歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。




「長沼静きもの学院」は各校ともすべて駅のそば。きもの姿に変身したら、すぐに街へ出かけられます。受付では自分の希望や期待すること、心配なことなどを伝えておくのが、しっかり楽しむコツ。

 

井尻学先生の小紋。左脇と袖に炎をイメージした柄が入っていて訪問着風になっています。同系色帯は染の袋帯で、久保さんの名前の一文字、“愛”をデザインしたものを、お太鼓柄に染めたものです。シルバーグレーの落ち着いた雰囲気ですが、華やかさがあります。

 
きものがかなえる変身願望
 きものを着てみたら、どんな自分になるのだろう――。きものを着てみたいと思うとき、そんなことを思い描いていませんか。言ってみれば変身願望、です。

 残念ながら、普段の生活をきもので過ごす人は多くありません。つまり、きものを着る=非日常と感じている人が多いのではないでしょうか。だから、きもの=ハードルが高いと感じがちなのですが、逆に考えれば、きものを着るだけでいつもとは違う自分になれる――。どこか、コスプレが楽しい、と人気があることに近いのかもしれません。

 でも、単に衣裳を変えたからといって、楽しいというわけではないでしょう。着ているものが変わる――、たとえばお姫さまのドレスを着てみたとしましょう。すると、不思議なことに、見た目だけでなく気持ちまで、いつもとはまったく違ってくるはずです。しぐさ、動きもなんとなくお姫さまらしくなるはず…。これをとてもオシャレに実現させられるのが「きものを着てみる」ことなのです。

着るだけで「美人」になれる、それがきもの
 きものは洋服とはまったく違った構造になっています。胸元、衿元、長い袖、足元の合わせ…。もし、きもの姿で、洋服と同じように動いてしまったら、綺麗とはいえないものになってしまうでしょう。こう言うと、「きものを着るためには、しぐさから習わないとダメなのかしら…」と、思われたかもしれません。

 でも、大丈夫。不思議なもので、洋服とは違った制限のあるものを着ているだけで、身体は自然とその制限に合った動きをしようとするものなのです。もちろん、最初からうまくはいかないかもしれません。これは「着装心理」というのだそうですが、動きづらいものを着ている、だから綺麗に動こうという心理が働くものらしいのです。

 着ているものが変わったことで、しぐさや動きが変わり、気持ち、つまり中身まで変わってしまう…。きものってすごいパワーをもっているものだと思われませんか。

街歩きまでプロの指南でレッスン
 今回、おじゃました長沼静きもの学院の「きものドレスアップ体験講座」。これは各校ごとに開催されているもので、きもののプロが、選んだきものを着付けてもらったら、さあ外へ、街へ繰り出しましょう、というものです。きものになじんだら、次は教室でじっくり着付や基本的なきもののしぐさ、動きなどのレッスンが受けられます。

 ただ着ただけでは、変身願望は満足できないはず。ちょっと誰かに見てもらいたい、できれば街を歩いて、きものを着ている自分をもう一人の自分の目で眺めてみたい。でも、初めてのきものだから外出するのはいろいろ心配…という人に、プロの付き添いで街歩きなんて、こんな至れり尽くせりな状況を見逃す手はありません。

 もう一つのおすすめポイントは、とにかく手軽なことだそうです。試してみたいと思ったら、身軽に出かけられ、終了したら再び教室に戻って脱いで終わり。きものには着た後のお手入れが欠かせませんが、とりあえず試してみたいという人にとって、見逃せないポイントではないでしょうか。

着付を習い始めたばかりの鈴木さんのきものは、「長沼静きものひととき」からセレクトしたもの。グリーン地に扇面を小花で表現したもので、格の高い小紋にピンクの箔の名古屋帯を合わせることで、20代にふさわしい若さと美しさを表現することができました。

 
 
 

この墨流しの小紋は、雑誌で見つけたきものにひと目惚れした安東さんが、偶然にも出合うことができ、さっそく仕立てた一枚。帯もきものに合わせてあつらえた白の名古屋帯です。華やかなうえに、爽やかな印象を与えるコーディネイトになっています。

 
 

長沼静きもの学院

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