歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



昭和25年 建設中の4代目歌舞伎座(現・歌舞伎座)

知的好奇心に富み、熱気に満ちた会場

 歌舞伎講座は、恵比寿駅にほど近いノッティングヒルズ東京のダイニングルームにて開催されました。抽選でご招待した50名のお客様は、春のファッションに身を包み、期待に胸を膨らませておられるご様子。開場時間に余裕をもってお越しになる方も多くいらっしゃいました。

 今回の講師は、元歌舞伎座支配人で現在は歌舞伎座舞台株式会社社長の金田栄一さんです。金田さんは、松竹(株)歌舞伎座宣伝課長、演劇本部ゼネラルマネージャーなどを歴任しながら、歌舞伎の舞台に長年携わってきました。もちろん歌舞伎座という建物についても、隅々まで精通しています。さて、どんなお話が飛び出すのでしょうか。

 「こんにちは。今日お越しの皆さんは、歌舞伎にご興味のある方ばかりだと思いますが、今一番関心があるのはもうすぐ建て替えとなる歌舞伎座だと思います。今年の1月から、さよなら公演と銘打って興行が行われていますが、ご観劇の皆さまも、また通りすがりの方々も、歌舞伎座の前で記念写真を撮ったり、あるいは絵を描いたり、多くの人の注目を集めていますね。今日は、歌舞伎座のお話を中心にこれから講座を進めていきたいと思います」

 会場前方の大きなスクリーンには、古い歌舞伎座のモノクロ写真が映し出されます。

左:お越しのお客様は、お好きな席を選んでお座りになり、配布された資料などに目を通しながら静かに開演を待っておられました。
右:講師の金田栄一さん。敷居が高いと思われがちな歌舞伎を、豊富なエピソードを交えて、やさしく楽しく語ってくださいます。
 
明治44年開場 2代目の歌舞伎座

 「初代の歌舞伎座は、明治22年に開場されました。当時としては最先端の洋風建築でしたが、構造は木造でした。2代目の建物は、内部構造は初代のままで外観だけを変えたようですが、がらっと様子が変わって桃山様式の古風な和建築となります。でも残念ながら大正10年に焼失してしまいます。

 その後、建て直しにとりかかり、3代目の建物がほぼ完成に近づいていたのですが関東大震災で被害を受け、予定よりやや遅れて大正14年に開場しています。そして、現在の歌舞伎座、つまり4代目にあたる建物が昭和26年に開場するわけですが、その建築中の貴重な写真が残っています。おそらく開場の2カ月くらい前の時期だと思いますが、まだ足場が組まれていますね。3代目の建物と同じように見えるかもしれませんが、見分けるポイントがあるんですよ。屋根に注目してみてください。4代目は左右に1づつですが、3代目は中央にもうひとつ大屋根があります。写真で見比べるとよくわかりますね」

会場のみなさんは、スクリーンに映し出された珍しい写真を食い入るようにみつめ、しきりにうなずいておられました。

 
大正14年開場 3代目の歌舞伎座

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