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尾上右近が語る、歌舞伎座『義経千本桜』

尾上右近が語る、歌舞伎座『義経千本桜』

 

 2025年10月1日(水)に開幕した歌舞伎座「錦秋十月大歌舞伎」通し狂言『義経千本桜』に出演の尾上右近が、歌舞伎座ギャラリー・歌舞伎座ホール特別展「This is KABUKI 体験!『義経千本桜』が誘う歌舞伎の世界」の特別内覧会に出席し、公演へ向けての思いを語りました。

尾上右近が語る、歌舞伎座『義経千本桜』

 

生きる力を感じる作品

 10月歌舞伎座で、通し狂言で上演される『義経千本桜』。作品について右近は、「歌舞伎の三大名作ということで、ご存知の方も多いと思いますが、そのなかでも武士の物語で、源義経を中心としてさまざまな登場人物が場面を紡ぎ、バトンを渡すように展開する作品です。通し狂言として見ていただいたときに、なぜ『義経千本桜』というタイトルなのかを感じていただける作品だと思います。源氏と平家を描く、人間の生死が隣り合わせの物語ですが、そのなかから生きるエネルギーや美しさ、何にこだわって生きるのかを、エンタテインメントとして感じられる華やかさがある作品だと思います」と、物語を分析しながら語ります。

 

 「作品の魅力を伝える要素として、かつらや衣裳、舞台装置があり、それらを使用して最後にお客様のもとに届ける役割はやはり役者が担っていると思いますので、役者の魅力も十分感じていただきながらこの作品を堪能していただけたらうれしいです。私自身、初めて見た舞台が『義経千本桜』の吉野山の場面だったので、ずっとあこがれてきた作品に自分自身が出演して、今度は皆さまにご観劇いただける立場になったことを実感しています。この紡がれていく循環こそが、“歌舞伎の世界”だと感じます」と、出演する喜びを明かしました。

 

尾上右近が語る、歌舞伎座『義経千本桜』

 特別展の様子

多面的に作品へ挑む

 今回、Aプロでは第三部「吉野山」に清元栄寿太夫として立唄で出演し、Bプロでは通しで佐藤忠信実は源九郎狐を勤める右近。公演に向けて、「熱い『義経千本桜』の世界観を存分に楽しんでいただきたいです。Aプログラムでは清元を、Bプログラムでは通しで狐忠信を勤めます。音楽面でも、役者としても『義経千本桜』に力を注ぐことができる舞台をご用意いただいたので、全力で取り組ませていただきたいと思います。30代半ばに差しかかり、しっかりと大人の説得力をもって挑みたいです」と、熱く意気込みます。

 

 今回着用する衣裳について問われると、特別展で紹介されている衣裳にも触れつつ、「吉野山は、かつらや衣裳、小道具などにさまざまな付属品をつけられるんです。そのうえで、今回は限りなくシンプルなスタイルとさせていただきました。かつて黒い華やかな衣裳でやらせていただいたこともありましたが、この舞踊に挑戦するのは、自主公演を含めて3度目のため、衣裳やかつらの力を借りなくても忠信という役に見えるようになりたいと思い、思い切ってシンプルにしました。また、曾祖父(六世尾上菊五郎)も同じような衣裳で勤めていたので、その形を踏襲して自分が何を感じるのか、お客様に何を感じていただけるのか、挑戦してみようと思います。現在は、付属品を付けて忠信を演じられる方が多いので、逆に珍しく見えるかもしれないです」と、衣裳の違いや魅力を語りました。

  歌舞伎座「錦秋十月大歌舞伎」は21日(火)までの公演。チケットはチケットWeb松竹チケットホン松竹ほかで販売中です。歌舞伎座ギャラリー・歌舞伎座ホール特別展「This is KABUKI 体験!『義経千本桜』が誘う歌舞伎の世界」は、11月16日(日)まで開催予定です。

2025/10/03