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玉三郎が語るシネマ歌舞伎『沓手鳥孤城落月/楊貴妃』

玉三郎が語るシネマ歌舞伎『沓手鳥孤城落月/楊貴妃』

 

 

 1月12日(土)から、新作シネマ歌舞伎『沓手鳥孤城落月/楊貴妃(ほととぎすこじょうのらくげつ/ようきひ)』が全国公開されるにあたり、玉三郎が作品への思いを語りました。

玉三郎の仕掛けにはまる

 通常の公演に7台のカメラを入れて2公演分を撮影、編集。さらに、物語が始まる前には、樂家の常慶の茶碗や香炉、長谷川等伯の絵など、芝居の背景となっている安土桃山の終わりの時代のものとともに、玉三郎の解説が入った特別映像がご覧いただけます。「その時代に本当にあったものが映ると、そういうものがあったんだという思いで見ていただける」。芝居の道具や衣裳にモンタージュ効果をもたらし、つくりものであるはずの舞台がよりリアルに見え、物語に真実味、緊迫感が生まれました。

 

 作者、坪内逍遙が「シェイクスピアに影響を受けてお書きになり、韻を踏んだりもしているけれど、わざと歌舞伎様式にしようと、三味線の合方が出てきたり、風音が入ったりと、音楽的要素が非常に江戸的になっています。果たして、坪内先生がそれを望んでいたのかなと」。作者の前作『桐一葉』も含め、五世歌右衛門が淀の方を当り役として上演していた頃は、それがよかったのかもしれないが、今は違和感があるのではと語りました。

 

玉三郎が語るシネマ歌舞伎『沓手鳥孤城落月/楊貴妃』

原作に近づけることでこれからの上演につなぐ

 『孤城落月』というと思い浮かぶ、乱戦の場面の裸武者も付け加えた要素の一つと聞き、「原作に戻して裸武者をなくし、合方もいらないんじゃないか、物音や乱戦の音、雨の音、遠雷、そういうものだけにしてみようと考えました。今までとあまりに違い、稽古は大変でしたが、シネマ歌舞伎になったらかえって映像作品的になりました」。

 

 理屈で押すのはよくないけれど、と前置きしながら、千姫の逃げ方、聞いてわかりにくい言葉、状況説明するせりふ、淀の方のせりふ等々、上演時に見直した点を挙げた玉三郎。「糒庫(ほしいぐら)」でも、淀の方のうめき声が屏風の陰から聞こえるのではなく、「そこにいる人が苦しんでいる、という緊迫した状態に」したり、米俵をことさら屋体崩しのように強調して見せるのではなく、「状況設定の雰囲気として扱う」など、現代のお客様が違和感なくご覧いただけるように手を尽くしました。

 

玉三郎が語るシネマ歌舞伎『沓手鳥孤城落月/楊貴妃』

 シネマ歌舞伎『沓手鳥孤城落月』 左より、中村七之助、坂東玉三郎

すべてはお客様のために

 「原作者の意図が生き、かつ、上演できる形がいいのでは」と考え抜いた結果、上演時間は20分以上短縮されました。そして残ったのが幕切れの問題。「非常に迷いました。(主役が)女方の座頭だから、真ん中で打掛を持って見得をして幕になる。でも、淀の方が何のために錯乱しているか考えると、次の世、あるいは秀頼のために錯乱していると思うんです。なので、秀頼と二人で幕を切るのがいいのではと」。シネマ歌舞伎では、秀頼役の七之助のインタビューもご覧いただけます。

 

 さまざまな観点から磨き上げられた結果に対しては、惜しみなく力がそそがれました。客席の咳や舞台裏の雑音を削ったり、せりふの大きさの調整など「音だけきれいにするのに1カ月以上」かかっています。色彩の補正はもちろん、編集作業もと、撮影後の作業にかけた手間と時間が膨大なのは、「すべてお客様のため」とのこと。しかも、編集も照明も好きと公言する玉三郎にとっては、苦というより充実した時間だったようです。

 

玉三郎が語るシネマ歌舞伎『沓手鳥孤城落月/楊貴妃』

 シネマ歌舞伎『楊貴妃』 坂東玉三郎

『楊貴妃』との二本立て上映

 今回のシネマ歌舞伎は二本立て上映となります。悲愴な『孤城落月』のあとには、こちらがいいんじゃないかと、もう一本は別の公演で上演した『楊貴妃』になりました。「並べてみたら、歴史に埋もれた美女たち、時の権力者のなかで悲劇に落ちていった女性二題、になりました」。

 

 舞踊をシネマ歌舞伎にするときに大変なのが、「前奏をどうするか。空間で聴いていれば前奏として聴いているからいいけれど、映像だとカメラがどこに行けばいいかわかりません」。また、「正面でつながないと、よほど画をうまくつながない限りおかしくなってしまう」と、芝居とは別の苦労があります。「弦の音を弦らしく録るのも、ものすごく難しいんです」。技術が進んだことで繊細な音がきれいに出せる一方、音を拾いすぎてしまうこともあると言います。

 

 デジタルの進歩は見る側の環境も変えました。「見たことは見たけれど、本当にそのものを感じたかどうかがなくなった世の中。ある程度の空間、ある程度の大きさの画面で見るのがいいのでは。データとして見ないようにしないといけないと思います」。玉三郎がさまざまな思いを込めた新作シネマ歌舞伎『沓手鳥孤城落月/楊貴妃』は、ぜひお近くの映画館のスクリーンでご覧ください。

 

 

シネマ歌舞伎『沓手鳥孤城落月/楊貴妃』作品詳細

シネマ歌舞伎公式サイト

2019年01月07日

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