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「六月大歌舞伎」『月光露針路日本 風雲児たち』の稽古場から
歌舞伎座「六月大歌舞伎」夜の部、新作歌舞伎『月光露針路日本(つきあかりめざすふるさと) 風雲児たち』の稽古が公開され、作・演出の三谷幸喜と、出演の松本幸四郎、市川猿之助、片岡愛之助、そして松本白鸚が、公演について語りました。
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13年ぶりの挑戦
三谷が歌舞伎作品に携わるのは、平成18(2006)年3月にPARCO劇場で上演されたPARCO歌舞伎『決闘!高田馬場』以来、13年ぶりとなります。出演者に対して三谷は、「やっぱりパワーアップしています」と言い、「すごく心地良い。戻ってきた、ここに帰ってきたぞ、みたいな」と心境を明かしました。
幸四郎も「(三谷と)またこうやって歌舞伎座で、歌舞伎で再会するのは本当に幸せ」とうれしそうに述べました。「今回テーマ曲をつくっていただく方も13年前と同じ方。そういう意味でも、興奮と不安がマックスだった毎日の記憶が、すごく鮮明に蘇ってくる」と振り返り、今回も「その時に負けない熱さを。皆さんにびっくりしていただきたい」と意気込みました。
猿之助が「歌舞伎座でやるから、やはり怖さもあります。でも、そこは三谷さんが責任をとってくれる」と、冗談めかして語り、「どう評価を得るかは初日が開いてから。そこまでは全員で力を尽くしていきたい」と頼もしく述べました。
愛之助は、『決闘!高田馬場』を客席で見ていたことを明かし、「すごく面白そうで、こういう歌舞伎に出られたらいいなと思っていた。今回実現したので、非常にうれしい」とにっこり。
白鸚も「前回の作品も、素晴らしかったです。舞台も拝見して、映像も拝見して、両方とも素晴らしい。それに出させていただくということで、わくわくしています」と笑顔を見せました。
漫画『風雲児たち』を歌舞伎座で
今回題材とするのは、長編歴史漫画「風雲児たち」。大黒屋光太夫のエピソードを初めて読んだときに「これは歌舞伎で見たい」と思ったという三谷は、「やっと夢がかなった」と感慨を込めます。「どんどん場所が変わっていく面白さ」がある作品であり、「途中、シベリアの雪原を犬ぞりで走る、スペクタクルシーンもあります」と、歌舞伎座の大きな舞台を使った構想も明かしました。猿之助は、ロシアの女帝エカテリーナとしてドレスを着用します。「時代考証もしっかりしてるので、衣裳や舞台美術もみどころです」と語りました。
三谷による歌舞伎作品が、歌舞伎座で上演されるのは今回が初めてです。「前回はPARCO劇場でやったので、“歌舞伎っぽく”つくらないと歌舞伎じゃなくなってしまうのではないかという不安があった。今回は歌舞伎座でやり、これだけの俳優の皆さんが集まって、何をやっても歌舞伎になるので、逆に自由にやらせてもらおうと思って」と、三谷。幸四郎は、「三谷さんのお芝居をやる。それのみです」と強調し、「歌舞伎だから、という思いはまったくない。その芝居をどれだけ、面白く、傑作にできるか」と、熱い思いをにじませました。
さらに三谷は、「僕が関わるということで、初めて歌舞伎をご覧になる方がいるのかもしれないですけど、そういう方に歌舞伎の良さを知ってもらいたい。それだけでなく、ずっと歌舞伎をご覧になってきた方々にも、こういうのも歌舞伎なんだ、なかなか面白いなと言っていただけないと、やる意味がない」と語り、強い意志を感じさせました。
ただいま稽古の真っ最中
初日に向けて、現在は稽古期間中。この日、物語の冒頭にあたる、一幕一場の稽古も公開されました。
外国との交流が厳しく制限されていた江戸時代。大黒屋光太夫(幸四郎)は商船神昌丸の船頭(ふながしら)として伊勢を出帆しますが、江戸に向かう途中で激しい嵐に見舞われ、漂流してしまいます。舞台は、漂流してしばらく経ったころの神昌丸です。
「お頭」と呼ばれつつも少し頼りない光太夫、不満を言いがちな庄蔵(猿之助)、個人主義でありながら人情深い新蔵(愛之助)、光太夫を支える船親司(ふなおやじ)の三五郎(白鸚)。個性豊かな登場人物たちが、くすっと笑えるような会話を繰り広げながらも、故郷に戻りたいという切ない思いを感じさせます。これから光太夫たちがどのようにロシアで過ごすのか。はたして日本に帰れる日は来るのか。このあとの展開が楽しみになります。
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歌舞伎座「六月大歌舞伎」は、6月1日(土)から25日(火)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹、チケットホン松竹で販売中です。