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菊之助が語る、博多座「六月博多座大歌舞伎」

菊之助が語る、博多座「六月博多座大歌舞伎」

 

 2023年6月3日(土)に開幕する博多座「六月博多座大歌舞伎」に出演の尾上菊之助が、公演に向けての思いを語りました。

“宵越しの銭は持たない”

 昼の部では、五世尾上菊五郎が初演した『人情噺文七元結』の左官長兵衛を勤めます。「まさに江戸の市井に生きる人です。どのようにすれば今を生きる自分が江戸時代の人に見えるかを追求していきたいです」と、綿密な役づくりを目指します。また、「女房お兼の心配や、娘お久の父への思い、文七の主人に対する思いを受けて、酒と博打に溺れていた長兵衛が場面ごとにどう変化していくのか」、そうした人物の精神的な変化を表現したい、と意気込みを見せました。

 

 長兵衛は、通りすがりの文七がお金に困って死のうとしていることを知り、娘が苦心して用意したお金を渡してしまいます。「江戸時代の人たちは、お金よりも人の命や、人と人との繋がりを大切にしていた。 “宵越しの銭は持たない”という言葉は、人が生きるためのお金とは何かという考え方を指していたのではないかと思います。そうした江戸の精神が、現代にもメッセージとして届くのではないでしょうか」。時代を越えて通じる作品の味わいを、お客様にストレートに伝えたいと話します。

 

菊之助が語る、博多座「六月博多座大歌舞伎」

 

変わり身の面白さ

 夜の部では、『夏祭浪花鑑』、舞踊の『羽根の禿』、『うかれ坊主』に出演します。当時の大坂で実際に起こった事件をもとに脚色された『夏祭浪花鑑』で勤めるのは、主人公・団七九郎兵衛の兄弟分となる、俠客の一寸徳兵衛。団七を勤める片岡愛之助との共演は久しぶり、と喜びながら、「自分のことよりも主人のために尽くす男の意気地を見せる演目です。中村錦之助さんにご指導いただき、大坂ならではの俠客の格好良さを追求できれば」と、抱負を語ります。

 

 続いては『羽根の禿』と『うかれ坊主』。上下にして一人で勤めるのは、六世菊五郎が初演時から始めたものです。「踊りの名人と言われた方が復活した作品に、どこまで肉薄していけるか。『羽根の禿』は踊り方や舞台装置にも子どもらしく見せるための工夫があり、『うかれ坊主』は裸に近い格好なので身体の線が見えやすく、踊り手の力量が試される踊りです。可憐な少女とお坊さん、性別も年齢も職業も違う役を一瞬で変わる、という変わり身の面白さもご覧いただきたいですね」。

 

緊張感と高揚感

 今回演じる役はすべて初役です。「博多座は私にとって大きな役や初役が多い、挑戦の場です。特に『文七元結』、『羽根の禿』、『うかれ坊主』は、 私の先祖がつくった、音羽屋にとって大切な演目。その作品の魅力をいかにお客様にお伝えできるか、その家に生まれた役者としての責任があると思います。どの役も父(七代目菊五郎)に教えていただき、継承したい。緊張感と高揚感と、そして初めて演じられるうれしさを感じつつ、公演に挑みたいです」と、語る言葉に自然と熱がこもります。

 

 今年はコロナ禍で中止されていた船乗り込みが復活します。「船乗り込みをして、沿道からいただく声援がとても力になっています。江戸の人情と同じような人と人との繋がりの温かさを、博多の皆様にいつも感じています」と、笑顔を見せた菊之助。「さまざまな角度から歌舞伎の面白さをお伝えできる、初心者の方にも楽しんでいただける公演です。一座一丸となって、一所懸命勤めますので、ぜひ博多座にお越しください」と、熱く呼びかけました。

 博多座「六月博多座大歌舞伎」は、6月3日(土)から19日(月)までの公演。チケットは博多座オンラインチケット、電話予約センター、劇場窓口ほかで販売中です。

2023/05/08