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菊之助が語る、大阪松竹座「七月大歌舞伎」

菊之助が語る、大阪松竹座「七月大歌舞伎」

 

 2023年7月3日(月)より大阪松竹座で上演中の「七月大歌舞伎」昼の部『京鹿子娘道成寺』、夜の部『俊寛』に出演する尾上菊之助が、公演に臨む思いを語りました。

 大阪松竹座への出演は、令和元(2019)年7月以来となる菊之助。「大阪の夏の風物詩として毎年上演されている公演に、また参加させていただきたいとずっと思っておりました。4年ぶりに出演がかない、しかも大阪松竹座の開場100周年という大きな節目の年にうかがわせていただけて光栄です」と、喜びを口にします。

 

 

白拍子花子の鐘への情念

 女方舞踊の大曲『京鹿子娘道成寺』の白拍子花子に取り組むのは5度目で、大阪では初めて。「父(尾上菊五郎)や、(坂東)玉三郎のお兄さんと演じさせていただいた『京鹿子娘二人道成寺』の経験が大きいです」と話します。「父には身体の使い方を教えてもらい、おくれを取らないようにと懸命に踊った記憶があります。玉三郎のお兄さんには、曲の解釈や意味、踊り分けの仕方、鐘への思いをどこで出すのかということを細かく教えていただきました。その経験が、一人で踊る『京鹿子娘道成寺』の基盤となっております」。

 

 能「道成寺」を素材とし、鐘に恨みをもつ清姫の亡霊が、白拍子花子となって道成寺の鐘供養に現れます。当時の流行唄を繋ぎ合わせた組曲に乗せて、女方のさまざまな美を見せていき、最後には蛇体となって本性を現すという、みどころにあふれた名作舞踊です。

 

 「時が流れていく物悲しさや無常さ、儚さを描くところから始まっていく、変化に富んだドラマチックな展開で、曲の構成や歌詞も素晴らしく、役者の工夫によって変えられる余白があり、世界観が深いですね。花子の鐘に対する情念を内に秘めつつ、あどけない少女から恋を知った大人の女性までを踊り分けていきます。さまざまな女性の恋心の様をご覧いただきつつ、どういうところで鐘に対する思いが湧き出てくるのかをお楽しみいただければと思います。歌詞のもっている魅力と情念の表現の仕方は、踊り手の技量によって変わってきますので、ご注目いただければと思います」と、意欲をにじませました。

 

義と情に厚い平家の武将・丹左衛門尉基康

 近松門左衛門作の『俊寛』で勤める丹左衛門尉基康は、3年ぶり2度目となります。「流刑となった鬼界ヶ島へ一人残る決意をした俊寛僧都の覚悟を見て、最後は都へ向かう船から彼を見送るという人物。初役のとき、岳父(二世中村吉右衛門)にせりふの抑揚をはじめ、いろいろと本当に細かく教えていただきました」と菊之助。「絶海の孤島で都を思って生きている俊寛が、妻の東屋が都で亡くなったと告げられたときの絶望感や、丹波少将成経と(島の海女)千鳥という恋人同士の若い二人に託す俊寛の慈愛が描き出されています。素晴らしい作品だなと、出演するたびに思います」と、作品の魅力について語ります。

 

 今回、俊寛を演じるのは片岡仁左衛門。「仁左衛門のお兄さんが演じられる俊寛のおそばに出させていただけることが楽しみです。お兄さんが描かれる近松の世界にゼロから取り組んで、丹左衛門という義と情に厚い平家の武将になりきれるように勤めたいと思います」と、力を込めました。

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 大阪松竹座「七月大歌舞伎」は25日(火)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

2023/07/06