潜入!松竹大谷図書館 潜入!松竹大谷図書館

 読書の秋、芸術の秋と呼ばれるこの季節。さまざまな資料を通して気になる演目や舞台、歌舞伎俳優について学んだり、過去の上演を振り返って歴史を紐解けば、歌舞伎がもっと楽しくなります!その手引きとして、演劇・映画の専門図書館「公益財団法人松竹大谷図書館」にある資料を利用してみてはいかがでしょうか。
 今回は、歌舞伎座からほど近い松竹大谷図書館を訪問して、歌舞伎に関する資料の一部をご紹介します。


演劇と映画の専門図書館
松竹株式会社が収集・所蔵してきた資料を広く一般に公開しています。松竹作品のみならず、演劇、映画、日本舞踊、テレビドラマ、アニメ等に関するさまざまな資料を取りそろえており、レファレンス・サービスも充実しています。目録カードやパソコンで検索して資料を請求する閉架式図書館です。

昭和33(1958)年開館
松竹株式会社の創業者の一人である大谷竹次郎(1877~1969)が、文化勲章を受章したことを記念し、昭和31(1956)年に設立、昭和33(1958)年に開館しました。平成23(2011)年には公益財団法人へ移行し、よりいっそうの関係資料の収集、整備をはかっています。

公益財団法人松竹大谷図書館
東京都中央区築地1-13-1 銀座松竹スクエア3階
開館時間:10:00~16:00(短縮中)
休館日:土日祝、毎月最終木曜日/5月1日、11月22日、年末年始、春期および夏期整理期間
入館料:無料
※現在、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、来館前日までに要予約
電話番号:03-5550-1694

歌舞伎座と同じ晴海通り沿い、首都高速1号線を挟んで向かいに建つ銀座松竹スクエアの3階へ。
利用上の注意をご確認のうえ、前日(休館日を除く)までに、来館日の電話予約をお忘れなく!

到着したら、荷物を入口のコインロッカーに預けて閲覧室へ。館内閲覧のみで貸出しはありませんが、気になる資料は有料でコピーも可能です(コピー不可資料あり)。
※現在、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、閲覧室の座席、滞在時間を制限中

閉架式の図書館のため、直接書庫に入り閲覧することはできません。
書庫には、歌舞伎をはじめとした演劇、映画、日本舞踊、テレビ等に関する台本・文献・雑誌・写真・プログラム・ポスター等の資料が実に49万余点所蔵されています。

カード目録と検索システム(パソコン)を使って資料を検索することができます。
検索システムは、館外からもパソコンやスマートフォンで簡易検索が利用できますので、ぜひお試しください!来館予約時に合わせて閲覧希望資料も予約していただくと、来館してすぐ閲覧できるのでおすすめです。
平成15(2003)年以前の資料は、閲覧室に並んだレトロなカード目録で検索してみましょう!昔ながらのカード目録が使えるのも、松竹大谷図書館ならではの魅力です。

書名検索の場合、アルファベット順にならんだカードボックスのなかから、書名の頭文字に近いボックスを開き、該当の目録を探します。

目録を見つけたら、目録に書いてある請求記号、著書、タイトルなどの必要事項を「資料請求票」に記入します。

カードの見方はこちら。閲覧する資料や検索方法に迷ったら、知識豊富な司書さんに聞いてみましょう。

カウンターで資料請求票を渡して、いよいよ資料とご対面!資料はやさしく扱ってくださいね。貴重書の閲覧時には身分証明書の提出が必須ですので、ご注意ください!

