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「新春浅草歌舞伎」賑やかに迎えた初日

「新春浅草歌舞伎」賑やかに迎えた初日

 左から、中村橋之助、中村米吉、坂東新悟、中村歌昇、尾上松也、坂東巳之助、中村種之助、中村隼人、中村莟玉

 

 2024年1月2日(火)、浅草公会堂「新春浅草歌舞伎」の初日が開幕。開幕前に、出演の尾上松也、中村歌昇、坂東巳之助、坂東新悟、中村種之助、中村米吉、中村隼人、中村橋之助、中村莟玉が、初日挨拶を行いました。

 初日開幕直前、浅草公会堂の前に登場した出演者9名。当初鏡開きが行われる予定でしたが、年明けに発生した能登半島地震の影響を鑑み、このたびは挨拶のみが行われました。今回の公演で、新春浅草歌舞伎を担って10年目を迎える、松也、歌昇、巳之助、新悟、種之助、米吉、隼人の出演はひと区切りとなります。

 

「新春浅草歌舞伎」賑やかに迎えた初日

 屋号のかけ声がかかるなか、口火を切ったのは松也。「地元の皆さんに支えられ、そしてお客様の温かい心意気に支えられて、僕たちは10年間勤めることができました」と、厚い感謝の念を伝えます。「私たちを成長させてくれた、この浅草歌舞伎を、次の世代にバトンタッチできてひと安心しています」としみじみと語り、「連日、皆さんの温かいご声援をお待ちしております」と、笑顔で呼びかけました。

 

「新春浅草歌舞伎」賑やかに迎えた初日

 お集まりの皆さんをしっかりと見渡しながら、歌昇は、「出演者全員が、第1部、第2部の両方に出られるのは久しぶりです」と、元の公演体制に戻ったことを喜び、「一所懸命勤めていきたいと思っております」と、真っ直ぐな言葉で熱意を表しました。

 

「新春浅草歌舞伎」賑やかに迎えた初日

 続いて巳之助は、「浅草にはこれからも遊びに来ることもありますし、浅草公会堂には別の舞台で出演させていただくこともあるかと思いますが、この初日の挨拶は、新春浅草歌舞伎に出ないと見られない景色。今、目に焼き付けています」と、感慨深く挨拶しました。

 

「新春浅草歌舞伎」賑やかに迎えた初日

 新悟は、「今回演じている役を、いつかまた、今度は歌舞伎座で勤められるように、精一杯勤めたいと思いますし、そしていつかまた、この浅草に、若手の助けとして戻ってこられるように精進していきたいと思います」と、未来を見据えての心境を明かしました。

 

「新春浅草歌舞伎」賑やかに迎えた初日

 朗らかな挨拶から始まったのは種之助です。「ひと区切りということもございまして、今までお世話になったご恩返しも込めて、千穐楽まで精一杯勤めさせていただきます」と、この10年間への思いもにじませながら、意気込みを見せました。

 

「新春浅草歌舞伎」賑やかに迎えた初日

 米吉は、自身の初舞台や、新春浅草歌舞伎への初出演も辰年だったと振り返り、「ひと区切りも辰年と、辰年に縁があります」と話します。「私は酉年ですので、“立つ鳥跡濁さず”という気持ちで精一杯勤めたい」と、干支を織り交ぜ、笑顔を誘います。

 

「新春浅草歌舞伎」賑やかに迎えた初日

 「30歳になって初めての1月の舞台なので気を引き締めて」と話すのは隼人。「12年間出続けた舞台も今年でひと区切り。悔いのないように思い出をたくさんつくりながら、頑張って初役に挑んでいきたいと思います」と、真摯な眼差しで思いを伝えました。

 

「新春浅草歌舞伎」賑やかに迎えた初日

 続いてマイクを受け取った橋之助は、「今年1年、今年の1カ月で、お兄さん方のいろいろな素晴らしいところを吸収して、一所懸命に勤めてまいりたいと思います」と、継いでいく側としての覚悟もにじませ、しっかりと気合を込めました。

 

「新春浅草歌舞伎」賑やかに迎えた初日

 莟玉は、「ちょっと寂しい感じもします」と、名残を惜しみながらも、「でも先輩たちを胸を張って見送れるような、いいひと月にしたいと思いますので、千穐楽まで、応援のほど、よろしくお願いいたします」と、真剣な口調で述べました。

 

 いよいよ開幕した「新春浅草歌舞伎」。「お年玉〈年始ご挨拶〉」のトップバッターを飾るのは松也です。最初の演目は義太夫狂言の名作『本朝廿四孝』「十種香」。米吉勤める、三姫の一つである八重垣姫から、橋之助勤める武田勝頼への一途な思いが伝わります。世話物の傑作『与話情浮名横櫛』「源氏店」では、隼人の与三郎と米吉のお富が、数奇な運命をたどる男女の恋を熱演。歌六は和泉屋多左衛門で懐の深さを見せます。「しがねえ恋の情が仇」で始まる名ぜりふが、場内に響きました。『神楽諷雲井曲毬』「どんつく」では、どんつくを勤める巳之助を中心に、出演者全員が勢ぞろいで、場外の浅草の街の如く賑やかな踊りを披露し、華やかな打ち出しとなりました。

 

 第二部は、種之助の「お年玉〈年始ご挨拶〉」から始まりました。重厚な時代物の『熊谷陣屋』で熊谷直実を勤めるのは歌昇。相模を新悟、藤の方を莟玉、そして弥陀六を歌六が勤めます。舞台にあふれる戦乱の世の悲しみが、客席の涙を誘いました。洒脱な舞踊『流星』では、四人の雷たちが繰り広げるコミカルな騒動の様子を、種之助が見事に踊り分け、観客の目を引き付けます。最後は、こちらも出演者全員が登場する『魚屋宗五郎』。松也が、妹を殺された無念さから禁酒の誓いを破る宗五郎を演じ、新悟が勤める女房おはまらを巻き込んで、大胆な酔いっぷりを展開します。ほろりとする結末に、場内を拍手が包みこみ、ひと区切りとなる公演をしっかりと締めくくりました。

 浅草公会堂「新春浅草歌舞伎」は26日(金)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

2024/01/04