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勘九郎、七之助が語る「十八世中村勘三郎十三回忌追善」
2024年2月2日(金)から始まる歌舞伎座「猿若祭二月大歌舞伎」、3月6日(水)から始まる「名古屋平成中村座 同朋高校公演」に出演の中村勘九郎、中村七之助が、公演について語りました。
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父への親孝行となるような追善興行を
令和6(2024)年2月の歌舞伎座、3月の名古屋平成中村座において、十八世中村勘三郎十三回忌追善興行が行われます。歌舞伎座では、初代猿若(中村)勘三郎が猿若座(後の中村座)の櫓を上げ、江戸で初めて歌舞伎興行を創始したことを記念して始まった「猿若祭」を開催。名古屋平成中村座は、初代勘三郎生誕の地とされる愛知県名古屋市中村区で、十八代目中村勘三郎襲名披露として平成18(2006)年に開催して以来の同朋高校体育館で行われる公演となります。
勘九郎は、「父の十三回忌…あっという間でもあり、いなくなってしまってからもう13年も経ってしまうのか、という気持ちにもなります。祖父(十七世中村勘三郎)は父に、追善興行が出来る役者になってくれと言っていました。私たちも、父の追善興行ができることは本当にうれしいですし、生きていた頃は何一つ親孝行を出来ませんでしたが、少しは父に対して親孝行ができるのかなと、うれしく思っています」と、噛みしめるように語ります。
歌舞伎座で出演する演目について、「『籠釣瓶花街酔醒』は、七之助といつかやりたいと思っていました。十三回忌に歌舞伎座で二人でこの作品が出来ることは、父も本当に喜んでいると思います。父、祖父だけではなく、先人たちが築き上げた『籠釣瓶』の1ページに入れること自体も幸せですし、汚さぬように勤めなければいけないなという思いでいっぱいです」と、喜びとともに気を引き締めます。
家族で勤める中村屋ゆかりの演目
長男の勘太郎が初役で『猿若江戸の初櫓』の猿若を、次男の長三郎が『連獅子』の仔獅子の精を初めて勤めることについては、「勘太郎は本当に歌舞伎が大好きで、猿若をやれるかもしれないと伝えたら、マスクから笑みがこぼれるくらいずっと笑っているんですよ。責任ある踊りでプレッシャーも感じているようですが、それをなくすために今も一所懸命に稽古をしています。『連獅子』も、絶対やろうと思っていた演目。令和3(2021)年に勘太郎とやったときに長三郎も一緒に稽古をしていて、そのときにはできなかったことも(こなす力が)どんどん養われてきました。本当にファニーな男なので、火の玉のような仔獅子をやってくれると思います」と、愛しさと期待を込めました。
七之助は、「『籠釣瓶』はまずお話が素晴らしく、そのなかでも八ツ橋は、格好良さや綺麗さはもちろん、女性の儚さや勤めの身ゆえの心の揺れなど、さまざまなものが渦巻くお役。そして先人の八ツ橋を演じてこられた役者の皆様が素晴らしい方々ですので、とても憧れの役でした。私だけではなく、女方で八ツ橋をやりたくない役者はいないだろうというような役どころですので、父の追善で初役でやらせていただけるのは本当にありがたいことです」と、強い思いを口にします。
また、「『野崎村』のお光は父が大好きなお役でしたし、(中村)鶴松にとてもぴったりなお役だと思っていますので、久松として彼のお光に会えることがとても楽しみです。『猿若江戸の初櫓』は、兄はドキドキだと言っていましたが、勘太郎は素晴らしいものが出せると思いますので、私は安心しています。二人で一緒にしっかりと踊るのは初めてですので、これも楽しみです」と、鶴松、勘太郎との共演を喜びました。
悔しさと感謝を胸に、歌舞伎俳優として生きる
同朋高校公演では、若者に歌舞伎の魅力を伝える役割も期待されます。勘九郎が、「これが歌舞伎なんだということを観ていただきたいと思います。特別な、斬新な演出は一切やりません。初めて歌舞伎を観る方にも受け入れていただける愛すべき古典の数々を上演させていただくので、現代まで続いてきた歌舞伎の底力をお見せすることを一番に心がけて勤めたいと思います」と、代表して説明。
勘三郎の逝去からこれまでを振り返り、「大変でした。悔しい思いもたくさんしています。ですが父の残してくれたものと、周りの方たちのおかげでさまざまなチャレンジができましたし、父のことを本当に愛して、哲明さんの子どもたちのためだったらと共演してくださった方々への感謝でいっぱいです。今回の『籠釣瓶』でも(片岡)仁左衛門のおじ様が、“哲(のり)だから”と、栄之丞で出てくださいます。本当にありがたいことです。これからも父、祖父がやっていた演目を次々と手がけていきたいと思います」と、勘九郎が感謝と決意を語ります。
七之助は、「生前も父の気持ちを理解したつもりでいましたが、父の残してくれた宝物のような演目を兄弟で初めてやるときに、これほどのプレッシャーのなか、こんな気持ちで1日1日を生きていたのだなとつくづく感じることができました。この気持ちを大切に、父が愛した歌舞伎というものに向き合い日々を生きていくことが私たちの使命であり、父だけではなく諸先輩方、先人たちの思い、残してくれたものを自分の体で体現し、次の後輩たちにも繋いでいくことが、生きていく意味、歌舞伎役者の人生だと感じるようになりました」と、前を見据えました。
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追善興行ラインナップとしてはこのほか、中村屋一門が毎年行い、来年で20年目を迎える全国巡業公演(陽春・春暁・錦秋歌舞伎特別公演)と、平成7(1996)年と平成23(2011)年に俊寛僧都の流刑地である鹿児島県三島村の硫黄島で行われた、三島村歌舞伎『俊寛』が10月に予定されています。「巡業では(中村屋に)縁とゆかりのある『舞鶴雪月花』『舞鶴五條橋』をやります。三島村での『俊寛』は、父が70になる来年、やる予定を(生前に)立てていました。父の遺志を継ぎ、三島村で初役で俊寛を勤められることも楽しみです」と語る勘九郎、そして七之助の来年の活躍に、今から期待がふくらみます。
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歌舞伎座「猿若祭二月大歌舞伎」は、2024年2月2日(金)から26日(月)までの公演。チケットは1月14日(日)から、チケットWeb松竹、チケットホン松竹で発売予定です。「名古屋平成中村座 同朋高校公演」は、3月6日(水)から18日(月)までの公演。チケット詳細は決定次第、歌舞伎美人でお知らせいたします。