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愛之助が語る『金門五三桐』
2019年1月2日(水)から始まる大阪松竹座「壽初春大歌舞伎」に出演の片岡愛之助が、通し狂言『金門五山桐』について語りました。
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GOEMONから五右衛門へ――。平成23(2011)年のシスティーナ歌舞伎『GOEMON 石川五右衛門』で初めて出合った五右衛門役を、大阪松竹座で2回と新橋演舞場、再びシスティーナ歌舞伎と、5回にわたり演じてきた愛之助が、「今回は古典の、しかも澤瀉屋さんの三代猿之助四十八撰の一つを勤めさせていただきます」と、意気軒昂なところを見せた『金門五三桐』。大阪松竹座の年頭を飾る初春の大歌舞伎で、夜の部の通し狂言として上演されます。
初演の地、大阪での通し上演
『楼門五三桐(さんもんごさんのきり)』として、南禅寺の山門で五右衛門が敵の真柴久吉と対立するひと場は「絶景かな、絶景かな」のせりふとともにお馴染みですが、通し上演は多くありません。近年では、昭和49(1974)年6月に三代目猿之助(猿翁)が南座で復活上演して以降、今回が5度目。大坂で初演された『金門』が、上方歌舞伎俳優がそろう大阪の正月公演で上演されます。
11月の顔見世興行千穐楽には五右衛門の墓参りもし、翌日には猿翁を訪ね、「久しぶりにお目にかかり、昔のお話もして、楽しいひとときを過ごさせていただきました。ご自分のつくられた『金門』を愛されているんだなと感じました。私に遠慮することなく、自分の五右衛門をつくってください、頑張ってくださいとおっしゃっていただき、非常にうれしかったですね」と、満面の笑みで明かしました。
大炊之助と五右衛門
猿翁は女方を演じた上演もありましたが、今回、愛之助は立役の2役を勤めます。初めは真柴久吉の子の乳人役、此村大炊之助(おおいのすけ)として登場。「古典のしっかりした老け役は初めてなので、どんな感じにしようか考えています。白鷹の精の扇雀兄さんと踊るところもみどころです」と、演じるのを心待ちにしているようです。
大炊之助がどんでん返しで正体を明かし、壮絶な最期を見せたあとは、五右衛門としてまた新たなドラマが始まります。「義賊的で、盗賊といってもそんなに悪いことはしていないのでは。スペクタクルに富んだ、スケールの大きい五右衛門にしたい。古典にのっとるので、深くはつくってはいますが、だからといって難しいわけではありません。(補綴・演出)の石川耕士さんと、テンポよくわかりやすく進められればと話しております」。
『GOEMON』では斬新なデザインだった山門は、春爛漫のきらびやかで古典的な山門となり、葛籠(つづら)抜けの宙乗りは「大仏餅屋の場」の見せ場の一つとなりますが、「お客様の見た目の印象やストーリー自体は変わっても、五右衛門の性根は同じです」。GOEMONとどこが違うか、どう変わったのか、「いろんな五右衛門があったほうがお客様も楽しめるでしょうし、愛之助らしい五右衛門だったねと楽しんでもらえれば」と語りました。
ホームグラウンド大阪で久々の歌舞伎
愛之助自身が期待しているのは、「澤瀉屋さん独特の芝居の持っていき方。ご一門の方がたくさん出てくださるので、どんな感じなのか、いろいろうかがおうと思っております。脚本がしっかりしていて、しかも三代猿之助四十八撰の一つ。とても楽しみです」と、昼夜ほぼ出ずっぱりの公演に向けて意欲満々なところを見せました。
昼の部は、「今まで拝見はしているけれど、まったくご縁がなかった『土屋主税』」に大高源吾で出演。『河庄』では江戸屋太兵衛、「大好きな役です、大阪弁でいう“いちびり”(お調子者)という感じが。大阪弁の芝居はやはり落ち着きます」。坂田藤十郎米寿記念『寿栄藤末廣(さかえことほぐふじのすえひろ)』にも出たかったと残念がり、「山城屋のおじ様(藤十郎)は公私ともに尊敬ができる、人として素晴らしい大先輩。一座ご一緒できるのが非常にうれしい」と、これまでのさまざまな教えに感謝していました。
「歌舞伎で大阪松竹座に出させていただくのは2年ぶり。久しぶりの大阪松竹座、地元、ホームグラウンドなので」、と公演が始まるのが待ちきれない様子の愛之助。「ひと月でも一日でも多く、上方で歌舞伎がかかればとのも思いを込めて、正月の大阪松竹座、気合を入れて朝から晩まで頑張ります」と力強い宣言で締めくくりました。
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大阪松竹座「壽初春大歌舞伎」は来年1月2日(水)から26日(土)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹、チケットホン松竹で、12月4日(火)発売予定です。
※「澤瀉屋」の「瀉」のつくりは、正しくは“わかんむり”です。