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八代目菊五郎、菊之助が語る、南座「吉例顔見世興行」
2025年12月1日(月)から始まる南座「吉例顔見世興行」に出演の八代目尾上菊五郎、尾上菊之助が公演に向けての思いを語りました。
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先祖への敬意を込めて
南座への出演について菊五郎は、「顔見世興行は久方ぶりの出演ですが、1年の締めくり、そして次の年へつながる大切な公演です。今まで歌舞伎を支えてくださった方、そして歌舞伎に新しく興味を持ってくださった方への感謝の気持ちを込めて精一杯勤めさせていただきます」と語ります。
音羽屋そして歌舞伎の発祥の地でもある京都。「今まで初代から七代まで歴史を重ねてきて、歌舞伎のなかに菊五郎という名を残してくださった先祖への敬意を込めて、この南座の公演は、身が引き締まる思いです」と語る菊五郎。また南座初出演となる菊之助も「初代が生まれた土地なので、初代に顔向けできるお芝居ができるように日々努力してまいります」と意気込みました。
昼の部に演じる『鷺娘』について、「映画を通して『鷺娘』に注目が集まっていることを胸に、古典歌舞伎の今まで守られてきた芸術の精神を、今のお客様と共有できたら、こんなに幸せなことはないという思いで踊らせていただきます」と語ります。夜の部では『弁天娘女男白浪』の弁天小僧菊之助を演じます。「私が弁天を京都で演じるのは、菊之助襲名以来、約30年ぶりのことです。その間修行してきた成果をお見せできるように、精一杯勤めたいと思っております」と気を引き締めます。
襲名から半年
襲名から半年を経て、菊之助は自分自身の変化や成長について、「踊っているときの体力が、お芝居を重ねていくうちについた気がします」と実感を語ります。また「最近は緊張感よりも、どのようにお芝居でお客様に楽しんでいただくかを、出番の前に考えております」と頼もしいひと言。隣で菊五郎は息子の成長について「倅の歌舞伎が好きだという思いが小さい頃から現在に至るまで変わらないのが、とてもいいことだなと思っております」とやさしい眼差しを向けました。
また、南座で出演する演目について菊之助は、「『玉兎』は、うさぎが月で餅を楽しくついている風景や、カチカチ山のお話を物語る踊りです。お客様に可愛く楽しく見てもらえるよう、楽しく踊れたらと思います」、『寿曽我対面』については、「先輩方がいて緊張する場面もあると思いますが、ちゃんとお腹から声を出して、響くようなかっこいいせりふを言えたらと思います」と気合十分です。
関西も江戸も超えて残る日本人の心
音羽屋ゆかりの『弁天娘女男白浪』を演じるうえで、先祖への感謝の気持ちを大切にする菊五郎。「歴代の菊五郎、そして祖父尾上梅幸も勤めましたゆかりの演目を、初代さんが生誕した土地でぜひ勤めたいと思い、弁天を選びました」と語ります。江戸歌舞伎の世話物の代表的な作品で、「江戸の情緒そして江戸の人たちが何を大切にしてきたかを関西の地でも感じていただきたい」と熱い思いを明かしました。
また作品を選んだ理由の一つとして、「この作品を通して根底に流れているものは、親が子を思う以上に子も親を思っているということ。現代でも親子の縁はとても大切で、関西でも江戸でも変わらず日本人の心として残っているものです」と続けました。歴代の菊五郎が後世に残した古典演目について、「日本人の心を映した演目をつくられていて、その演目に触れるたびに、先祖の偉大さを感じております」と感慨を込めました。
「ただ受け継ぐだけではなく、受け継いで今のお客様にその魅力をお伝えすべくこれからも修行していく覚悟」と語る菊五郎。歌舞伎への注目が高まるなかで、「(歌舞伎は)敷居が高い、難しいと先入観で思われる方もいると思いますが、歌舞伎にはいろんな角度から楽しめる入口がたくさんあります。歌(うた)舞(まい)技(わざ)、それをお客様が感じる、楽しむ、体験していただくことが一番です」と締めくくりました。
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南座「吉例顔見世興行」は12月1日(月)から25日(木)までの公演。チケットは11月9日(日)から、チケットWeb松竹、チケットホン松竹で発売予定です。
