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コクーン歌舞伎『夏祭浪花鑑』の初日が開幕

 5月12日(水)、東京 Bunkamuraシアターコクーンで「渋谷・コクーン歌舞伎 第十七弾『夏祭浪花鑑』」が開幕しました。

 緊急事態宣言の休業要請緩和を受け、12日(水)に幕開きとなった、3年ぶりのコクーン歌舞伎。新型コロナウイルス感染拡大防止対策を徹底し、客席数を50%にしてお客様をお迎えします。

 

 『夏祭浪花鑑』は、延享2(1745)年、人形浄瑠璃として初演、翌月には歌舞伎化され、現代でも繰り返し上演され続ける名作です。シアターコクーンでの初演は、平成8(1996)年。十八世中村勘三郎(当時 勘九郎)と、演出の串田和美によって現代的な演出が取り入れられ、平成15(2003)年の再演、平成20(2008)年の再々演を経て、ニューヨークやヨーロッパでも好評を博しました。このたび、シアターコクーンで13年ぶりとなる上演は、団七九郎兵衛を勘九郎、団七女房お梶を七之助が勤めます。

 

 物語の発端となる恋にのめり込むのは、虎之介演じる磯之丞と、鶴松演じる傾城琴浦。その琴浦に横恋慕する大鳥佐賀右衛門との喧嘩に巻き込まれた団七は、恩ある玉島家の子息である磯之丞を助けようとしますが、捕えられてしまいます。

 

 お梶が、長三郎勤める市松、亀蔵勤める釣船三婦と迎えに行った住吉神社で、罪人姿だった団七が髪結を済ませて颯爽と現れる姿は、最初の見せ場。そこへやって来た、松也勤める一寸徳兵衛は、佐賀右衛門に頼まれ、団七につかみかかります。コクーンならではの迫力満点の立廻りが始まると、お梶が割って入り、鮮やかに喧嘩を裁きました。お梶に恩のある徳兵衛は、佐賀右衛門に味方したことを悔やみ、団七と義兄弟の契りを結びます。

 

 笹野高史が勤めるのは、団七の舅、義平次。義平次の悪計により、窮地に陥った磯之丞は、琴浦とともに三婦の元に身を寄せています。そこへ、松也が二役で演じる徳兵衛の女房お辰が、夫、徳兵衛に先立って、国許の玉島へ帰ることを話します。歌女之丞演じる三婦女房おつぎは、磯之丞をお辰へ預けることを思いつきますが、三婦は、美しいお辰と磯之丞に間違いがあってはいけないと、心配な様子。その思いを察したお辰は、突然、火鉢にあった鉄弓を手にとり覚悟を見せます。その迫真の演技に、会場は緊張感に包まれました。

 

 お辰と逃げた磯之丞と入れ替えに義平次がやって来て、琴浦を駕籠に乗せて立ち去ります。追いかける団七に、恥辱を浴びせ続ける義平次。団七が、煮えくり返る思いを必死にこらえる様子は、じりじりと客席にまで伝わります。夏祭の賑わいの陰で繰り広げられる舅殺しは、祭の囃子と相まって、団七の動揺と憔悴に満ちた感情とともに表現され、お客様はその一部始終を目撃することになりました。

 

 舅殺しは極刑。団七が義平次を手にかけたと気づいた徳兵衛は、どうにか団七を逃がそうと、三婦とともに図りますが、団七は一向に首を縦に振りません。そこへ団七を召し捕えるための役人が近づいている合図の太鼓の音が響き渡り…。団七と、彼を救おうとする義理堅い友情が、果たしてどんな結末をもたらすのでしょうか。

 夏の蒸し暑さと、賑やかな祭りの裏で起こる事件の目撃者になった気分を、臨場感たっぷりに味わえるBunkamuraシアターコクーン「渋谷・コクーン歌舞伎第十七弾『夏祭浪花鑑』」は、5月30日(日)までの公演。チケットの詳細は、公演情報でご確認ください。

2021/05/17