだろうなと、なんともうれしく思います」と、感慨深げに話しました。

 

品と愛嬌のある『身替座禅』

 仁左衛門は第二部『身替座禅』で山蔭右京を勤めます。「どなたでも内容がよくお分かりになる、そして身近にお感じになる方も大勢いらっしゃる作品です」と、冗談を交えながら演目を紹介します。山蔭右京、奥方玉の井ともに過去に何度も演じていますが、南座で山蔭右京を演じるのは今回が初めて。「父(十三世仁左衛門)は品を大事にしなければいけないと言っていました。私の場合はそれに少しかわいらしさも出しています。世の女性、特に奥様方に怒りを覚えてもらわないような右京をつくり上げたいなと思います」と述べました。

 

 さらに役づくりについて、「父は、あくまで本人がただ自然に動いていることがお客様にとっては面白いのであって、喜劇風に演じて笑ってもらおうとするのは避けたいという考えでした。私もそう思います」と続けます。「舞台を重ねるうちにだんだんと角がとれて、自然体で演じられるようになりました」と、これまでの数々の上演を振り返ります。

 

 また、最近は歌舞伎の典型的なイメージを求めて観劇される方が多いと語り、「塩梅が難しいですが、“つくりもの”を見せるのではなく、その人物の世界をお見せしたい。歌舞伎の演技で、人物がそこにいるように見せることは現代劇のようにはいきませんが、いかにそう見せるかが、やはり技術だと思います」と、揺るぎない向上心をのぞかせました。

 

いつもと同じ舞台を

 第三部『雁のたより』では、監修をつとめる仁左衛門。「父の歌舞伎座での襲名披露で、私が丁稚を勤めました」と懐かしみながら、指導については、「型のものではないので、とにかく皆さんのやりやすいようにやっていただいたうえで、耳に残っているせりふ回しであったり、下座とのかけあいなどをアドバイスする」イメージだと語ります。芸の継承は「非常に難しく、またある意味で、曖昧」と表現しながら、「ただ真似てやることが良いというわけではない」と述べました。

 

 昨年のコロナ禍での興行については、「初日を迎えるにあたり、ああ公演ができる、という喜びはやはりいつもの顔見世興行とは違いました」としながらも、「舞台を勤めるものとしては、劇場の中に入ってしまえば、さほどいつもと変わらないです」と、ひと言。さらなる芸の高みへ向け、淡々と日々の舞台を勤める仁左衛門が見せる今年の「吉例顔見世興行」に、期待がふくらみます。

 南座「吉例顔見世興行」は12月2日(木)から23日(木)までの公演。チケットは11月10日(水)から、チケットWeb松竹チケットホン松竹で発売予定です。

2021/10/27