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市川染五郎が語る、歌舞伎座『信康』

市川染五郎が語る、歌舞伎座『信康』

 

 6月2日(木)から始まる歌舞伎座「六月大歌舞伎」、第二部『信康』に出演の市川染五郎が、公演への思いを語りました。

市川染五郎が語る、歌舞伎座『信康』

歌舞伎座初主演に向けて

 「六月大歌舞伎」第二部『信康』が、歌舞伎座で初の主演となる染五郎。「プレッシャーも大きいですが、どんなお役でも、舞台に対する心意気、心持ちというのは変わらないと思いますので、お客様に必ず良いものをお見せできるように全力で勤めたいと思っております」と、緊張をにじませながらも、上演に向けての抱負を述べます。 

 

 『信康』は21歳の若さで命を終えた徳川家康の嫡男、徳川信康を主人公に、時代に翻弄される親子の運命を描いた作品で、このたびは染五郎の祖父・松本白鸚が家康を勤めます。「祖父と一緒に出来る作品を、ということでお話があり、候補の一つだった『信康』に興味をもち、祖父にも賛成していただけました。祖父や他の役者さんと、ここまでしっかりとしたお芝居をすることは久しぶりですので、大きな挑戦ですが、やってみたいと感じました」と、上演に込めた思いを語ります。

 

新しい信康像

 「演出の齋藤雅文さんが台本を手直しされ、以前の上演よりも感情がよりストレートに伝わる作品になっていると思います」と、明かす染五郎。「信康を題材にした映画『反逆児』などの荒々しく描かれた信康とは、また違う像をつくりたいと、齋藤さんとお話しています。信康は戦の能力に長け、とても冷静な人物。理知的であるがゆえに、自分の脅威になることを恐れた信長から切腹を求められますが、それを受け入れ、徳川家のために命を差し出す選択をします。最後まで自分の強さを貫いた人だと感じていただけるよう、演じたいです」と、力強く語ります。 

 

 特に注目してほしい場面として「どの場面もですが、前半の明るく若々しい部分と、第一場の後半からの悲劇が展開していく対比をしっかりと演じますので、ギャップを見ていただけたら」と、アピール。このたびのスチール撮影でも、第一場の衣裳を着用しました。「お稽古に入る前に役の姿になることができて、少し信康に近づけた感じがしています。鉄砲を持つことは、齋藤さんや父(松本幸四郎)と話して決めました。今回は舞台上でも鉄砲が登場し、どこか危うさを感じさせる、信康を象徴するアイテムになるのではと思います」と、演出にも期待が高まります。

魂を削るような舞台を

  「信康は、正しいものと正しくないものの判断基準がしっかりあった人。誰かのやり方に疑問を抱く姿は、現代を生きる方にも共感していただけるのではと思います。信康と比較的近い年齢で演じさせていただくので、若い方にも、同世代の人がこれだけの覚悟をもって生きていた時代があったことを感じていただきたい」と、語る染五郎。自身が出演したNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」にも触れ、「大河で演じた源義高と信康は、いずれも若くして劇的な運命をたどる人物です。映像で義高を演じさせていただいた経験、またこれまで歌舞伎の公演で悲劇的な役を演じた経験も『信康』でも活かせたら」と、意欲を見せます。

 

 取材会の終盤では、白鸚からのコメントが読み上げられました。「平成19(2007)年、初お目見得で手を引いて舞台に出てから15年。夢のようです。信康はむつかしい役で勉強になると思います。一日一日魂を込めて勤めてほしく思います」。メッセージを受けた染五郎は「舞台でも映像でも、祖父は魂を削るような表現をしていて、本当に尊敬しています。自分もその表現に少しでも近づけるように信康をつくりたいですし、そのことがお客様に伝わり、感動していただけるように勤めたいと思います」と、感慨をにじませながら、締めくくりました。

 歌舞伎座「六月大歌舞伎」は6月2日(木)から27日(月)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

2022/05/25