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仁左衛門、南座「吉例顔見世興行」へ向けて
2024年12月1日(日)から始まる南座「當る巳歳 吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎」に出演する片岡仁左衛門が、公演に向けての思いを語りました。
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内蔵助と由良之助
南座「吉例顔見世興行」では、令和4(2022)年に『松浦の太鼓』、令和5(2023)年に『仮名手本忠臣蔵』「衹園一力茶屋の場」と、これまで2年続けて忠臣蔵を題材にした作品を上演。今年も同様に『元禄忠臣蔵』より「仙石屋敷」をお届けします。この背景として、仁左衛門は、「いろいろな角度から、あの事件を見る」という趣向があると明かしました。
『元禄忠臣蔵』の大石内蔵助、『仮名手本忠臣蔵』の大星由良之助は、いずれも実在の大石内蔵助をモデルとした人物です。「自分の命を賭して主人の無念を晴らそうという、その心は一緒。ただ、『元禄忠臣蔵』のような書き物は言葉で押していき、『仮名手本忠臣蔵』のような丸本物はゆったりとしていて、動きで伝える部分もある。同じ上演時間でも台本の厚みが違います。意識して演じ分けるのではなく、自然と演技方法が変わるだけなのです」。
「『元禄忠臣蔵』は、家来を含めていろいろな角度から描く『仮名手本忠臣蔵』とは捉え方がまた違って楽しいです」と話す仁左衛門。「主人が亡くなってからの2年間は本当に長かっただろうと思います。300人以上いた家来のなかで気持ちが変わらずに残ったのはこの47人だった。どうしても家族のことや逃れ得ぬ縁で去っていく者もいた。その人たちを責めるのではなく、それも人間の本当の姿だと。こういうとらえ方が好きなんです。『元禄忠臣蔵』のもつ魅力ではないでしょうか」と、忠臣蔵を描くさまざまな作品を演じてきたからこその思いを伝えます。
見応えのある忠臣蔵
真山青果作品の特徴の一つに、長ぜりふがあります。「言葉を伝えるのでなく、内蔵助の心情を伝えることを心がけていますね。せりふを100喋っても印象に残るのは2つ、3つぐらいですから、いかにお客様の心に響くように訴えるか。訴えたいのは内蔵助と四十七士の心情であって、討ち入りまでの段取りなどについて長く喋ってもそれほど響かない。そのあたりはある程度カットして、テンポよくすることもあります」と、表現の工夫に言及します。
近年では、赤穂浪士の事件や忠臣蔵の物語を知らない人が増えてきている現実があります。「そういう方たちにも、ひと幕のお芝居として納得していただけるように演じたい。例えば『菅原伝授手習鑑』など、通し狂言をほとんどご存じなくても、「寺子屋」の場面を観るだけでその役々の気持ちがわかって感動してくださいます。全部はわからなくても、その場面だけで納得していただけるようにしていかなくてはいけないのだと思います」と、真摯な表情で語りました。
締めくくりに仁左衛門は、「『元禄忠臣蔵』のなかでも「御浜御殿綱豊卿」などと比べると「仙石屋敷」は上演回数が少ない。それでも、皆様にまた観たいと思っていただけるように勤めたいですね」と柔和な笑みを浮かべ、「非常に豪華なメンバーですので、見応えのある忠臣蔵になると思います」と太鼓判を押しました。
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南座「吉例顔見世興行」は、12月1日(日)から22日(日)までの公演。チケットは11月9日(土)から、チケットWeb松竹、チケットホン松竹で発売予定です。