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仁左衛門、南座「吉例顔見世興行」へ向けて

仁左衛門、南座「吉例顔見世興行」へ向けて

 

 2022年12月4日(日)から南座で始まる「當る卯歳 吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎」に出演する片岡仁左衛門が、公演に向けての思いを語りました。

 今年も、京都に年の瀬の訪れを告げる「吉例顔見世興行」が、南座で行われます。「早いもので、もう顔見世がやってまいりました」と、語り始めた仁左衛門。今回も3部制で行われる「吉例顔見世興行」について、「今年も、盛りだくさんの公演で、どの部もそれぞれ趣向があり、皆様のご期待に応えられるように、練って演目を立てた興行です」と、自信をもってアピールしました。

 

自然な“大きさ”

 仁左衛門が勤めるのは、第二部『松浦の太鼓』の松浦鎮信です。「今回は忠臣蔵物をと、まず考えました。あまり難しいものでなく、初めての方にもわかっていただけるもの、そしてこの演目の前に上演する『封印切』が少し悲しいお話ですので、こちらはお客様にとにかく楽しんでいただけるものに」と、作品を選んだ意図を伝えます。「『松浦の太鼓』は、演じる側としても、決して手軽ではないですが、“苦しまずに”楽しんで演じられる、いいお芝居です」。

 

 昭和51(1976)年3月の南座で、松浦侯を本役として初めて勤めた際、十七世中村勘三郎に教えを受けたこともあり、「『松浦の太鼓』と言えば十七代目の中村屋のおじ様の印象が強いのです」と話します。「おじ様は、そのときの気分でなさっているように見えるのですが、教えていただくと、(せりふの音の高低など)とても楽譜が細かい。ああ、こういうふうに言うんだなと、よく勉強させていただきました」。また、十七世勘三郎の松浦に対して自分が大高源吾を勤めたときは、勘三郎のアドリブに笑ってせりふが言えないこともあったと、笑いながら懐かしみます。

 

 そんな松浦侯について、「非常に情が深くて、一徹で、無邪気な人。一つ間違えば軽薄になってしまう。可愛いなと思わせる駄々っ子みたいなところがあります」と、イメージを語ります。「そして“大きさ”が必要。これは、自然と付いてくるもので、出そうとして出るものではありません」。実際、十七世勘三郎の舞台姿に“大きい”という印象を受けていたために、あるとき、セーターを贈ろうとして、つい実際よりも大きいサイズを用意してしまった、というエピソードも明かしました。

 

仁左衛門、南座「吉例顔見世興行」へ向けて

 

とにかく受け継いでいく

 今回大高源吾を勤めるのは中村獅童です。「若い方たちだけでやる公演では得られないものを得ていただきたいですね。やはり一緒の舞台に立つことが大事。あとは本人の感性でどこまで汲み取っていただけるか、期待しています」。また、中村隼人や中村虎之介、中村鷹之資、お縫を勤める孫の片岡千之助ら、共演する若い俳優たちに、「古典、伝統文化として受け継いできている技術をまず、しっかりと身につけてほしい」と呼びかけます。

 

 「先輩たちが 苦労して、築き上げてこられたものを、とにかく受け継いでいく」という言葉に力を込めます。「我々の世代にはまだいくらか、古くからの歌舞伎の“におい”が残せている部分があると思います。もちろん、時代に合っていかないといけないですし、江戸から今まで変わってきていますが、まず基礎を身につけてから、新しいことをやってほしい」と、現在、そしてこれからを支えていく歌舞伎俳優に向けた一つひとつの言葉が深く響きます。

 

 今年も吉例顔見世興行が上演されることについて、「これまで大変な回数を途絶えずに、幕を開けられたのは、やはり劇場へ足を運んでくださる皆様がいらっしゃればこそできたこと」と感謝しながら、「そういうお客様がお一人でも増えてくださるように。そして、日本の歌舞伎がますます栄えるよう、海外にも誇れる演劇を保っていけるように、お客様にも“広報部”としてお力添えをお願いします」と、笑顔で希望を込めました。

 南座「吉例顔見世興行」は12月4日(日)から25日(日)までの公演。チケットは11月9日(水)から、チケットWeb松竹チケットホン松竹で発売予定です。

2022/10/26