歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



6月前半の単衣

6月後半の単衣



優子さんの綿絽は透け感が涼しげで、しかも、決して品を失っていない一枚だから、街着にもピッタリ。帯はさらに目が粗いものを合わせており、かっちりしすぎず、見た目にも軽やかです。



彩乃さんのゆかたには、夏献上の半幅帯を変わり文庫に結びました。ゆかたの帯結びは好きなように結んでOK。帯の柄がトンボ柄の帯締に見えます。絞りのゆかたは、肌触りが心地よいのも魅力です。

 

6月前半の単衣

6月後半の単衣




純子さんの夏大島には麻の帯を、すっきりとお太鼓に結びました。大島といってもフォーマルの度合いがとても高く、紋を散らしたようなタチバナの柄が涼しげで、とても印象的な着こなしです。

千里さんの絽の小紋には白の紗の帯を合わせています。帯締、帯揚もきものや帯と色のトーンを合わせているので、華やかななかにも品のよさと奥ゆかしさが感じられる組み合わせになりました。

 

着こなしでも軽やかさを演出

関さん母娘。「お母さん、似合う似合う!」と千里さんに言われ、これまで敬遠していた夏大島に初挑戦の純子さんも安心されたご様子。今年の夏は二人でたくさん、きもので出かけましょうと話していらっしゃいました。

 
ゆかたを「娘らしく」着る
   ゆるやかに 着ても浴衣の 折り目かな
(大槻紀奴夫)
 と俳句にも詠まれているように、カジュアルな装いだからこそ、きちんと着たときの美しさがまた格別なのが、ゆかたです。

 最近は、若い人のゆかた姿が増え、それはそれでとても楽しく、嬉しいことですが、母としてはやはりきちんと、「娘らしく」着てほしいもの。裾の乱れも気にせずはしゃぐ若者らしさより、折り目正しいゆかた姿を、親は望むものではないでしょうか。

 ゆかた選び方のコツとしては、まず、白地などの薄い色は避けること。白地に藍染のゆかたは、涼やかで夏らしくはあるのですが、どうしてもカジュアル度が高くなります。ひとつ間違えば寝巻きにも見えかねません。ご近所での夕涼み程度なら、それもまたよしですが、お出かけ着として楽しむのであれば注意したいところです。

 大竹さん母娘に着ていただいた綿絽や絞りなど、手のかかった素材はきちんとした印象を与えやすい一枚で、お出かけ着にはぴったりです。


薄物だからこそきちんと着る
 ゆかたも夏物も、夏のきものは薄物。それだけに着付には十分気をつけなければなりません。

 暑い季節ですから、涼しく着たい――。それを“ゆるく”ととらえる人がいますが、ちょっと注意したい考えです。薄物ゆえ、衿を抜きすぎたり、前合わせをゆったりしすぎると、だらしない印象になりかねません。特にゆかたは素肌の上に一枚きりで着ることも多いもの、意識してきものと同じようにきっちり着るつもりでちょうどいいくらいです。

 着付のコツはとにかく補正をきちんとすること。若いお嬢さんのメリハリのある体型は、きものではある意味ハンデです。きれいにきものを着るには体を円筒形にするのが一番、つまりウエストのくびれをいかになくすかに、着こなしのポイントがあるのです。胸も和装ブラジャーを活用するか、タオルで押さえるなどしましょう。

 薄物である夏のきものの場合、補正がきちんとされていないと、着崩れしやすいばかりでなく、身体の線が表にひびいてしまいます。洋服ならばチャームポイントになるようなことも、きものでは御法度と心得ましょう。そのあたりは母の、娘の厳しい目でチェックしてください。

 またメイクも気をつけたい箇所です。ゆかたの場合は特に薄化粧を心がけましょう。薄いお召し物にバッチリメイクでは、いやがうえにもケバケバしさを印象づけてしまいます。見た目にも涼しげなナチュラルメイクがおすすめです。

 もう一つ、ゆかたで忘れてならないのは、素肌に着るため、肌の状態が丸出しになってしまうことです。手足、襟足のお手入れも忘れずにしましょう。清潔感がなりよりです。
大竹優子さん 彩乃さん

 以前は三社祭の御神輿もかついだというアクティブなお母様、優子さんは、久しぶりに着るというゆかたに大感激だったそうです。「娘にもっと遊んでもらおうと思って応募しました。きものを一緒に着られたら、いろいろと楽しめますものね」。お嬢さんの彩乃さんも「ゆかたを着るのがこんなに楽しいなんて新発見でした。今年の夏は母に着せてもらって、一緒に出かけようと思います」。この夏は、仲良しお二人一緒の時間がさらに増えそうです。

関純子さん 千里さん

 お嬢さんの千里さんが応募されました。「還暦という節目を機会に、母と一緒に楽しめることをもっと増やしたいと思い、応募しました。私はきものが好きで普段から着る機会が多いのですが、プロの方に見立てていただくと、また違ったきもの選びがあるのだなとわかり、とても楽しかったです」。お母様の純子さんも「夏大島は初めて着たのですが、とても気に入りました。帰ったら、なじみの呉服屋さんで探してみようかしらと思っています」。

長沼静きもの学院

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