松竹大谷図書館では、貴重な資料を後世に残すため、さまざまな事業を行っています。傷みが進んだ古い資料は、破損や劣化がこれ以上進む前に迅速にデジタル化を進めることで、直接資料に手を触れずとも閲覧いただけるようになっています。インターネット上の松竹大谷図書館所蔵貴重資料デジタルアーカイブはご自宅からもご覧いただけますので、来館がかなわない方にも広く資料をお楽しみいただけるという利点もあります。
また、現物の資料の保存状況改善のため、毎年状態調査や保存容器の入れ替えなど、資料の形態に合わせてさまざまな対応が取られています。このような活動には、司書さんたちの活躍はもちろん、皆様からのご支援が欠かせません。
このページでは、松竹大谷図書館の資料保存の取り組みや、保存に必要な支援をいただくためのクラウドファンディングプロジェクトについてご紹介します。このような取り組みと努力の結果、私たちは過去の歌舞伎の記憶を多様な資料から感じることができるのですね!
普段は中に入れない、松竹大谷図書館の書庫に特別にお邪魔しました!膨大な数の舞台や映画の台本を保管することも、松竹大谷図書館の重要な役割の一つです。図書のようにしっかりしたつくりではない台本などの資料は書架に立てにくいため、板目紙でカバーをつくり、長期保存に耐えられるよう補強を施しています。
なかでも特に傷みの激しい資料は、1冊ずつサイズを測ってつくるオーダーメイドの「タトウ式保存箱」というアーカイバル容器や、「組み立て式棚はめ込み箱」に入れることで、さまざまな劣化要因から資料を保護し、劣化の進行を抑えています。
これらの保存容器は、平成29(2017)年に実施された第6弾クラウドファンディングプロジェクトの支援金で購入されました。
箱の中に入っているのは、約4000点の映画スクラップのうちの約1800点。松竹の映画作品について、公開当時の新聞や雑誌などに掲載された紹介記事を、当時の松竹映画宣伝部員が作品ごとにスクラップしたもので、松竹大谷図書館にしかない貴重な資料です。もちろん、歌舞伎俳優が出演した映画のスクラップも見ることができます!
現在大谷図書館の閲覧室に展示されている、歌舞伎演目の一場面が立体的に再現された「組上燈籠絵」も、こうしたプロジェクトによって守られ、よみがえった資料の一つです。
組上燈籠絵は、江戸期から昭和期まで広く流行した錦絵の一種。風景や建物、歌舞伎の演目などを描いたもので、鑑賞して楽しむことはもちろん、部品を切り出して立体に組み立てて遊ぶことができる、現代のペーパークラフトのようなものです。1枚の錦絵のなかには多数の部品が緻密に配置され描かれており、さまざまな種類があります。
組上燈籠絵は切り貼りするおもちゃのため、現存し、かつ保存状態の良いものは大変貴重です。そのため松竹大谷図書館所蔵の組上燈籠絵も、すべて非公開の博物資料として書庫で保管されていましたが、平成28(2016)年に実施されたプロジェクトによってデジタルアーカイブ化、そして実際に当時の庶民と同じように組み立てて遊ぶことができる復刻版の作成もなされました。復刻版が作成された「車引」「石橋」「組討」は販売も行っていますので、気になる方は来館時に、司書さんへお声がけください。
こうしたプロジェクトは、毎年クラウドファンディングで支援者の方からの支援を募り、その資金をもとに行っています。記念すべき第10弾となる今年のプロジェクトは、「歌舞伎や映画、フィルムがつないだ記憶を遺す。」。
現在、松竹大谷図書館では、約90本の映画フィルムを守るべく、作業が着々と進んでいます。
松竹大谷図書館への訪問はいかがでしたでしょうか?あなたの好きな歌舞伎演目、歌舞伎俳優、歌舞伎の舞台美術…そのほかすべての演劇・映画に関する資料が松竹大谷図書館にはそろっているはずです。歌舞伎の楽しみを深めてくれる資料に会いに、ぜひ、松竹大谷図書館へお運びください。
※資料はすべて公益財団法人松竹大谷図書館所蔵