歌舞伎いろは
【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。


灰はリサイクルの材料としてさまざまな用途に使えるため、薪や藁などを燃やして出た灰は、「灰買い」が買い取りました。
生ゴミも作物の肥料として農家の人たちに利用されました。

其の三 ゴミをゴミにしない町

 江戸は塵ひとつない美しい町だったと言われていますが、その秘密はゴミをゴミのままに終わらせない独自のシステムにありました。現代も古紙のリサイクルは行われていますが、たとえば不用になった紙類は、江戸では「紙屑買い」が買い集めていました。紙屑は問屋がまとめ、これを漉き屋が煮溶かして漉き返すのです。こうしてできた再生紙は浅草紙と呼ばれ、数少ない江戸の生産品の1つとなりました。

 また、薪や藁などを燃やして火をおこせば毎日たくさん灰が出ますが、これを「灰買い」が買い取りました。灰は藍染めの触媒、作物の肥料、やきものの釉薬など、多様な用途があるのです。湯屋など大量の灰が出るところは灰小屋にためているので、灰買いが定期的に訪ねて買い取っていきました。

 また人間の排泄物は立派な肥料となりますから、「下肥え取り」が買い取っていました。長屋の大家にとっては、これが大事な収入源でもあったのです。また、生ゴミも作物の肥料として活躍するようになりました。江戸っ子が初物を好んだため、農家は生ゴミを発酵させて地面の温度を上げ、現代で言う促成栽培をするようになったのです。また、生ゴミは埋め立て地にも使われ、江戸の町づくりに貢献しています。

くらしの今と昔

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