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玉三郎が語る、大阪松竹座『幽玄』

玉三郎が語る、大阪松竹座開場100周年記念『幽玄』

 

 2023年1月5日(木)より始まる大阪松竹座「坂東玉三郎×鼓童 初春特別公演」『幽玄』に出演の坂東玉三郎が、公演に向けての思いを語りました。

 令和5(2023)年に開場100周年を迎える大阪松竹座で、記念の年のスタートを飾るのは、「坂東玉三郎×鼓童 初春特別公演」『幽玄』です。世阿弥が追求した境地を作品名とした『幽玄』は、玉三郎と太鼓芸能集団 鼓童の共演第二弾として、平成29(2017)年に初演、翌年には新作歌舞伎舞踊として歌舞伎座でも上演され、好評を博しました。それを踏まえての大阪松竹座公演について、演出、振付を勤め、女方として舞踊を披露する玉三郎は、「歌舞伎座に比べて舞台と客席の距離が近いので、親近感を感じていただけるのではないでしょうか」と、期待を寄せます。

 

四拍子による新たな表現

 「日本のものがやりたい」という鼓童の要望を受けた玉三郎は、能の演目「羽衣」「石橋」「道成寺」に題材を取り、四拍子による新たな表現で作品づくりに取り組みました。「力いっぱい強打したり、汗をかいて踊り打ったりということを一切せず、制約された打ち方のなかでいかにお客様に満足いただけるものを提供できるか。普段していることとはまるで違いますから、彼らは非常に大変だったと思います。“羽衣”などは約50分もの間、演奏家はじっと座りっぱなしなのですから」。

 

 本作ではまず、締太鼓を前に、横一列に並んで繊細な音を奏でる鼓童のメンバーが姿を現し、玉三郎が天女を勤める「羽衣」が始まります。その特徴の一つに、天女の羽衣を持ち帰ろうとする伯竜役が複数存在することがあります。「間口のある劇場らしい群舞としてお見せできますし、シテ(天女)との関係性においても伯竜役が複数人いた方がいいと思ったのです。謡もなく能楽をそのままするのではありませんから、そうした組み合わせの面白さでお見せしたいと思います」。

 

 そして「石橋」、「道成寺」へと続いていきます。「能楽における幽玄の概念には“石橋”も“道成寺”も当てはまらないのですが、獅子が石橋を渡ってくるということに幽玄があると見られていたようです。“道成寺”については劇場の舞台でお見せする作品になりやすいということで、この3作品にしました」と、作品を選んだ理由を述べました。

 

玉三郎が語る、大阪松竹座開場100周年記念『幽玄』

 

全編に去来する幽玄なもの

 「太鼓の音楽だけで踊るのというのは非常に難しいことなのですが、限られたなかで打ち手と踊り手が一つの雰囲気を醸し出していくことに、この作品のテーマがあると思っています」と、本作ならではのみどころを語ります。

 

 “幽玄”という言葉から抱くイメージを問われると、「目の前を去来する心地よいもの。とらえどころのないものなのだけれど、確かによかったと思える感覚、とでも申し上げればいいでしょうか。「羽衣」、「石橋」、「道成寺」の全編を通して去来する移り変わりから、幽玄なものをお客様に感じていただけたらと思います」と、表現しました。

 

演出の力、役者の力

 多くのお客様にお楽しみいただくために大切にしていることとして、玉三郎は具体的に脚本、構成、音楽、技芸の4つを挙げます。「“脚本”とは、その作品が扱っている題材や、踊りで表現している内容の意味がわかる、ということ。それを一つの作品のなかでどう“構成”するのか。そして“音楽”が素晴らしいものであること。表現者としての“技芸”がしっかりしていること。この4つが大切です」と、強調します。

 

 「『幽玄』では題材を能楽からいただき、音楽を鼓童さんにきっちりつくってもらい、彼らと私で音楽的な構成を考え、後は自分を含めた踊り手一人ひとりが技術としてどうお見せしていくかということになります」と、続けた玉三郎。その結果、出来上がるのが「演出の力、役者の力で納得させるだけのもの」であり、それこそが「演劇の根本」だと述べました。

 

 大正時代に開場し、100周年を迎える大阪松竹座については、「あの時代にこのような様式の劇場をよくつくられたものだな、と思います。現在の劇場が平成9(1997)年に新築再開場してからは、(片岡)仁左衛門さんのご襲名や『伽羅先代萩』の「竹の間」「御殿」をさせていただいたことが印象に残っています」と語り、節目を飾る公演に出演する喜びを表しました。

 大阪松竹座「坂東玉三郎×鼓童 初春特別公演」は、2023年1月5日(木)から28日(土)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

2022/12/06