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仁左衛門が語る、南座「吉例顔見世興行」

仁左衛門が語る、南座「吉例顔見世興行」

 11月30日(土)に開幕する南座「當る子歳 吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎」に出演する片岡仁左衛門が、公演に向けての思いを語りました。

 南座の新開場一周年記念となる今回の「吉例顔見世興行」は、昼夜とも充実の狂言立てです。昼の部で『仮名手本忠臣蔵』「祇園一力茶屋の場」の大星由良之助、夜の部で『堀川波の鼓』の小倉彦九郎を演じる仁左衛門は、「楽しく勤めさせていただける狂言が二つ並びました」と喜びを表しました。

 

親子孫三代で演じる「七段目」

 『仮名手本忠臣蔵』の七段目にあたる「祇園一力茶屋の場」。今回は、お軽を長男の片岡孝太郎が、大星力弥を孫の片岡千之助が勤めます。仁左衛門は、「役者の家に生まれて、この配役でやれることはうれしい」と感慨深げに述べ、「孝太郎のお軽とは、平成中村座(2008年)以来です。『七段目』の力弥は、易しそうに見えて一番難しく、一つの試金石にもなる。どこまでやってくれるか」と、笑顔のなかにも真剣な眼差しを見せました。

 

 さらに、「由良之助も『七段目』が難しい。他の段と比べて、演技力ではなく、においや雰囲気など、身に付いたものが物を言う」と、その奥深さを語ります。「遊興に浸っている、その雰囲気を、つくるのではなく醸し出されるように。そういうところが難しいですね」。また、由良之助については、「一番大事なのは(人物の)大きさ。しかも武張らない」と、描く人物像を明かしました。

 

深いドラマを描く『堀川波の鼓』

 夜の部の『堀川波の鼓』は、仁左衛門が上演を提案したといいます。中村時蔵が初役で彦九郎の妻お種を、中村梅玉が恋敵の宮地源右衛門を演じます。「作品自体が好きです。かわいそうだけど、現代にもありうる話」。不義密通を犯し自害したお種のことを思って嘆く、彦九郎の最後のせりふが、「一人の男としての彦九郎の心が凝縮されていて、一番いい」と語りました。

 

 「彦九郎は、過ちを犯した女房に対して、怒りはない。同情もして、憐みもして、しかし侍として成敗しなければいけない。本当に怒って成敗するのではないところ。これがこのドラマの深さです」と、言葉に熱がこもります。「ある意味で、非常につらいお芝居だけれども、きれいなお芝居。そういうところが好きですね」。

 

南座はホームグラウンド

 新開場から1年が経った南座について、「物心ついて以来、私の遊び場でもありました。気持ちのよい、他の劇場にはないものをもっている。本当の意味でのホームグラウンドという気持ち。新開場して、この雰囲気を残せたということがうれしいですし、永久に残っていってほしい」と思いのたけを語った仁左衛門。「昔は芸妓さんや舞妓さんが、贔屓役者が出ているときに、お座敷を抜けて入ってきて、そこだけ観てさっとまたお座敷に戻る、そういうこともありました」と、懐かしげに振り返りました。

 

 その南座で、昨年に続き今年もともに出演する千之助に向けて、「10日の稽古よりも、3日の本番の方が成長が早い。荷が重いですが、役者はやはり経験していかないと成長しませんので」と、鼓舞する気持ちをにじませます。また、「(去年の切は)『三社祭』。今年は人数も増えて、『越後獅子』。こういうことを、これからもどんどんやっていただきたい」と、若い俳優たちにも期待を寄せました。

 南座新開場一周年記念 京の年中行事「當る子歳 吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎」は11月30日(土)から12月26日(木)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。 

2019/11/20