歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



成人式や卒業式、結婚披露宴などにもぴったりな絞りの華やかな振袖。辻が花調の柄、吉祥文様などが染と刺繍で施されています。合わせた帯には光る素材が織り込まれてあり、ふくら雀をアレンジした豪奢な結びに。華やかな振袖をさらに華やかにするコーディネイトです。

帯を替えるとイメージが一新。桜があしらわれた若々しい柄ゆきですが、茶地のシックなのものを選んだことで落ち着いた印象になります。小花を散らした髪飾りも外して、ヘアスタイルもシンプルに。同じ振袖でも、コーディネイト次第で大きく印象を変えられるのです。

 

少し濃い目の水色地に四季の花々をあしらった訪問着は、松竹梅の模様も入り、若いミセスのお正月の晴れ着にぴったり。新年会やお年始を華やかに彩ってくれます。最初に合わせた帯は、白地に道長文様。帯締にもはっきりとした色を合わせ、華やかなコーディネイトになりました。

同じきもので帯をチェンジ。桜や紅葉があしらわれた豪奢なものですが、地色の緑が濃い色合いなので、全体のトーンがぐっとシックになりました。また、帯締、帯ともに、きものにある色を選んだことで、全体のトーンが揃い、それも印象を落ち着いたものにしています。

 

淡いピンクのたたき地紋に淡いグレーで蘭の花が描かれた訪問着。ニュアンスカラーがミセスにぴったりですし、洋花の柄付けが季節を選ばない、とても便利な一枚です。最初に合わせたのは白地の七宝柄の袋帯。白地が多いので、正装度、格調の高いコーディネイトになりました。

黒地に宝相華があしらわれた帯にチェンジ。宝相華は、唐の時代に中国で考案された文様で、正倉院の宝物にも使われています。おめでたい場所にぴったりの柄ゆきですが、帯の地色が黒になったことで、全体のコントラストがはっきりしました。メリハリをきかせたいときにぜひ。

 
私にぴったりなお正月きものは?
 きものが日常着であった時代も、お正月は特別。新年を改まった気持ちで迎えようと、きものを新調する家が少なくありませんでした。時代が変わった今、どのようなきものがお正月にふさわしいのか――。基本的な考えは変わりません。新しい年を晴れやかな気持ちで迎えたい、という気持ちに沿ったものであればいいのではないでしょうか。

 初詣、新年会、お年始…と、きものを着て出かけたいシーンは様々です。必ずしも礼装である必要はありませんが、「晴れ着」ではありたいところ。自分にとって、どのようなきものだったら晴れやかな気持ちになれるのかを基本に考えてみましょう。ポイントは華やかさ、そしてめでたさ。きものだからこそ表現できる、表現しやすい新年の心持ちです。

シーン別、お正月きもの
 まずは初詣。20代前後の人にはぜひ振袖を着ていただきたいところです。振袖はミスの礼装であり、神様にお参りに行くのですから、こんなにぴったりのお召し物はありません。もう少しカジュアルなものをというのであれば、紬や小紋もおすすめです。特に紬は保温性が高いので温かく、また最近は明るい色のものも数多くつくられています。遊び心のある帯とも相性がいいので、楽しく、可愛く装ってください。

 お年始で迷ったときは江戸小紋を。それなりの格もあり、けれど様々な帯と合わせやすく、小物しだいで表情も変わる、とても便利なきものです。

 友人との新年会。これはもう洋服と同じです。華やかに、自分の好みで装ってください。訪問着で格のあるスタイルを決めるのもよし。小紋ならば色柄によって、粋にも可愛らしくもなります。いずれにしても普段、きものを着ない人なら、きもので登場したというだけで、きっとお友達からほめられることでしょう。

 初釜。主催者次第ですので、案内にある指定に従いましょう。わからない場合は、先輩に尋ねると安心です。近頃はホテルで催される場合もあり、指定がないのであれば、華やかな訪問着もいいでしょう。紋付の色無地を着る方も多くいらっしゃいます。座ったときに色無地にも見えるような裾模様のきものもおすすめです。

 初芝居。歌舞伎俳優の皆さんがよく「客席が華やかだと演じているこちらの気分も盛り上がる」と言います。お客様が晴れの場として楽しんでいると伝わるからなのでしょう。ですから、思い切り華やかに着飾ってOK。演目にちなんだ柄、お正月らしい柄のきものや帯があればさらに素敵です。

 そんな遊びをしたくなったら、染帯で楽しんでみましょう。様々な図案が手描きされたものがあるので、これ!というものが見つかるかもしれません。

年齢別、お正月きもの
 20代の人なら、ぜひ振袖を。きものには、何歳になったら何を着てはいけないという決まりはほとんどありませんが、振袖だけは別です。今だからこその華やかさを存分に楽しんでください。色もピンク、オレンジといったはっきりした色は、肌がきれいな年頃にこそ似合うものです。派手すぎると言わずにトライしましょう。

 30代はまさにきもの初めの旬。何を着てもOKですが、なるべく顔映りのよい色柄を選ぶようにしましょう。こればかりは、写真やモニターではわかりません。「これは似合わない」と洋服感覚で決めつけず、実際に身体に当ててみて、自分の肌色とベストな相性の色柄を見つけてください。

 40代になると「もう若くないから」と、地味な色柄を選ぶ方がいらっしゃいますが、顔映りのいいものであれば遠ざける必要はありません。むしろ、大人だからこそ可愛らしさが魅力になるということもあります。洋服ときものは違うと心得て、ぴったりな一枚を見つけてください。

 そして50代。もちろん50代には50代の華やかさがありますが、目標にしたいのは品のよさです。品よく華やかというのは、若い人たちにはなかなかできないことです。そこで、グレーやベージュなどはいかがでしょう。淡い落ち着いた色もおすすめですが、自分と相性のいい色を見つけられたら、それが“品よく華やか”の最強カラーです。

長沼静きもの学院

バックナンバー