歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



漆器の質感が料理の美しさや味をよりいっそう引き立ててくれる。

「鳴子漆器」の未来を求め、伝統の技を新たな形で極める

 その昔、鳴子の主な産業は漆器生産だった。ろくろを用いて生活用品の器を作る木地師や、それに漆を施す塗師が多くこの地に住み、現在は伝統工芸品に指定されている「鳴子漆器」を300年以上にわたり創り続けていた。しかし時代の流れとともに機械製や中国産に押され、鳴子だけでなく国産の漆器作りは危機的状況にあるという。そんな中で木地師の多くは、昔は手遊びに自分の子どものおもちゃとして作っていた、木工玩具の生産を本業とするようになっていった。中でも「鳴子こけし」と呼ばれるこけし人形は、国内外に収集家が生まれるほど、芸術性の高さが認められて現在に至っている。

 そのほかにも、独自の漆工芸を極める人々が現れ始めた。それが佐藤建夫さん、和也さん親子だ。伝統的な食器作りも手がけるが、健夫さんは漆で絵を描き、和也さんは梁や建具、柱などと漆で塗り上げるという今までの漆工芸にはなかった世界を拓き、注目を集めている。また180年前の古民家を移築し、漆で仕上げた自宅をギャラリーとして一部開放し、生活の中に生きる漆の魅力を直に伝える試みも。漆器をもっと身近に、普段使いにしてほしいと願う佐藤さんは、作品である漆器に、鳴子の山の恵みを持って出す小さなレストランも始めた。材料は、佐藤さん自身が近所の山や川で採った野菜に魚。燻製の肉も手作りだとか。しっくりと手に馴染む漆器に盛られた料理は、すべて健夫さんの奥さんが作る。その旨みは滋味深く、自然の恵みのありがたさを思い出させてくれる。

佐藤漆工房 ギャラリー漆木舎

住所

 : 

宮城県大崎市鳴子温泉字南原200

TEL

 : 

0229-87-2361

営業時間

 : 

9:30〜17:00

定休日

 : 

火曜日

HP

 : 

http://urushigoya.com/

※お食事をご希望の場合は5名以上・要予約で承ります。

注意深くこされた上塗り用の漆は、はっとするほど美しい色。同じ漆という素材が、使う人によって絵や食器、建具など、全く違った世界を創り出す。
佐藤さん親子の温かい人柄が感じられる「ギャラリー漆木舎」では、人懐こいゴールデンレトリバーが出迎えてくれる。
 

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