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南座「三月花形歌舞伎」出演者が語る意気込み

南座「三月花形歌舞伎」出演者が語る意気込み

 

 2023年3月4日(土)から始まる南座「三月花形歌舞伎」に出演の、中村壱太郎、尾上右近、中村鷹之資、片岡千之助、中村莟玉が、公演に向けての意気込みを語りました。

 今回の公演は歌舞伎三大名作の一つ、『仮名手本忠臣蔵』の世界を堪能できるプログラム構成となっています。現在五段目と六段目をAプロ、Bプロのダブルキャストで上演することが決定。また今回、鷹之資、千之助、莟玉の三人は、初めての南座「三月花形歌舞伎」への出演となります。

 

南座「三月花形歌舞伎」出演者が語る意気込み

 

 令和3(2021)年より、3年連続で南座「三月花形歌舞伎」への出演となる壱太郎は、「どうやって古典を見せていくか、なぜこの作品を、どのような思いでやるのかを、しっかりと伝えられる公演にしたいという思いでこれまでやってまいりました」と切り出します。「『忠臣蔵』が討ち入りの話だということが知られていない時代が来ていると思う」と、自身が感じた思いを明かし、「コンパクトな形ではありますが、お客様に通しで忠臣蔵を観たと思ってもらえるようなプログラムにしたい」と、平成世代の歌舞伎俳優たちで『忠臣蔵』に挑む意義を語ります。

 

 早野勘平を勤めるにあたり、「今回本当にすべてが初めてとなる、立役が主役の作品に挑戦させていただきます」と、緊張の面持ちを見せた壱太郎。「祖父(四世坂田)藤十郎の型でやっているのは父(中村鴈治郎)、叔父(中村扇雀)、そして(市川)亀治郎時代に、最後に演じた猿之助のお兄さんです。祖父に習った猿之助兄さんが、『習ったものをすべてあなたにお返しする』と言ってくださったので、それに応えられるようにしっかりと勤めたい」と、意欲を見せます。「今回右近くんが江戸式、私が上方式で演じますので、AプロBプロでやる意義、演じ分けの楽しさ、それぞれの役者の魅力など、ぜひ味わっていただきたいと思います」と、笑顔でアピールしました。

 

南座「三月花形歌舞伎」出演者が語る意気込み

 

 「楽しくやらせていただくことが、一番大事だということを勉強させていただいた公演でした」と、令和3年に出演した際を振り返った右近。来年3月の「三月花形歌舞伎」は、公演日数がこれまでより増えることを受け、「歌舞伎の公演として、歌舞伎役者として、一枚岩になってみんなで歌舞伎の面白さや楽しさを伝える公演にすることが、使命だと受け止めております。満を持してお客様にお届けする公演にしたい」と、率直な心境を口にします。

 

 勘平を勤めることに関して、「一度自主公演でさせていただき、(尾上)菊五郎のおじ様に教えていただいた大事なお役です。自然体で演じる方が、この忠臣蔵という古典の作品のなかでの早野勘平像が、よりリアリティをもって伝わるのではないかと思っていますので、チャレンジしてみたい」と、意気込みます。同世代の壱太郎とダブルキャストを勤めることについては、「“負けない”という気持ちではいない。強いて言うなら、勝ち負けではない感覚で繋がっている世代であることが、ほかの世代には負けないところだと思います!」と力強く語りました。

 

南座「三月花形歌舞伎」出演者が語る意気込み

 

 「前回、そして昨年の壱太郎の兄さん、右近の兄さんがなさっていたときから、僕も出たいとずっと憧れていた公演ですので、こうして来年の3月にお二人と一緒に、そして同輩の千之助さんと莟玉さんと一緒にさせていただけることは本当にうれしいです」と、感慨深げに述べた鷹之資。「熱苦しいぐらい頑張っていきたいと思います!」と気合十分です。

 

 今回斧定九郎と千崎弥五郎を勤める鷹之資は、「定九郎は立役ならきっと誰もが憧れる役だと思います。悪のかっこよさがあり、それに相対して千崎弥五郎は、忠義で実直というイメージの対照的な役柄。役者それぞれのもち味が出るよう、さらにその役の性根の部分でお客様に(Aプロ、Bプロ)どちらも良い、と言っていただけるよう、役を深く掘り下げて、ひと月の間でさらに進化していきたい」と、まっすぐな表情で語りました。

 

南座「三月花形歌舞伎」出演者が語る意気込み

 

 千之助も「この南座の花形歌舞伎にいつか出させていただける機会があればとずっと思っていましたので、こんな早くに機会をいただけたことは、本当にありがたいことだと思います。チャレンジ精神をもちながら、少しでもお客様に喜んでいただけるような舞台になるよう、勤めたいと思います」と、初めての出演となる「三月花形歌舞伎」への意気込みを見せます。

 

 「今回おかるというお役をいただきまして、まずは父(片岡孝太郎)に習うと思います。父も頑張ってと言ってくれましたし、一つひとつ、丁寧に演じていきたい」と、抱負を述べます。「おかるは莟玉の兄さんとダブルキャストですけれども、型の違いももちろんありますので、本当に自分との戦いです。まずは自分に勝てるように頑張りたいと思っています」と、気合を込めました。

 

南座「三月花形歌舞伎」出演者が語る意気込み

 

 莟玉は、「今年そして昨年と、東京の劇場まで、この三月花形歌舞伎の評判が入ってきて、同世代としては、とてもうれしく、羨ましく、かつ少し怖い」と、感じていたことを素直に話します。「これは勉強会ではございません。一つの公演として、成功させるということをテーマに、壱太郎の兄さんが先陣を切って、いろんなアイデアを出されている。そこに自分が実際出させていただいたときに、どのようにして戦力になれるのだろう、と考えながら、すごくうれしいと思うのと同時に、とても緊張しています」と真摯に語ります。

 

 千崎弥五郎とおかるを勤める莟玉は、「どちらもやってみたいと思っていたお役ですし、チャレンジできるということはとてもうれしいです」と、期待をにじませます。「若手が中心となって、古典演目に挑戦できる機会はなかなかありませんので、この公演への憧れがずっとありました。なんとかそこに混ざりたいという気持ちになり、勝ち負けではなく“活かしきりたい”という思いのほうが強いです」と、公演へ向けての熱い思いをのぞかせました。

 

 「僕ら一人ひとりが思いを爆発させて、古典に挑んでいくという良い月になればいいなと思っております」と壱太郎。花形俳優が一丸となって挑む「三月花形歌舞伎」の『仮名手本忠臣蔵』の世界に、ますます期待がふくらみます。 

 南座「三月花形歌舞伎」は、2023年3月4日(土)から26日(日)までの公演。チケットは2月9日(木)から、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売予定です。

2022/12/28