歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



色留袖にも豪華な袋帯を
黒留袖と同じく、吉祥文様や有職文様が多い色留袖。菊や牡丹などの花々をあしらったものも多く、地色のバリエーションに合わせて黒留袖よりさらに豊富な模様が見られます。帯は黒留袖と同じく、白、黒、金地の豪華な織りの袋帯を。

 

色留袖ならこんな帯もOK
淡い繊細な色合いのきものでは、豪奢な帯とバランスがとりにくいこともあるでしょう。色留袖では帯の選択の幅を広げ、格の高さは落とさず、きものの色にふさわしい色の袋帯を選んでください。金糸、銀糸で吉祥文様を描いてもこんなやさしい色合いの帯もあります。

 

金、銀が基本の小物カラー
帯地の小ぶりのバッグに、かかとの高い帯地の草履。かかとを高くするのは、裾を長めに着るためです。小物は、帯地でなくてもかまいませんが、フォーマルな着付にふさわしく、金や銀があしらわれた豪華なものであることが基本です。

 

顔映りを見て色選びを
色白で華やかな顔立ちの久保さんには、明るい色の色留袖を着ていただきました。色味のトーンを抑えたりぼかしを入れたりして、少し控えめなくらいの模様で、親族としての品を保ちます。そのかわり帯は黒地できりっと引き締め、印象深い着こなしになりました。

 
色が加わるだけでぐっと華やかになる
 黒留袖と色留袖の違いは、無地部分が黒か色のあるものかの違いだけですが、それだけでもぐっと華やかさが違ってきます。

 色留袖も結婚式や披露宴で活躍するお召し物ですが、身内ならば兄弟や従兄弟の結婚式の場合に。甥や姪が新郎新婦の場合は、黒留袖、色留袖のどちらでもOKです。一つ紋であれば、訪問着と同格になりますので、パーティー着として活用することもできます。周囲の方に相談して決めるとよいでしょう。

 近頃は未婚であっても、礼装として色留袖を用いる方が多くいらっしゃいます。「振袖は愛らしすぎる」と感じる大人の女性に、訪問着よりも格が高く品のある色留袖が、晴れの日の装いとして選ばれているのです。訪問着はお茶会やパーティーでも着られますが、色留袖は晩餐会などそれよりも格式の高い場、集まりのお召し物として位置づけられます。


何色を選ぶか、それが問題
 色、これは着る方の好み、そして顔映りのよい色を選ぶのが一番です。きものの顔映りは、洋服とはまた違いますので、実際に様々なきものを自分の身体に当てて選ぶのがよいでしょう。

 皇室の方々がお召しになるという印象からか、色留袖というと品のいい中間色がイメージされがちですが、近頃は紫や濃い緑といった強い色のものも数多く見受けられるようになりました。

 ふた昔前までなら、結婚式や披露宴も和室で行われ、きもの姿もつねに全身見えているものでしたが、今どきの結婚式、披露宴の多くは着席。そうなると、裾にだけ模様が施されている留袖は色無地と区別がない状態です。であれば、色で自分らしさを表現しようと考える方が増えてくるのも納得。花嫁衣裳の邪魔をしないもの、そして品格を損ねないものであれば、どのような色を選ばれてもよいのではないでしょうか。


時代とともに変化する模様
 留袖はおめでたい席のためのお召し物ですから、施される模様もおめでたいもの、吉祥文様です。松竹梅や鶴、亀の代わりの亀甲柄、また宝づくしや、束ね熨斗などもよく見受けられる柄です。

 また、かつては留袖といえば染模様と決まっていましたが、近頃は刺繍で柄を浮かび上がらせたものや、箔を用いてゴージャス感を演出したものなども見受けられるようになっています。洋風な会場にもなじみ、華やかさを感じさせることができる黒留袖、色留袖も数多く登場していますから、着る人の個性を演出できる、ぴったりの一枚がきっとあるはずです。

 最後に、着付の際に気をつけたいことを一つ。それは背中心をきっちり決めること。ここが少しでもずれていると、両胸元の紋の高さ(位置)までずれてしまいます。留袖姿は写真に残る場合も少なくありませんから、いつも以上に細かい部分までしっかり着付けたいものです。

写真撮影で手に取るときも末広は金の面を見せる

 留袖は礼装ですから、帯のやや左脇に末広(小型の扇)を差しておくのが基本。慶事の場合は金の面を見せるのがお約束です。
 元来、末広はご祝儀を先様に渡す際に、開いてその上に乗せた、また畳に手をついてご挨拶する場合に、顔の前に横一文字に置くために使われていました。
 現在は、親族写真を撮る際に手にするくらいで、上記のような使われ方はほとんどされていませんが、いざとなったら、ああそうかと思い出してささっとできたら素敵。留袖での振る舞いを心得ている人だと誰もが認めるに違いありません。

長沼静きもの学院

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