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幸四郎最後の『アマデウス』に向けて
9月24日(日)、東京 サンシャイン劇場を皮切りに、大阪松竹座、久留米シティプラザで全39公演が行われる舞台『アマデウス』で、演出・主演の松本幸四郎が公演に向けての思いを語りました。
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『アマデウス』の日本初演は1982(昭和57)年6月サンシャイン劇場。前年の10月に九代目として幸四郎を襲名したばかりで、以来、主人公のサリエーリ役は常に幸四郎の名前とともにありました。「今年いっぱいで、幸四郎の名前に別れを告げますので、最後の現代劇出演、感無量でございます。これから長い稽古に入ります、忍耐の時期です。忍耐が実を結んで素晴らしい『アマデウス』が花咲きますように」。6年ぶり12度目のサリエーリに挑む幸四郎はにこやかに語りました。
サリエーリの気持ちになる
ロンドンで生まれ、ブロードウェイでトニー賞を受賞し、20世紀最高の戯曲ともいわれてきた『アマデウス』。「モーツァルトに対するサリエーリの嫉妬がテーマだと思われていますが…」、との言葉には、ただの嫉妬劇にはしないという幸四郎の信念も感じられます。
サリエーリはモーツァルトの才能がわかるからこそ嫉妬したのであり、「(俳優という)我々の世界では日常茶飯事です。モーツァルトめ、憎らしいな、でも自分にはできない。そんな思いは毎日です。この芝居は他人ごとではありません」。
一方に卑猥な言葉の応酬、もう一方に素晴らしいメロディー
「モーツァルトはコンスタンツェと卑猥な言葉を吐きあって、下品なことを言うけれど、一方ではこの世のものではない、人間業ではない崇高さを感じさせます。持って生まれた佇まい、アトモスフィア(芝居の雰囲気)を二人にはつかみ取ってほしい。サリエーリはそれに応えるようにやらなければいけないし、そうでなければ、単なる嫉妬劇になってしまう」
『アマデウス』のなかには、天衣無縫にふるまうモーツァルトから吐き出される卑猥で下品な言葉と、素晴らしいモーツァルトの曲があり、それこそが「この芝居の真骨頂。人間だれしも矛盾だらけ、演出家としてはそういうところをうまく掘り下げていきたい」。
ピーター・シェファーの戯曲はピーター・ホールにより演出され、ジャイルス・ブロックが世界中の上演の演出に当たり、日本でも初演から演出しました。「自分は二人のあとを引き継ぎましたが、あくまでもアレンジャーです」と幸四郎。「演出があまり目立ちすぎても、演技や芸が目立ちすぎてもいけない」。お客様がご覧になっていい芝居だったねと言っていただけるように、「心の中に温かいものが一つ灯ってくれるような、自分も頑張るか、と思ってもらえる芝居に」と、演出にあたって目指すところを掲げました。
サリエーリを嫉妬させるくらい仲よく
共演の二人はともに、生まれる前から上演されている芝居に出演できる喜びを「光栄」と表しました。モーツァルト役の桐山照史は、「出るからには新しい風を吹かせて見せます、と大口を言いましたが、台本の読み合わせでは、幸四郎さんの前で緊張して100回以上かんでしまい、最初の挫折を味わいました。背伸びしてもしょうがないので、モーツァルトとコンスタンツェが出てくるときには、ちょっと変わったスパイスになれるように頑張っていきたい」と、率直な言葉の奥に挑戦への闘志を見せました。
コンスタンツェという人物に興味を持って調べたこともあり、今回の役に縁を感じていると明かした大和田美帆は、「小さいときから舞台が大好きで、出産で舞台に立てないことが苦しかった。一生(舞台を)やっていきたいと思っていたところに『アマデウス』のお話をいただき、昨日は稽古場にいられる喜びで泣いてしまいました。女優生命をかけて臨みたい」と、目を輝かせて意気込みを見せました。
幸四郎から、「僕を嫉妬させるくらい仲よくと言われました」(桐山)という二人は、すでに息ぴったり。「いいことですよね。気持ちはお客様に伝わります。死ぬ気でやらないとお客様にわかってしまうから怖いです」と、幸四郎。すでに三人の気持ちがあふれ伝わってくる会見となりました。
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