整理休館日のカード修正作業

このカード目録はほとんどが手書き。なんと、全部で約29万枚もあるんです!
歌舞伎に関する資料では、襲名で歌舞伎俳優の名前が変わるたびに、司書さんが手作業で、著者記号の典拠となる標目を修正したり、カードの配列も変更したりしているのだそう。
歌舞伎の資料を所蔵する図書館ならではの苦労ですね。

※さらに詳しい資料検索方法は、こちらをご確認ください

松竹大谷図書館の利用についての素朴な疑問を、司書さんにお答えいただきました。

Q どのような目的で来館される方が多いですか?
A 研究者、製作関係者から一般の愛好家まで、幅広くご利用いただいています。

・演劇、映画の研究者や学生さんが、調査研究のために来館
・演劇製作や映画製作に関わる方、出版に関わる方などが、仕事のための調査に来館
・歌舞伎愛好家の方が、筋書(公演プログラム)や台本、歌舞伎の解説本や俳優さんの芸談本、写真集などを求めて来館
・脚本家や俳優など映画の勉強をしている方が、映画台本(シナリオ)を求めて来館
など、ご利用目的は多岐にわたります。

Q 研究などの目的でなくても利用できますか?
A もちろんご利用いただけます!

演劇や映画にご興味のある一般の方も、もちろんご利用いただけます。歌舞伎座や新橋演舞場、東劇などの劇場が近いこともあって、観劇や映画鑑賞のついでに立ち寄られる方も多くいらっしゃいます。

Q どんな資料がありますか?いつ頃からの資料が保存されているのでしょうか?
A 古くは江戸時代の資料から。ここにしかない貴重な資料も多くございます。

古くは江戸時代の資料から保存していますが、近現代、そして毎月上演される新しい公演の資料も積極的にご活用いただけることが当館の特徴です。松竹大谷図書館にしかない貴重な資料も多く所蔵されていますので、ぜひ当館で歌舞伎の歴史を感じてください。

GHQ検閲歌舞伎台本『菅原伝授手習鑑』
昭和20(1945)年終戦直後に上演された『菅原伝授手習鑑』の上演台本には、検閲官のサインが入った検閲印など、GHQの検閲の跡が多く残されています。松竹大谷図書館にしかない貴重な資料で、現在現資料を図書館で見ることはできませんが、デジタルアーカイブで隅々まで拡大してご覧いただけます。

六世中村歌右衛門書抜
※閲覧についてはお問い合わせください
三世中村翫雀、初世中村鴈治郎書抜
演目や役名が書かれた表紙をめくると、配役や演奏家などが記載された役割番付が綴じられているのが特徴です

書抜
歌舞伎では、台本のなかから俳優一人ひとりの役のせりふを書き抜いて1冊にした「書抜(かきぬき)」がつくられていました。松竹大谷図書館では、古くは幕末や明治期、また昭和期の歌舞伎俳優の書抜をご覧いただけます。

戦前の歌舞伎ブロマイド
現在も人気のお土産の一つとなっている、歌舞伎俳優のブロマイド写真。古くは明治初期から販売されていたそうで、明治後期になると絵はがき仕立ての、裏面が宛名面になったブロマイド写真も、観劇の土産物として販売されていました。当時の名優たちの姿が記録された、貴重な資料になっています。
この歌舞伎ブロマイドも一部をデジタル化し、現在デジタルアーカイブの公開を準備中だそうです。

平成25(2013)年10月歌舞伎座 通し狂言『義経千本桜』記録舞台面写真

舞台面写真
公演ごとに舞台美術の記録として撮影される舞台面写真も、松竹大谷図書館では手に取って閲覧することが可能です。舞台美術を順番に振り返りながら、観劇当時の感動に思いを馳せるもよし、全景や細部を確認して、新たな発見をするもよし。楽しみ方は十人十色です。

Q 歌舞伎美人の読者の皆様へ、司書さんおすすめの資料はありますか?
A 全国さまざまな劇場のプログラム、台本が閲覧できます!

松竹大谷図書館では、歌舞伎座、新橋演舞場、大阪松竹座、南座をはじめ、さまざまな劇場の筋書(関西では「番附(ばんづけ)」)を所蔵しています。
昔観劇された舞台の筋書、台本もご覧いただけますので、観劇前後にチェックされるのもおすすめです。松竹大谷図書館で一番閲覧数が多い資料は、筋書なんですよ!