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歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」初日開幕

歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」初日開幕

 

 2024年9月1日(日)、歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」の初日が幕を開けました。

 初世中村吉右衛門の功績を顕彰し、その芸と精神の継承を謳い、平成18(2006)年9月歌舞伎座から始まった秀山祭。本年もゆかりの作品をはじめ、彩り豊かな演目がそろいました。

 

 昼の部は『摂州合邦辻』から。初世吉右衛門が、合邦道心をたびたび演じてきた、ゆかりある義太夫狂言の名作です。合邦道心(歌六)の庵室に、娘の玉手御前(菊之助)が闇夜に紛れてやってきます。玉手御前は、継子の俊徳丸(愛之助)に邪な恋心を抱き、許嫁の浅香姫(米吉)を連れて逃げ出した俊徳丸を追ってきたのでした。厳しい言葉とは裏腹に娘を思う合邦の姿、そして玉手御前は花道の出からその妖艶な姿で、観客を物語の世界に引き込みます。俊徳丸と浅香姫が現れ、狂ったような恋心で迫る玉手御前を堪らず合邦が刺すと、物語は加速度を増し、手負いの玉手御前から打ち明けられる邪恋の真実を、客席も固唾をのんで見守ります。登場人物それぞれが織りなす思いに心打たれるひと幕に、温かい拍手が送られました。

 

 続いては、『沙門空海唐の国にて鬼と宴す』です。唐の都、長安では夜な夜な怪異が起きていました。遣唐使船でやって来た空海(幸四郎)は、ある日、妓楼で玉蓮(米吉)を相手に不思議な力を見せます。玉蓮から皇帝の崩御を予言した化け猫の話を聞いた空海が早速、噂の屋敷へ向かうと、現れたのは黒猫を頭に乗せた春琴(児太郎)という夫人。怖がる橘逸勢(吉之丞)を横目に、そんな状況すら楽しむ空海に、黒猫が語りかけます。空海は化け猫と対峙し、ある疑問を解くため白楽天(歌昇)を伴い、50年前に葬られた楊貴妃の墓を探りますが…。

 

 街で知り合った謎の老人・丹翁(歌六)から、楊貴妃の時代に唐へ渡った阿倍仲麻呂(染五郎)の手紙を託された空海は、仲麻呂の魂と対峙します。星が瞬く美しい空間で、時空を超えて言葉を交わす空海と仲麻呂の姿は観客を魅了し、宴の場面では空海の踊りと歌に、客席の熱気も高まります。そして楊貴妃(雀右衛門)が白龍(又五郎)に伴われて登場すると…。憲宗皇帝(白鸚)との謁見では、高階遠成(染五郎)に伴われて空海が登場し、高麗屋三代がそろう舞台に大向うが響きます。再演でさらに進化した物語に盛大な拍手が送られました。

 夜の部は、『妹背山婦女庭訓』。「太宰館花渡し」では、天智帝の御代、帝を追い落とした蘇我入鹿(吉之丞)が、横恋慕する采女の局の行方を詮議するため、大判事清澄(松緑)と太宰後室定高(玉三郎)を呼びつけます。両家が不和を装い采女の局を匿っていると疑う入鹿は、それぞれの子の出仕と入内を要求し、傍らの桜の花の枝を渡します。国崩しの妖気を漂わせる入鹿の恫喝が響き、思い悩む二人の親の姿が、悲劇を予感させます。

 

 「吉野川」の場では、幕が開くと、桜満開の吉野川を滝車と両花道で表現する雄大な舞台に、客席からはため息が漏れます。両家の確執ゆえに会うことのかなわない久我之助(染五郎)と雛鳥(左近)。川を挟んで対面し言葉を交わす、切なくもいじらしいふたりのやりとりが観客を作品の世界に引き込みます。入鹿に従うときは桜の花をそのまま、子を討つときは花を散らせて川に流すと約束した大判事と定高は、命を絶つ決意をした子どもたちの思いを受け止めながらも相手の子は救おうと、桜の花の枝をそのままに川に流しますが…。思いがけない形で久我之助と雛鳥が対面を果たすクライマックスでは、客席のあちらこちらからすすり泣きが聞こえ、情感あふれる舞台に温かい拍手が送られました。

 

 最後は、歌舞伎十八番の内『勧進帳』です。80歳で弁慶を演じることが目標であると生前語っていた二世吉右衛門。このたびは「二代目播磨屋八十路の夢」として、ゆかりの配役での上演です。関守の富樫左衛門(菊之助)による名のりのあと、源義経(染五郎)が、山伏に身をやつした家臣の武蔵坊弁慶(幸四郎)一行とともに花道に登場します。弁慶の白紙の勧進帳の読み上げから、弁慶と富樫の「山伏問答」の丁々発止のやり取りまで、息つく間もない緊迫した展開に、客席は釘付けになります。幕切れでは、吉之丞の後見が幕外で見守るなか、幸四郎の弁慶が花道を飛び六方で引っ込むと、場内の盛り上がりは最高潮に。二世吉右衛門の思いを継いだ『勧進帳』に、割れんばかりの大きな拍手が送られました。

 


 またロビーでは『沙門空海唐の国にて鬼と宴す』にちなみ、高野山からマスコットキャラクターのこうやくんがお客様をお出迎え、幕間も大変賑わいを見せました。

 
歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」初日開幕

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 歌舞伎座および歌舞伎座タワーでは、今月から、AI通訳機「ポケトーク」による多言語ガイドサービスを本格的に開始しました。案内所や、警備・巡回のスタッフが、全85言語(うち11言語はテキストのみ)の翻訳機能を持つ端末を活用し、幅広い国や地域からのお客様に向けて、チケットの購入方法や、木挽町広場や劇場での過ごし方などをご案内します。

 

 また、歌舞伎座地下2階の木挽町広場では、9月期間限定で超有名店の銘菓を販売いたします。観劇の際はぜひお立ち寄りください。

 

 歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」は、25日(水)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

2024/09/06