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大阪松竹座「七月大歌舞伎」、2年ぶりに開幕

 7月3日(土)、大阪松竹座「関西・歌舞伎を愛する会 第二十九回 七月大歌舞伎」が初日の幕を開けました。

 毎年恒例となった大阪松竹座での夏の公演、「七月大歌舞伎」。昨年は新型コロナウイルス感染拡大を受け、全公演中止となりましたが、今年は2年ぶりに華やかな顔ぶれが大阪松竹座にそろいます。

 

 昼の部最初の演目は、夏芝居らしい華やかな上方の名作『伊勢音頭恋寝刃』より、「油屋」「奥庭」の場です。幸四郎演じる福岡貢は、お家の重宝である名刀「青江下坂」を取り戻し、隼人演じる元家来筋の料理人喜助に預けます。それを奪おうと、扇雀演じる万野が貢に恥をかかせる場面は見せ場の一つ。万野の憎らしさや、壱太郎演じるお紺の愛想尽かし、恥をかかされた貢が次第に激高していくさまを、客席も固唾をのんで見守ります。続く貢による殺し場は歌舞伎独特の様式美にあふれ、作品の世界に大いに引き込まれるひと幕となりました。

 

 舞踊『お祭り』では、仁左衛門、孝太郎、千之助と、松嶋屋三代が勢ぞろい。仁左衛門演じる鳶頭が登場すると、2年ぶりの公演を待っていた客席から、大向うに代わり熱い拍手が送られます。そこへ孝太郎と千之助演じる芸者が相次いで現れ、それぞれの思いのたけをクドキで表現。その後の若い衆との派手な所作立てと、みどころが続きます。最後に三人で決まって幕となると、客席からは再び力強い拍手が送られました。

 夜の部では『双蝶々曲輪日記』「引窓」を、仁左衛門の南与兵衛後に南方十次兵衛、幸四郎の濡髪長五郎、壱太郎の平岡丹平、隼人の三原伝造、吉弥の母お幸、孝太郎の女房お早という顔ぶれでお届けします。明かり取りの天窓を巧みに利用しながら、母、実の息子、義理の息子、その女房の四人の義理と葛藤が交差し、義母の心中を慮り長五郎を見逃す十次兵衛のせりふが、観る者の心を打ちます。厚い人情と家族の情愛を描いた、義太夫狂言の名作をお楽しみください。

 

 続いては、上方和事の代表作『恋飛脚大和往来』「新口村」です。幕が開くと、真っ白な雪景色のなか、対照的な黒の衣裳に身を包んだ鴈治郎演じる亀屋忠兵衛と扇雀演じる傾城梅川が登場し、客席の視線を奪います。竹三郎演じる忠三郎女房から、詮議が忠兵衛の父・孫右衛門まで及んでいることを聞き、互いの運命を嘆く二人。万歳(虎之介)、才造(千之助)と入れ違うように現れた孫右衛門を、今回は鴈治郎が一人二役で演じ分けるのも眼目です。哀感漂う義太夫の旋律とともに描かれる親子の今生の別れが観客の涙を誘い、叙情的なひと幕となりました。

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 大阪松竹座「七月大歌舞伎」は18日(日)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

2021/07/06