歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



宮城野の秋の景色を思わせる萩の軸。手触りがなんともいえない。

さまざまな美しさを興がり、難しさを面白がる仙台人の心

 北国への物流の拠点、東北一江戸に近い都として栄えた仙台では、その地の利と財力を背景に、優れた職人が大勢腕を振るっていた。中でも政宗が学問奨励と勧業を兼ねて、大阪から名人を招聘して仙台に技術を移した筆作りは、現在も「仙台御筆」の名が残るほど、高い技術を誇った仙台の名産品。

 「筆は当時の日用品。どんな城下町にも筆職人は住んでいました。そこにちょっと変わったものを興がる、仙台人の遊び心が加わって、仙台御筆が生まれたのです」

 そう説明してくれたのは、仙台市内で毛筆を商う松泉堂の大友伸一さん。

 「宮城野の萩を使った萩筆は軸作りが難しく、毛をはめ込むために、中をくりぬくのですが、植物の茎ですから、すぐにぐしゃっとつぶれてダメになってしまいます。皮が剥けてもダメ。難しいことに挑戦して面白がる気質もあったのかもしれませんね」

 だが現在ある萩筆は、以前に職人が作ったものだけ。材料の茎を集めるのも大変で、今では作れる職人もほとんどいなくなってしまったそうだ。

 「面白いものを作りたいという意欲はあっても、やはり筆の需要そのものが減っていて、職人さんも大変。この技術を残していきたいとは思いますが、なかなか難しいですね」

 そういえば日常生活の中で筆を目にしなくなって久しい。今年の正月は久しぶりに筆を執って、和の文化を体感すべく書初めでもしてみてはどうだろうか。

松泉堂3代目の大友伸一さん。大友さんの一族は代々筆職人の家系で、祖父の代で分家して松泉堂を開いた。
   
有限会社 松泉堂

住所

 : 

仙台市若林区三百人町157

TEL

 : 

022-293-2759

営業時間

 : 

9:00~18:00(土曜17:00閉店)

定休日

 : 

日曜日・祭日

すべて手作業で作られる仙台御筆。材料は馬や山羊、イタチや狸などの毛。
仙台を象徴する風雅な花・萩。
職人の技を極めた仙台御筆は、姿が良いだけでなく書き味も滑らか。

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