歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



無地の袴に華やかなっものを合わせるのが基本
左の小林さんは桜の総柄小紋にえんじの袴。右の大洞さんは中振袖にダークグリーンの袴。どちらも若々しく、とても華やかな袴スタイルです。

 

袴を変えるだけでイメージは大きく変わります!
左の小林さんはシャクヤクの花をあしらった小振袖に、きものに合わせた段染めの袴。ガラリと雰囲気が変わりました。右の大洞さんは袴をえんじから紫にお着替え。きものは替えていませんが、袴の色合わせだけでも、ずいぶんイメージが変わります。

 

真ん中でリボン結びもいいけれど…
袴の結び目は左右で決まりはありませんが、利き腕とぶつかりにくいということで、左側に寄せることが多いようです。ここでは、袴に流れる刺繍があるので、右に寄せていますが、もちろん、中央で結んでもかまいません。

 
女子学生の袴スタイル、そもそもは…
 今や、卒業式といえば「袴姿」というくらい、女子学生の定番の卒業スタイルになっていますが、その火付け役は、人気少女漫画の『はいからさんが通る』(連載は1975~1977年)だったのではないでしょうか。

 大正時代を舞台にした作品で、アニメ、映画、ドラマにもなっているので、きっと多くの方がご存じでしょう。この作品の主人公が着ていたのが、矢絣などの小紋に袴。髪はおろしたお嬢様結びでした。日本女性らしい古風さがありながら、どこかモダン。そんなスタイルに憧れて、学生最後の卒業式にはぜひという人が増えていったようです。

 そもそもこの女子学生の袴スタイルの始まりは、明治期。誕生したばかりの女学校での慣れない椅子の生活、そこで、裾の乱れを気にする女教師や女学生が動きやすいように、ということで発案されたといわれています。男性用の袴との最大の違いは、股のないスカート状の「行灯袴」になっていることです。


卒業式袴スタイルの基本
 現在、卒業式で着られているのは、えんじや紫、ダークグリーンといった濃い色の袴に、中振袖か華やかな小紋の小振袖を合わせたスタイルを選ぶ方が多いようです。

 紋入りの色無地も、礼装に対応したものになりますから、もちろんOKです。ただ、無地袴×無地になりますから、晴れ着としてはかなり落ち着いた雰囲気になります。この場合は、色無地のきものは明るい印象の色を選ぶようにしたり、きれいな色の伊達衿を重ねたりすることで、若々しく華やかに着こなせるでしょう。

 帯は袴の場合、半幅が決まりです。半幅帯は、ゆかたに用いられるのと同じタイプのものですが、ゆかた用よりしっかりした織りのものを選ぶといいでしょう。袴姿での帯は、袴ときものの間からほんの1、2cm見えるだけですが、全体のバランスを考えるとあまり軽い素材ではないほうがよいかと思われます。

 帯結びも、袴の場合は小さめの文庫が決まりです。文庫結びの羽根の部分で袴を支えることになりますから、このためにもしっかりした織りの帯がよく、よりしっかり結んでおくことも大切です。

 袴は生まれて初めて着る、という方がほとんどでしょうから、立ち居振る舞いに戸惑うのは当たり前。特に気をつけたいのは腰掛けるときです。袴は文庫になっている帯結びが支えています。普通に腰掛けてしまうと、この部分がお尻に引っ張られて下がってきてしまう危険が!
 袴の両脇から後ろへ手を入れて、文庫になっている帯結びを支え、軽く袴を持ち上げるつもりで軽く腰掛けます。そうすると袴の背部分に余裕ができ、着崩れの心配が少なくなるというわけです。

長沼静きもの学院

バックナンバー