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隼人、團子、米吉が語る、スーパー歌舞伎『ヤマトタケル』
2024年2月4日(日)から始まる新橋演舞場 スーパー歌舞伎『ヤマトタケル』に出演の中村隼人、市川團子、中村米吉が、公演について語りました。
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昭和61(1986)年2月4日に新橋演舞場で初演された『ヤマトタケル』は、哲学者・梅原猛が二世市川猿翁(当時三代目市川猿之助)のために書き下ろし、その壮大なストーリーとスペクタクル満載な舞台から、“スーパー歌舞伎”というジャンルを築き上げた伝説的な作品です。今回歴史的な本作を令和の時代に上演するにあたり、本年逝去した二世猿翁の思いを受け継ぎ、初演当時の演出や構成で上演されます。小碓命後にヤマトタケルと大碓命の2役を、隼人と團子がダブルキャストで勤め、米吉は兄橘姫と弟橘姫の2役を、昭和63(1988)年以来となる早替りで演じます。
若い世代でつくる『ヤマトタケル』
「この作品は歌舞伎が大変だった時代に生まれたスーパー歌舞伎で、38年の時を経て、2024年にまた新たなキャストで今回上演させていただきます」と、力強く切り出す隼人。父の中村錦之助は、昭和63年新橋演舞場でヤマトタケルを勤めており、親子二代で本役を演じることになります。「歌舞伎は経験が生きる作品ですので、父はきっといろいろと教えて、支えてくれると思います。親子ではありますが、歌舞伎の先輩後輩としてぶつかっていきたいです」と、意気込みます。「(『ヤマトタケル』は)その当時古典歌舞伎になかった、スペクタクル、ストーリー、そしてスピーディーの3Sを大事にして生まれた作品。38年前の作品とは思えないぐらいの内容の濃さ、派手なシーン、そして最後に心を打つ物語が今のお客様にどう伝わるか、ワクワクしています」と、期待をふくらませます。
『ヤマトタケル』のワカタケルで平成24(2012)年に初舞台を踏んだ團子は、「幼い頃から祖父(二世猿翁)のビデオをたくさん見ており、ずっと『ヤマトタケル』という演目に憧れていましたので、まさか自分が小碓命と大碓命の役をさせていただけると思ってもいませんでした」と、喜びをにじませます。「祖父がよく著書などでも“歌舞伎はスター芝居である”と言っておりますけれども、それと同じようにこのヤマトタケルという人物のスター性というのは、劇作品として素晴らしいものがあると思います。そのかっこよさがお客様にもストレートに伝わるところも本作の魅力だと思います」と、真摯に語ります。
米吉は、「私の父(中村歌六)は、初演の『ヤマトタケル』にタケヒコの役で出演しており、日頃からどれだけ大変なものだったのか、猿翁のおじ様がどれだけすごいことをなさったか、を何遍も聞いておりました。そのような作品で、この兄橘姫と弟橘姫の2役を勤めさせていただけることは本当にうれしく、ご縁を感じます」と話します。「この作品には、“滅びゆくものの美”のようなものが描かれており、古来から愛されてきたこのヤマトタケルという人物を、梅原先生が脚色を加えていらっしゃいますので、ぜひご覧いただき作品の魅力にたくさん触れていただきたいです」と、呼びかけました。
それぞれの役への思い
隼人は、「最後の伊吹山の“人間は傲慢の病にかかる”という場面が、この作品のキーになってくる」と、眼目に触れます。「ヤマトタケルは、最初は心優しい、美麗な青年の役ですけども、成功体験を重ねていくにつれて自信がつき、その自信が傲慢になった結果、自分の足元をすくわれてしまいます。僕も團子くんも、若いからこそ表現しやすい部分もあるかと思うので、存分にこの若さを活かして勤めていきたいです」と、目標を掲げます。また、最後に見せる可憐な白鳥の宙乗りについては、「小さい頃にこの衣裳で飛ぶのか、と衝撃を受けた記憶があります。安全第一に、そして舞台でそれまでの場面で積み重ねてきた思いを昇華させて、羽ばたいていけるようにやりたいと思います」と、続けました。
「ヤマトタケルの役は、祖父の人生であると考えています」と、まっすぐな表情で語る團子。「どこを切り取っても祖父が浮かぶようなせりふが多く、『この作品は骨太だから、どんなにカットしてもその美学や伝えたい哲学的なものは、必ず色が出る』と、言っていました。印象的なせりふは、『天翔ける心、それがこの私だ』の前にある、『何か途方もない大きなものを追い求めて』『それは何かよくわからぬ』。とにかくわからない何かを追い求めることに、とても魅力を感じます」。宙乗りは、「子どものときから一番憧れているシーンですし、そこに懸ける思いは、本当に大きいです。祖父の雰囲気を大切にしながら勤めていきたいです」と、思いを口にします。
兄橘姫・弟橘姫の2役早替りに挑む米吉は、「愛する人の子どもを必死に守り育てていく姉と、愛した男性のために命を落とす妹。ヤマトタケルにとって二人はオアシスのような、彼の志を理解し守っていく」存在であると表現します。梅原猛によるノーカット版の原本も読んだと言い、「梅原先生が描きたかった“人間臭さ”が実はどの役にもあり、(兄橘姫・弟橘姫は)ヤマトタケルの純然たるヒロインなのですが、ただ美しく、ヤマトタケルを支え彩っていくという部分にとどまらない、人の業が描かれていますので、そういった部分を意識して勤めていきたい」と、真剣な眼差しで語ります。
最後に、二世猿翁への思いを聞かれた三人。「お話しする機会がありませんでしたので、すべてを踏襲することは難しいかもしれませんが、父や澤瀉屋の方々にうかがって、その精神をスーパー歌舞伎を通して継いでいけたら」と隼人が述べると、続けて團子が、「自分が歌舞伎を好きになった理由はやはり祖父の存在が本当に大きい。学ぶは真似ると良く祖父が言っていましたので、一つひとつ忠実に、どのように演じていたのかを研究してこの作品に挑めれば」と話します。三人のなかで唯一、二世猿翁と共演経験がある米吉は、「私が初舞台をさせていただいたのは、猿翁のおじ様のお芝居でした。亡くなられた次の年に(『ヤマトタケル』を)上演ということですから、天翔けられたおじ様に届くように我々もしっかり勤めたいと思っております」と、それぞれの心境を語りました。
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新橋演舞場 スーパー歌舞伎『ヤマトタケル』は、2024年2月4日(日)から3月20日(水・祝)までの公演。2月公演のチケットはチケットWeb松竹、チケットホン松竹で販売中、3月公演は2024年1月25日(木)から発売予定です。
※「澤瀉屋」の「瀉」のつくりは、正しくは“わかんむり”です