歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



糸の魅力を世界に広げる人びと
うねのある生地の風合いが、縞の面白さ・味わいをさらに深める。

 岡谷出身のテキスタイルデザイナー・宮坂博文さん。昭和38年に日本人で初めて国際インテリアデザイン賞を受賞するなど、国内のみならず海外でも高い評価を受けている。
 「いいデザインには素材の知識が絶対に必要。織物組織学と実技、この二つがあってこそ、良い作品が生み出せるのです」
 岡谷という生糸の街に生まれ育った宮坂さん。「素材を活かす織り方があり、そこにデザインが生まれる」という基本を、つねに念頭においている。
 「絹というのは面白い素材で、糸の引き方やその後の処理の仕方で、柔らかくなったり、光沢が出たり、質感も見た目もさまざまになる。それぞれの特徴をどう活かすのか? 素材と会話しているうちに、作品は自然に出来ていきます」
 美しいものを作り続けるには、知識と感性と技術が大切だと言う宮坂さん。その作品の美しさは、かつて日本の生糸の品質に驚いた海外の人々を、さらに驚かせていくだろう。



岡谷絹工房
住所 長野県岡谷市中央町 1-13-17
TEL 0266-24-2245
営業時間 通年営業 9:00〜16:00
休業 月、水、木、金
左:宮坂さんの作品のひとつ。濃紺の中にさまざまな色が潜む紬の着物。 
右:右の生地をよく見ると、赤や黄色、白などが微妙なバランスで組み合わされているのがわかる。
 

左:宮坂さんの作品帳。色別に分類してあり、膨大な冊数にのぼるが、ひとつとして同じ柄のものはない。 
右:節の部分は糸が太くなり、色が濃く現れる。それが作品全体に深みを醸し出す。 

左:弟子にも「私の真似はするな。オリジナルにこだわれ」と言い続ける。
右:テキスタイルデザイナー、宮坂博文さん。糸の組成から織物の歴史、世界のテキスタイルまで、豊富な話題を絡めつつテキスタイルについて語る。
 
八重垣姫の像は諏訪湖の東岸「ふれあいなぎさ」に程近い湖の中に佇んでいます。
 今回訪れたのは諏訪湖の西岸に広がる街、岡谷。歌舞伎ファンが諏訪湖と聞いてまず思い浮かべるのは、いわゆる“三姫”のひとり、八重垣姫でしょう。写真は諏訪湖に浮かぶ八重垣姫の像で、『本朝廿四孝』「狐火」に取材したもの。八重垣姫が手にしているのは、武田信玄が夢の中で諏訪明神から授かったという武田家の霊宝「諏訪法性の兜(すわほっしょうのかぶと)」です。

 許婚の武田勝頼に暗殺の危機が迫っていることを知った八重垣姫は、一刻も早く勝頼に知らせたい、「翼が欲しい、羽が欲しい」と心がはやります。そんな姫を助けたのは諏訪明神の使者である狐たちです。諏訪法性の兜を掲げる力強く美しい八重垣姫…。兜の霊力を借り狐たちに守られて、八重垣姫は凍った諏訪湖、花道を渡ってゆき『本朝廿四孝』「狐火」は幕切れとなります。
文/栄木恵子(編集部)

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