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仁左衛門が語る、新作シネマ歌舞伎『廓文章 吉田屋』
1月3日(金)より全国の映画館で公開される新作シネマ歌舞伎『廓文章 吉田屋』について、出演する片岡仁左衛門が語りました。
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父から受け継いだ『吉田屋』
仁左衛門が藤屋伊左衛門を初役で演じたのは、昭和47(1972)年の巡業公演。家の芸である『吉田屋』を、仁左衛門に伝えた父(十三世片岡仁左衛門)に対し、「やっぱり家の大事な狂言ですし、必死だったと思います。当時、私は和事、やわらかい役はやったことがなかった。とにかく荒い役、強い役ばかりやってましたから」と語り始めます。当時の父を「厳しかった」と振り返り、「直してもだめ、直らない。まあへたくそなんで。本当に逃げ出したかった」と、懐かしそうに述べました。
稽古での父の動きは「そこに伊左衛門がいる」ようだったと言い、「それだけで、プレッシャーがかかってしまう。とにかくできない。やれない」と、当時の苦労を明かします。花道に登場する際、父が見守ってくれていたように感じたと言い、「とにかく背中を押されて、出て行って。今となっては覚えてないですね」。「襲名のときもやらせていただいた。そのときも夢で父が客席から出てきて、あかんあかんあかん、言うんです」と、笑いました。
「私の父と祖父とのは、また違う。父の『吉田屋』は、祖父の『吉田屋』のうえに、父が工夫してつくりあげた『吉田屋』であり、伊左衛門。私もよく言ってますけれども、祖父はもっと荒いんです。人形振りからとり入れて、もっと激しかったらしいです。今も部分的に残っていますけれど、雰囲気として残している」と述べました。
玉三郎との黄金コンビ
「芝居のことで喧嘩したのは、玉三郎さんと(十八世)勘三郎くんくらい。喧嘩というか言い合いですね」と、本作でも共演している、玉三郎との思い出を語ります。玉三郎とは「声を張り上げて言い合った。まあ若かったからね。20代の頃、それこそ50年前の話」と、どこかうれしそうに言い、芝居への情熱を感じさせました。
「父と、(玉三郎の父の十四世守田)勘弥のおじ様は非常に仲がよかった。単身で東京に来たとき、勘弥のおじ様に自分の子どものようにかわいがっていただいて、ある種、玉三郎さんと兄弟のような扱いで」と、振り返ります。お家ごとに「それぞれ芝居の教え方が違う。ところが、その役のつくり方というのは、父と喜の字屋のおじさんは似ている。私と彼(玉三郎)とも、それが似ている」と、黄金コンビのルーツを明かしました。
工夫された伊左衛門
「大家のぼんぼん、それをしっかり踏まえてください」と、父から教えられたそう。また、「伊左衛門は夕霧のところに心はまっすぐ行っていて、障害物は目に入らない。本能的に、という心境を表している気がする」と語ります。「(夕霧に)会いたいのにわざとつれなくしている。そういうところがかわいい」と伊左衛門の魅力を伝え、「母性本能を刺激されるような伊左衛門。そこに持っていかないと今の時代、通用しない」と、自らの工夫も打ち明けました。
祖父の時代から変わらない点を聞かれると、「調子というか、声の使い方。それと、性根。役の性根。おかれた環境や気性をしっかり踏まえたうえで、枝葉を描いていく」と答えた仁左衛門。伝統を重んじながら、時代に合わせた演じ方をする、仁左衛門の伊左衛門となっています。
本作の映像制作にも関わっている仁左衛門。「このカットはもう少し長めのほうがいいんじゃないかとか、相談して、提案させていただいて、直させていただけるところは直させていただいて。それと、やっぱり役者として、ここを観てほしいというところもある。あるいは、僕はいらないから、この人のここをちゃんと見せたい、ということもある」と言います。仁左衛門ならではの視点を活かした編集にも、ご注目ください。
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シネマ歌舞伎本編では、舞台映像だけでなく、父との思い出をはじめ、演目への思いを語った仁左衛門のインタビューも、たっぷりご覧いただけます。また、長年共演を重ねてきた玉三郎のインタビューも上映。新作シネマ歌舞伎『廓文章 吉田屋』は年明けの1月3日(金)より公開予定。ぜひ映画館でご覧ください。
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新作シネマ歌舞伎
『廓文章 吉田屋』
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■公開
2020年1月3日(金)~23日(木)
※一部延長あり
東劇ほか全国公開
■上映時間
1時間37分
■料金(税込)
当日 一般:2,100円 学生・小人:1,500円
前売り 特別鑑賞券(ムビチケカード):1,800円
※上映映画館、歌舞伎座、新橋演舞場、大阪松竹座、南座で販売中(各種プレイガイドではムビチケではない特別鑑賞券を販売中)
※1月2日(木)までの販売