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梅玉、時蔵、菊之助が語る、「六月博多座大歌舞伎」
6月5日(土)から始まる「六月博多座大歌舞伎」に出演の中村梅玉、中村時蔵、尾上菊之助が、公演に向けての思いを語りました。
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毎年恒例の「六月博多座大歌舞伎」。昨年は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止となりましたが、昨年同様に梅玉、時蔵、菊之助を中心とした座組で、今年6月に博多の地を訪れます。「昨年は、博多座に行けると心待ちにしておりましたが、公演が中止になってとても残念でした」と口々に話した三人。「今回も、またほぼ同じメンバーで呼んでいただき本当にうれしい」との梅玉の言葉に、時蔵、菊之助もうなずきます。
それぞれが工夫を重ねる役づくり
『与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)』で和泉屋多左衛門を勤める梅玉。「一番必要なことは、大店の大番頭らしい大きさ。与三郎が知らないところも、彼一人はすべてをわかっている」という部分を出せたら、と役づくりの構想を明かします。「私は与三郎も何回も勤めておりまして、先輩方の多左衛門もお稽古などでたくさん拝見しているので、それをお手本にして勤めたい。菊之助くんの与三郎が演りやすいような多左衛門になれば」と、話しました。
父、菊五郎に指導を仰ぐと話す菊之助は、2度目の与三郎について、「風情が大事でございまして、大店の若旦那がそれと知りつつはまり込んでしまう恋のいたずら、運命のめぐりあわせ、そういったものを、型を大切に、名ぜりふとともにお客様にお届けしたい」とのこと。お富とのかけ合いも、「役者が違えば、間も形も全部違うのが歌舞伎の面白さ。面白くつくって行きたい」と、意欲を見せました。
昼の部の『松廼羽衣』に出演する時蔵は、「この作品はお能から取ったもの。漁師伯竜は大口袴、私が演じる天女は長絹を着ているので、豪華」と語ります。伯竜のために艶やかな舞を披露した天女が、羽衣をまとい天上へ帰っていく場面を、「いかに天に昇っていくように見せられるか、大道具方とどのように道具を変化させるかを、また、振付のご宗家(藤間勘十郎)とも相談しながらやりたい」と、工夫の様子を明かしました。
魅力的な人物像
夜の部の幕開きでは、梅玉が『傾城反魂香』の又平を演じます。この演目では、又平と女房おとくの夫婦間のやり取りが魅力の一つ。おとくを演じる梅枝とは、「ちゃんと夫婦に見えるように、仲良く勤めたい。又平はおとくに引っ張られて行動するので、梅枝くんに引っ張って行ってもらいたいです」。また、又平は好きな役の一つと言い、「実直で、ただひたすら絵の修行をしている。そんな人間像が出せれば。実直な自分に合っていると思っていますので(笑)、一所懸命勤めたいと思っております」と語る様子から、梅玉の又平に期待がふくらみます。
『身替座禅』では、時蔵が奥方玉の井を、菊之助が山蔭右京を、それぞれ初役で勤めます。時蔵は、初演した六世尾上菊五郎と七世坂東三津五郎について話しながら、「昔の玉の井は怖いというよりは、右京のことが好きでしょうがない、いつでもそばにいたい、そんな一途な女性だった。それだから、(右京も)花子のもとへ行って息抜きがしたくなるのだと思います」とし、今回そのように演じてみたいと熱を入れます。「その代わり、嫉妬して豹変するところはしっかりやらないといけないですね」と、笑顔を見せました。
『身替座禅』の出演について、「本当に念願でございました」と菊之助。同じく初演の六世菊五郎と七世三津五郎に触れ、「玉の井というのは怖いのではなく、とてもかわいい奥さん。夫思いな奥さんであるがゆえに、右京は窮屈で浮気をしてしまうという、初演のお二人が目指された原点を思い返しつつ、父の指導を受けて大切に勤めたいです」と、意気込みました。
舞台に立てることが幸せ
昨年以降、感染症対策をとった公演形態となっていますが、「それでも我々役者としては、この状況下で舞台に立てることが本当に幸せ。たとえ客席がどうであろうとも、精一杯お客様に楽しんでいただけるような舞台を」と語った梅玉。時蔵も、「劇場には歌舞伎を観たいというお客様が来てくださっているので、また足を運んでいただけるよう、もっと歌舞伎を好きになっていただけるよう、一所懸命勤めていきたい」と、心情をにじませます。
舞台に立てることについて「本当にありがたい気持ちでいっぱい」と話した菊之助は、「劇場にお気持ちを向けていただき、来てくださるお客様のために、精一杯のことをしてご恩返しをしていきたい。博多座でご覧になるお客様のために、昨年うかがえなかった分も思いを込めて、舞台に立ちます」と、熱意を見せました。最後に梅玉は、「いろいろな制約がありますけれども、来てくださるお客様に満足して帰っていただけるよう、大好きな博多座で良い舞台を一丸となって勤めていきたいと思います」と、穏やかに締めくくりました。
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博多座「六月博多座大歌舞伎」は6月5日(土)~19日(土)までの公演。チケットは、博多座オンラインチケット、電話予約センター、劇場窓口ほかで販売中です。