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玉三郎が語る、南座「坂東玉三郎特別公演」
2024年6月12日(水)から始まる南座「坂東玉三郎特別公演」に出演の坂東玉三郎が、公演に向けての思いを語りました。
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阿古屋の魅力を存分に
南座「坂東玉三郎特別公演」では、玉三郎による『口上』に始まり、片岡千次郎による『阿古屋』解説、そして『壇浦兜軍記』「阿古屋」が上演されます。近年、夏に南座での出演が続いている玉三郎は、「5年ほど前に南座で阿古屋をさせていただきましたが、ご覧になれなかった方もいらっしゃるとのことで、もう一度やらせていただくことになりました」と、お客様に呼びかけます。
琴、三味線、胡弓を実際に舞台上で演奏しながら、微細な心情を表現しなければならない阿古屋は、言わずと知れた女方の大役です。「お若い方もいらっしゃるかと思いますし、この琴責の段をご理解いただければという思いで解説をつけさせていただきました。源平の関係、どうして阿古屋がああいう形で引き出されてくるのかや、岩永左衛門の人形振りなども解説させていただければと思っています」と、初めてご覧になる方も、ご覧になったことがある方も楽しめる解説を構想している様子。
「琴では景清はいないということ、三味線では恋人との美しい恋の姿をうたい、胡弓では景清の子どもを身ごもっていることを何気に知らせていく。遥か遠くにいるか、もしかしたらもういないかもしれないと思っている恋人のことをしみじみ思う気持ちが、演奏を通じて劇場に響いていけばと思っています。なかなかうまく演奏しなければ響かないですが…」と、三曲の演奏に対する思いを語った玉三郎。傾城は、「教養と、傾城という職業の許容量をもってすべてに対応できる存在」と言い、「作家の趣向として、機転の利く傾城というものを表現してるんだと思います」と、この場面が物語に与える意味も語りました。
歌舞伎そのものを楽しんで
阿古屋の魅力の一つに、その豪華絢爛な衣裳も挙げられます。「平家の紋が対(むか)い蝶なので、それで蝶(の柄)になっています。孔雀は、六代目(中村)歌右衛門さんがお考えになったと思います。大変三味線の上手な方で、この孔雀の帯でも弾くことができたがために、後輩の難易度が高くなってしまいました」と、ユーモアを交えて解説します。
「今回初めてご覧になる方も、口上と解説がありますので心配はいりません」と言いながら、「何より、見た目の美しさや、音楽の心地よさを楽しんでいただきたいです。私自身、目の前で起こっている絵のような華やかさに惹かれて歌舞伎俳優になった気がします。華やかさのなかでだんだん内容がわかっていけばいいですし、わからなくてもよいのではないでしょうか。楽しくなければ意味がないですから。私は歌舞伎をそういう風に受け取っています」と、五感で楽しむ歌舞伎本来の魅力を表現しました。
南座でできる限りのことを
南座に出演することについて、「21歳のときに初めて京都の吉例顔見世興行にうかがい、その後、南座の花形歌舞伎でさまざまなものをやらせていただきました。30代の後半になりましたら、京都で舞踊公演を開くようになり、『日本振袖始』、『蜘蛛の拍子舞』などの復活ものを整理して、一段物として上演させていただきました。南座で勉強させていただいたことは、私にとって大きな意味があり、その後、南座で初演したものを歌舞伎座で上演することも増えました。京都は歌舞伎発祥の地でもあるし、ご縁があって、大きさも本当に良くて、この南座でできる限りのことをしたいというのが私の思いです」と、感謝を込めて語ります。
今回、秩父庄司重忠役を勤める中村吉之丞については、「播磨屋さんで修業をなさっていて、いろいろな経験もなさっている方ですし、きっとよい重忠をなさるだろうと思います」と、期待を込めます。「こういう機会にその役に適した方に演じていただき、層を厚くして、お客様にご納得いただけるのであればなお良いと思っています」と、歌舞伎の未来を見据えました。
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南座「坂東玉三郎特別公演」は6月12日(水)から26日(水)までの公演。チケットは5月9日(木)から、チケットWeb松竹、チケットホン松竹で発売予定です。