深掘り!松竹大谷図書館 深掘り!松竹大谷図書館

 読書の秋、芸術の秋と呼ばれるこの季節。さまざまな資料を通して、気になる演目や舞台、歌舞伎俳優について学んだり、過去の上演を振り返って歴史を紐解けば、歌舞伎がもっと楽しくなります!その手引きとして、演劇・映画の専門図書館「公益財団法人松竹大谷図書館」にある資料を利用してみてはいかがでしょうか。
 今回は、松竹大谷図書館が行っている取り組みと、貴重な資料の一つ「組上燈籠絵」の楽しみ方をご紹介します。


 松竹株式会社が収集・所蔵してきた資料を、広く一般に公開している公益財団法人松竹大谷図書館。歌舞伎座のすぐ近くにあり、松竹作品のみならず、演劇、映画、日本舞踊、テレビドラマ、アニメなどに関するさまざまな資料を取りそろえた、閉架式の図書館です。一般公開して、閲覧サービスの提供や、レファレンスも行っています。

 松竹大谷図書館では、新しい資料の収集などに加え、江戸末期以降の古い資料を保存するうえで、貴重な資料のデジタル化も進めています。デジタル化を行うことで、貴重な資料そのものの損傷を食い止めながら、より多くの方が気軽に資料を閲覧することが可能になります。また、閲覧の際に取り扱いに苦労する大型の資料なども、デジタル化を行えば手元でスムーズに閲覧できます。研究資料としても、クリック一つで画像の拡大ができ、細部まで確認することや、タブを並べてほかの資料との比較検討も可能となるため、これまで知られていなかった新たな事実が発見される可能性も広がります。

 このように、誰にとっても良いこと尽くしなデジタル化。現在、「松竹大谷図書館所蔵貴重資料デジタルアーカイブ」で閲覧できる歌舞伎に関する資料には、

義太夫正本検索閲覧システム
芝居番付検索閲覧システム
GHQ検閲台本検索閲覧システム
組上燈籠絵検索閲覧システム

があり、これらのほとんどは、松竹大谷図書館が毎年行っているクラウドファンディングプロジェクトで、皆様からいただいたご支援によりデジタル化が行われ公開されました。皆様の温かいご支援が、歌舞伎を、ひいては日本の文化そのものを後世に遺す大きな原動力となっています。

デジタルアーカイブのご使用方法

 それでは、実際にデジタルアーカイブで資料を探してみましょう!

 デジタルアーカイブは、ご自宅のパソコンやお手元のスマートフォンなど、どこからでもご覧いただけます。まずは松竹大谷図書館の公式ホームページにアクセスし、トップページの「デジタルアーカイブ」をクリックします。

 お好きな閲覧システムを選んで検索すると、ご希望の資料をご覧いただけます。「とりあえずどんな資料があるか見てみたい!」という方は、検索語を何も入力せずに「検索」ボタン(システムによっては「閲覧」ボタン)をクリックすると、全件閲覧することも可能です。

 デジタルアーカイブで、ご自宅などでもぜひ松竹大谷図書館の資料をお楽しみください!

 データベースで閲覧できる、デジタル化された資料の一つに組上(くみあげ)(とう)(ろう)()があります。

 組上燈籠絵とは、江戸期から昭和期まで広く流行した錦絵の一種。風景や建物、歌舞伎の演目などを描いたもので、部品を切り出して立体に組み立てて遊ぶことができる、現代のペーパークラフトのようなものです。組上燈籠絵は、組上げられて完成すると「組上燈籠」と呼ばれます。

 組上燈籠絵は切り貼りして遊ぶおもちゃのため、錦絵の形のまま現存し、かつ保存状態の良いものは大変貴重です。そのため松竹大谷図書館所蔵の組上燈籠絵も、すべて非公開の貴重資料として書庫で保管されていましたが、平成28(2016)年に実施されたクラウドファンディングのプロジェクトによって、161点がデジタルアーカイブ化され、当時の人々と同じように実際に組み立てて遊ぶことができる「車引」「石橋」「組討」の復刻版の作成もなされました。この復刻版は、歌舞伎座1階お土産処「木挽町」や松竹歌舞伎屋本舗で販売も行っており(松竹歌舞伎屋本舗の販売ページはこちら)、松竹大谷図書館の閲覧室には、歌舞伎演目の一場面が立体的に再現されたこの組上燈籠が展示されています。

組上燈籠『石橋』
組上燈籠『祇園祭礼信仰記』

 組上燈籠絵検索閲覧システムは、組上燈籠絵をデータベースから印刷して、どなたでも江戸時代と同じように楽しむことができます。組上燈籠絵自体には詳しい作り方が記載されておらず、作業には少し工夫が必要となるため、次の章ではその作成方法を紹介していきます。江戸の人たちと同じように組上燈籠絵で遊んでみることで、歌舞伎の世界への理解を深められること間違いなし。皆様も、ぜひ挑戦してみてください。

 まずは、松竹大谷図書館が所蔵する161点の組上燈籠絵を検索・閲覧できる「組上燈籠絵検索閲覧システム」で、お好みの組上燈籠絵を探してダウンロードしましょう。

ご意見 データベースへアクセス
松竹大谷図書館所蔵 「組上燈籠絵」検索閲覧システムのトップページを開きます。
上部に「クイック検索」、下部に詳細検索があります。タイトル、場面名など関連ワードをすべて網羅できるクイック検索が便利です。「キーワード」の項目に単語を入力したら、一番下の「閲覧」というボタンをクリックします。(①)

 検索方法
探したい演目やテーマが決まっている場合
『仮名手本忠臣蔵』の七段目「祇園一力茶屋の場」を作成したい場合、例えば「キーワード」の部分に「七段目」と入れて「閲覧」ボタンを押します。(②)

すると、該当作品が表示されます。この検索では、ヒットするのは一作品のみでした。検索結果は、上部にサムネイルで表示され、画像をクリックすると作品詳細を確認することができます。(③)

作品一覧を確認したい場合
まだどの作品をつくるか決まっていないときなど、所蔵一覧を確認したい場合は、キーワード欄を空欄にしたまま「閲覧」ボタンをクリックすると、サムネイルが全件分表示されます。(④)

 詳細確認、印刷
作品詳細ページでは、作品名をはじめ、出版年や版元などの情報も確認することができます。このページの作品画像をクリックすると、別ウィンドウで大きく表示することができます。右クリックで画像のダウンロードが可能ですので、端末に保存して印刷します。(⑤)

 パーツの切り出し、組み立て作業
作品の印刷が完了したら、いよいよ切り出しと、組み上げ作業を開始します!ここでは、動画で作業の流れを解説していきます。(※音が出ますのでご注意ください)

~組上燈籠 作成のコツ~