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男女蔵、児太郎が語る、歌舞伎座『神霊矢口渡』 特別ビジュアルも公開

男女蔵、児太郎が語る、歌舞伎座『神霊矢口渡』 特別ビジュアルも公開

 

 2023年7月3日(月)から始まる歌舞伎座「七月大歌舞伎」夜の部『神霊矢口渡』に出演の市川男女蔵、中村児太郎が公演に向けての思いを語りました。

男女蔵、児太郎が語る、歌舞伎座『神霊矢口渡』 特別ビジュアルも公開

 

父からの教え

 今回、男女蔵は渡し守頓兵衛を、児太郎がお舟をそれぞれ初役で勤めます。男女蔵は、今年4月に逝去した父・四世市川左團次と、今回の頓兵衛役が決まった際に会話を交わしたといい、「あまり小細工はするな、というアドバイスに尽きました。自分自身も小細工をしてこなかったから、そのような言葉が出たのだと思いますし、これから先も、ほかの役であっても、あまり小細工はするなよ、と。それがとても印象に残っていますね」と、明かします。「父の舞台を子どもの頃からずっと見ていましたが、改めて同じ役をいただいてお稽古をすると、こんなに大変なのかと思います。これから(父が演じていた役を)初役で演じることも多くなると思いますが、自分が必要とされるようになれればという強い思いがあります」と、胸の内を語ります。

 

 児太郎は「命をかけても守りたいものがある、非常に信念がしっかりしている女性だと思います。私ものめり込んでお芝居をすることが好きなタイプですので、今回お舟のお役をいただいたときはとてもうれしかったです」と、声を弾ませます。父・中村福助も過去にお舟を演じており、「一人の男性に惚れる、その気持ちが大事だということを、父がとても細かく言っていました。稽古をしていきながら、技術的なことだけではなく、心のもちかた一個一個を自分の体に入れていって、初日までにつくり上げることができたら」と、意気込みました。

 

役への心構え

 極悪非道な人物として描かれる頓兵衛について、「歌舞伎での“悪い人”は、根っから100パーセントの悪人ではないと思う」と、考えを述べた男女蔵。「誰かに仕えていたり、お金に目がくらんだり、立場上さまざまな理由があり、悪さをしてしまう。頓兵衛にしてもほかの悪役にしても、最終的に自分が理想としてるのは、“悪い人だからこそ、善もなくてはいけない”ということ。歌舞伎は本当に悪い人や嫌な人に見えると、品位がなくなると思うのです。それぞれの性根をわきまえて、しっかり出していけたら」と、役への心構えを語ります。「心のなかでは、四代目市川左團次の頓兵衛が一番好きですが、そこにあまりこだわりすぎないで、児太郎さんと二人の『神霊矢口渡』をまた見たいと言っていただけるような、頓兵衛をつくっていけたらと思います」。

 

男女蔵、児太郎が語る、歌舞伎座『神霊矢口渡』 特別ビジュアルも公開

 

 一方、恋に身を焼く娘お舟を勤める児太郎は、令和元(2019)年の歌舞伎座「十二月大歌舞伎」でうてなを演じた際、中村梅枝のお舟を間近で見て、「お舟は出たら出っぱなしで、舞台を守り続けるお役」として、とても印象に残っていたと話します。「女方のなかでも、すべての登場人物と絡んでお芝居をしていく、数少ないお役の一つですので、いろいろなスイッチだったり、エネルギーだったりを使い分けていかなければならない」と説明。「幕切れまでお舟としてひたすら取り組み、感情的に勤めることができたら。頓兵衛を言葉だけで黙らせるぐらいの迫力を出していきたいなと思います」と、意欲たっぷりです。

 

 「相性はいいと思います」と、お互いのことをそれぞれ話した二人。「一緒に舞台に立っていて、演じやすい方です。私は児太郎さん大好きですね。仲良くしていただいて、とても慕っていただいてありがたいと思っています」と、男女蔵が素直に述べると、児太郎も続けて、「息や間合いなど、とても相性がいいと思いますので、男女蔵さんの胸を借りて、一所懸命勤めることができたら」と、気持ちを伝えました。

男女蔵、児太郎が語る、歌舞伎座『神霊矢口渡』 特別ビジュアルも公開

 

 このたび、歌舞伎座「七月大歌舞伎」夜の部『神霊矢口渡』の特別ビジュアルが公開されました。ビジュアルでは、刀を手に義峯の後を追おうとする頓兵衛を、娘のお舟が説得をする緊迫した場面が映し出されます。強欲非道ぶりを見せる父親とは対照に、我が身を犠牲にしてまでも、愛する人を守ろうとするお舟の悲恋がよりいっそう滲むビジュアルとなりました。

 歌舞伎座「七月大歌舞伎」は7月3日(月)から28日(金)までの公演。チケットは6月14日(水)から、チケットWeb松竹チケットホン松竹で発売予定です。

2023/06/13