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獅童、壱太郎が語る、南座『あらしのよるに』

獅童、壱太郎が語る、南座『あらしのよるに』

 

 2024年9月4日(水)から始まる南座「九月花形歌舞伎」『あらしのよるに』に出演の中村獅童、中村壱太郎が、公演に向けての思いを語りました。

 南座「九月花形歌舞伎」では、今年発刊30周年を迎える、きむらゆういちの絵本を原作とした『あらしのよるに』を上演します。本作の初演は平成27(2015)年9月の南座。以来、歌舞伎座や博多座で上演を重ねてきました。これまでと同じく狼のがぶを演じる獅童は、「9年ぶりに初演の地・京都に戻ってくることができて、非常にうれしく思っています」と、微笑みながら切り出しました。

 

獅童、壱太郎が語る、南座『あらしのよるに』

 

初演を振り返る

 9年前の初演時について、「自分で新作歌舞伎を一からつくることが初めての経験で、不安もありました」と話す獅童。上演が始まって間もない頃に、「課外授業でいらしていた団体の学生さんたちが最後は総立ちになってくださった」と、作品がもつ力の手応えを感じたと言います。その後、舞台はますます人気を博し、満員御礼の札止めにもなりました。「絵本を題材にした作品ですが、子ども向けではなく、古典歌舞伎と同じように、大人のお客様にも届くよう真剣に取り組んだ。皆の気持ちが一つになれたことが成功につながったのかなと思います」。

 

 「絵本発刊30周年の節目に上演できることもうれしいですし、京都はこの作品に強い思いをもっていた私の母の故郷でもありますから、感慨深いですね。思い出の詰まった初演のときの気持ちを忘れずに勤めたいと思っています」。今回は、これまで尾上松也が演じていた山羊のめいを壱太郎が初役で勤めます。「大筋は変わりませんが、演じ手により芝居全体の雰囲気も変わるのではないかと思います。また、細かいキャラクター設定も初演時から変化しています」と、新しくなる部分の構想を明かします。

 

 今回『あらしのよるに』初出演となる壱太郎。「めいは松也さんが大切にされてこられたお役。その思いも大切に、この作品の世界を存分に楽しんで演じたい。初演の南座で、子どもたちが笑って楽しんで観ていた姿を鮮明に覚えています」と、客席で見た光景を振り返ります。「絵本を読んで愛情や友情について考えた」と話し、「めいは、とにかく大切な友達だからと、がぶを助けに行く。思いが本当にまっすぐです。そういった、原作を読んで感じた最初の印象を大事にしたいと思います」と、心構えを伝えました。

 

獅童、壱太郎が語る、南座『あらしのよるに』

 

作品と向き合って見えるもの

 獅童はしみじみと口にします。「この作品に取り組むたびに、優しさや無償の愛といった大切なものを思い出しますし、読むたびにぐっとくるんです。また、がぶが父親に言われた、“自分らしく、自分を信じて生きる”ということは、どこか自分の役者人生にも当てはまる気がします」と。「私の息子たちも本作を気に入っていますが、まさにお話に込められたテーマや大切なものについて、子どもたちに伝えたいと思える作品です。広い世代の方に一人でも多く観ていただきたいですね」。

 

 壱太郎は、「先入観や思い込みのような、凝り固まってしまったものをニュートラルに考えさせてくれる作品だと感じます。獅童のお兄さんは、私なりのめいを考えたらいいよと仰ってくださったのですが、お兄さんが積み重ねてこられた、いろいろな思いがあることを今改めてうかがって、もう1回、絵本を読んでみたいと思いました。(自分のコンディションによっても)読むたび、観るたびに感じることが違っていく、そういう作品だと思って臨みたいです」と、率直な心境を述べました。

 

 さらに獅童は、「『あらしのよるに』は歌舞伎の技法、音楽、踊り、立廻りやだんまりなど、古典的な要素が詰まっています。自分が新作をつくるときのこだわりかもしれません」と、作品をつくるうえでのポイントについても言及します。「がぶの心の声を義太夫さんに語ってもらうと、若い方にも、義太夫は心情を語る役割もあるとわかっていただける。歌舞伎を初めてご覧になる方に、古典にも興味をもっていただけたらうれしいですね」と、熱く語りました。

 南座「九月花形歌舞伎」は、9月4日(水)から26日(木)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

2024/08/13